GDPを調べてみました
私が生まれた1964年は東京オリンピックが行われた年でした。新幹線もその年に開通し、オリンピックに向けて首都高速道路や東京モノレールが開通し、ホテルニューオータニを始めとした大型ホテルの開業ラッシュなど、日本全体が慌ただしく、生まれ変わっていた頃でした。
また、その6年後の大阪万博では三波春夫が「こんにちは〜、こんにちは〜、世界の国から〜」とえらく盛り上げ、アポロ16号が持ち帰った「月の石」の展示やら、なんだコレは??と誰もが思った「太陽の塔」というモニュメントを引っさげて華々しくEXPO70は開催され、日本が世界的にも注目を浴びておりました。
当時は高度経済成長の真っ只中で、郵便貯金金利は7%くらいあり、置いておくだけで10年で倍になる感じでした。1960年に池田勇人内閣が「所得倍増計画」をぶち上げ1960年代はホント、日本全体がキラキラしていたのかもと思います。
あれから57年。同じように今年東京オリンピックが開催され、4年後には大阪万博が開催されるというのに、なんだろうこのやるせなさは。新幹線とか首都高とか太陽の塔とかいった新しいものは何も生まれておらず、コロナ禍の中でワクチン接種も進まず、日本中の誰もがオリンピック開催に疑問を持ち始めている。大阪万博も全然盛り上がらない。一方ドバイはこのコロナ禍でもワクチン接種がスムーズに進んで万博開催だというのに。
5年前のブログでも今の日本にはワクワク感が全然ないということを書いたのだが、5年経って、何もかわっていないことにただただ愕然としてしまう。
基本的には「お金がない」ということなんだろうなと思う。そこで、どれくらいお金がないのかをGDPの推移で調べてみた。1955年から内閣府のGDPの統計があるので、それをExcelに入れて棒グラフで表示すると次のようになった。
10年ごとの増加率を書いてみたのだが、1964年のGDPは29兆円。そのGDPでオリンピックに向けてあれだけの開発をしたのだ。なぜあの頃にできて今出来ないのだろうか?
1964年に29兆円だったGDPが10年後には134兆円と4.6倍も増えている。1974年から1984年の10年間も2.2倍増えており、さらにその10年後の1994年は1.6倍増加している。1964年から1994年の30年間で実に17倍もGDPが増加している計算になる。一方その後の1994年から2020年の26年間では1.1倍にしかなっていない。
親父が家を建てたのが1969年で当時200万円くらいで一戸建てが建てられた。土地は8万円程度で今考えるとタダみたいなものだった。当時は「土地付き一戸建て」という表示で家に価値があり土地がそれに付随しているような形の取引だった。
土地に価値が出始めたのは1972年の田中角栄内閣の列島改造論からである。隣地確認の境界杭をきっちりと打ち始めたのがこの頃で、それ以前の土地の境界はかなりあやふやなまま取引がなされている。
と、話がそれたが、家の価格の話に戻るが、GDPと物価が連動していると考えると、1969年に200万円だった家は、25年後の1994年だと8倍の1,600万円になるのでなんとなく肌感覚と合っている。が、その間の父親の給料は10倍以上になっていた。200万円の借金など簡単に返せてしまうので、60歳定年でも資産を十分残せるのだ。この年代の人たちは高度経済成長の恩恵をものすごく受けていると思う。
ところが今はそんなうまい具合にはいかない。無理して6,000万円のマンションを買った若い人の給料は25年経っても10%ほどしか増えないのである。共働きで頑張って返していっても、定年が近づいてもローンは完済しないままである。最近70歳定年制の話が出ているがそれはある意味当然である。これでは若い人に夢が持てるはずもない。
先程のGDPの伸び率のグラフでも表したように、1997年でGDPの伸びがピタッと止まってしまい、それ以降はほとんど増えていない。バブルの頃には一人あたりGDPで日本は世界1位だったのに、あれよあれよという間に転落し、現在はドルベースで世界23位である。アジアだとシンガポールや香港にはとうに抜かれており、もうすぐ韓国や台湾に抜かれそうなのである。
今、オリンピックや万博を前にしてワクワク感がない原因の一つはこのGDPの伸び悩みだと思う。個人で見れば年収が上がらず、さらに将来の安定性も見いだせないため、そういったイベントに興味が持てなくなるのである。
あと、僕らが小さい頃には日本に対してある種の「誇り」を持っていたと思う。戦後復興から短期間で世界のトップに躍り出て、質の高い製品を世界に供給するすごい国という思いがあった。平成生まれの人たちにそういう日本国に対する思いは減ってきているのではないだろうか?
とにかく、このグダグダな状態を打破するには、もう一度日本をすごい国に戻す必要があるのだと思う。GDPという視点で見たときには、企業の賃金を上げるしかない。インフレを起こすということである。言うなれば「令和の所得倍増計画」である。
一度は世界一のGDPを誇った国なのである、せめてシンガポールの一人あたりGDPのレベル(5万9千ドル)をめざし、現在の1.5倍の賃金上昇を目指すべきだと思う。今は10年で1.04倍にしかなっていない。
日本のGDPが伸び悩んでいる理由として、従来は台湾や韓国の製品が安くて太刀打ちできないというような話があったが、今や一人あたりGDPは台湾や韓国に抜かれそうなのである。そういうファクトはないのではないだろうか?日本人の所得が高すぎて競争力がないという話ももう昔の話である。
まずは、企業の定期昇給を復活し、消費税で傷ついた分も含め年5%以上の上昇を目指すべきである。それでもシンガポールに追いつくのに8年かかる。その頃には残念ながらシンガポールも更に所得が上昇しているはずである。全然追いつかない。それでも前に進まなくてはと思う。とにかく、最低でも5%は毎年所得を増加させることを日本の企業は本気で目指すべきだと思うのである。