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ideaboard® 開発ストーリー連載 #13_外部パートナー編 | 株式会社ロフトワーク

この連載では、中西金属工業株式会社(以下、NKC)が、2019年に発売した新しいホワイトボード『ideaboard®(アイデアボード®)』の開発に関わったプロジェクトメンバーから広く話を聞き、ideaboardが世に生み出されるまでのストーリーを記録します。
第1〜8回は開発者であるNKC 社長付 戦略デザイン事業開発室 KAIMENの長﨑さんに、第9回以降は外部パートナーのみなさまにインタビューしています。

〈過去の記事はこちらから〉

今回は 株式会社ロフトワーク 木下 浩佑さん、田根 佐和子さんにお話を伺いました。

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(左) 田根 佐和子 / Sawako TANEI
ロフトワーク MTRLプロデューサー、旅人
(右) 木下 浩佑 / Kousuke KINOSHITA
ロフトワーク MTRL/FabCafe Kyoto マーケティング&プロデュース

1.コミュニティの萌芽をつくる FabCafe Kyoto という場

ーまずはお2人の普段のお仕事について教えてください。

田根さん(以下敬称略):私は、FabCafe Kyotoを多種多様な人が集まる場所にするために、ここに来た人同士をつなげたり、おもしろい素材を持っている人を見つけては話を聞きにいく活動をしています。

例えば、FabCafeで作業しているお客さんに話しかけてみると実は考古学者で、「普段は発掘してます」とかって実際あるんですよ。そんな興味深い世界にいる人なら、「次のイベントに是非来てください!面白い人紹介しますから!」って、FabCafe Kyotoという場所をつかってコミュニティの萌芽をつくっていく。

リアルで集まりにくくなったここ1年は、面白いことはそれぞれの地域で凝縮して発生している感じがします。だから会社から「旅人」という肩書きを頂いて、自分から人に会いに行くという活動も始めました。基本的にはどちらも、「その人が何を得意として、何をしたい人なのかを聞いて、人同士をつないでいく仕事」ですね。

木下さん(以下敬称略):FabCafe Kyotoでは、いきなり知らない人が話しかけてきたり、会話にカットインしてくる現象が割と多発します。実際、みんなけっこうびっくりしますね(笑)。

僕はもともとFabCafe Kyotoのマネージャーをしていたんですが、今は主に、素材メーカーや製造業の方達の新規事業のお手伝いをしていて、壁打ち相手になりながら事業のプロセスを一緒に考えるような役割をすることが多いです。他にも、顧客としっかりコミュニケーションする機会としてのワークショップ企画などもやってます。

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ーideaboardの構想を最初に聞いたときのことを覚えていますか?

木下:FabCafe Kyotoは私たちのオフィスとしての機能とともに、社外の人が打ち合わせで使ったりもするので、そんな環境でホワイトボードがどのように使われているのか、というヒアリングが最初だったと思います。

田根:脚付きのホワイトボードの脚がすぐ折れる話をしてましたよね。

木下:そう、脚付きのホワイトボードは、ストレスの温床になりがちなんですよね。脚がグラグラするとかキャスターが壊れているとか、人が横を通るときに足が当たってしまうとか。そのストレスを無くすためにマグネットを用いた連結によって自立させるのはどうか、みたいな話をしていました。

田根:マグネットなら、天井の鉄骨から吊ることもできるし、パーテーションにもなるし、何より脚がなくなるからいいねと。

人間って単純で、「脚が弱点だ」となると脚に意識が固定されて、もっと強い脚にするためのイノベーションを考えがちだと思うんです。でも長﨑さんはそうじゃなくてそもそも脚やキャスターを無くすってなってて、それがさすがだなと思いましたね。

2.求めたのは、必要な時にスピーディに使えるモバイル性

ー初代プロトタイプが送られてきたとき、社内ではどんな使い方をされてましたか?

木下:送られてきた初代のものは軽いし便利だけど、立てるのがすごく大変でした。
まずはマグネットでの連結がさせづらい。あと、やっと連結して立てられても、いざ書こうとすると倒れてしまう問題もありました。マグネットの構造は、書いた後に自立させておくのにはすごく面白いけど、書きながら自立させるための構造ではないなと。

僕はみんなに「こうやって連結して、屏風型に立てて使うんですよ。」って説明はしたけど、結局誰も自立させない(笑)。壁さえあれば安定するので、結局みんな立てかけて1枚で使ってましたね。

だからフィードバックとしては、このボードが単体で自立している状態の優先度はそこまで高くなさそうっていうのをお伝えしたと思います。壁があれば立てかけられるし、2枚組以上組み合わせて自立させる必要があるシーンは少なそうだった。僕たちも実際に使ってみないとわからなかったことですね。

ー実際に使ってみて、ロフトワークならではideaboardへの共感ポイントってどこだと思いましたか?

田根:私たちはとにかく移動をしまくる。これがめちゃくちゃ大きいです。以前の脚付きホワイドボートのときは、3階から1階への移動が大変なので、みんなできるだけホワイトボードを移動させないでどうにかする設計にしてたんですよね。でも今は明らかにそのハードルが下がった。女の子でも2-3枚まとめて階段で運ぶという行為が頻繁に発生しています。

木下:あと何枚も重ねて一箇所に収まる収納性も大きいと思います。脚付きホワイトボード3機分のスペースで、ideaboardならきっと20枚くらい置けるんじゃないですか。

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普段はまとめて収納しておけて、必要になったら簡単に取り出せる。ideaboardはアイデアをスピーディーに形にしていく過程で使うものなので、そういう仮設性、モバイル性みたいなこともコンセプトに合ってるのかなと思います。

3.アイデアは頭と身体、言語と五感で発散する

ーコロナ禍を経て、オンラインでのミーティングやワークショップが一気に加速しました。アイデアを出すシーンのオンライン化についてどのように感じられていますか?

木下:オンラインホワイトボードMiroをかなり使うようになって、共有するときの便利さはもちろんですが、物理的なスペースの制約が消滅するのがいいなと思います。もっと貼りたいけどスペースが足りないという状況が発生しない。正直、もう全部オンラインでいいじゃんって思う機会はすごく増えましたね。

ただ、何か頭で考える時に、文章ではなくダイヤグラムでイメージしてたりするので、そんな場面でのアウトプットにはリアルなものを必要としている感じがします。あと、人に話しながら、マップ的なものを作っていくときは、身体的にどんな大きさのストロークができるかも大事かもしれない。身振りや手振りを経て、リアルに書いている文字とかが、そのアイデアをどう伝えるかにつながっているような気がするんですよね。

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田根:デジタルでのワークショップを大量にやると集中して完全に入り込むので、めちゃくちゃ疲れます。ちょっとブレイクタイムやトイレ休憩で、コーヒー飲んで、雑談して、という緩急をアナログでは自然とうまくやってたんだなあって気づきました。

私は割と手書き派なんですよ。一番最初のアイデアを出す時は手で書かないと出てこなくて、頭の中のもやもやしたものを言語化して可視化する、そのために頑張っている感じです。

言語化って結局自分の中で一度解釈してしまっているじゃないですか。その人の語彙が少なければうまく表現しきれないし、言葉で表現しきれなかったいくつかはそのまま切り捨てられて伝わっていくかもしれない。だから、言語化に努力することは大事だけど、その周りに言語化しきれない膨大なことがあると認識しないといけないと思うんですよね。アイデアも一緒で、アイデア出しをしてまとまった綺麗な図にはできるけど、でも実はそのプロセスの所の方が大事だったりする。

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木下:リアルに集まってワークショップするときに、質問が生まれて、新しい気づきがあって、そこからまた何かを考えていくみたいなときがまさにそうだと思います。リアルな空間で一緒に手を動かしたり、視覚情報・言語情報以外の五感を使って表したりした方が解像度高くやり取りできる場面はきっとあると思いますね。

ー最後に、ideaboardのプロジェクトを振り返っての感想を聞かせてください。

木下:当時はいわゆるコワーキングスペースだったFabCafe Kyotoに、オフィスツールのプロトタイプを置くとなると、「ぜひモニターで使ってみていただいて…」「いろんな人に広めていただいて…」ってなりそうじゃないですか。でもそうじゃなくて、ここに置いて、たぶん実際に必要としているであろう僕たちにとにかくとことん使わせて、本当に必要なこと、不要なことを全部洗い出そうというスタンスが、すごく自然で見習わないとなって思うんですよね。お願いする関係ではなくて共犯関係。その中で、一緒に価値をつくっていく。僕らも、場所とかコミュニティとか実践のプロセスを大事にしたいなと常日頃思っているので、今回そこに関われたのはすごくありがたかったです。

田根:そうですね、周りを巻き込みながら、必要なものを必要に応じてどんどん新しく作り出していく。長﨑さんのその感じはエジソンみたいだなって思いました、見た目スナフキンですけどね(笑)。

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次回 ideaboard 開発ストーリー連載_#14 へ続く
(取材・文・撮影 / (株)NINI 西濱 萌根, 行岡 恭子 )

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