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厳冬期赤岳1泊2日テント泊
2024年2月27日㈫~28日㈬に赤岳鉱泉にてテント泊をしてきましたので記憶が新鮮な内に備忘録を残します。
1.山行計画
2/27~2/28の平日二日間に渡って初めての厳冬期テント泊へ行ってきました。
これまで夏場から秋にかけてのテント泊経験はありましたが厳冬期は経験が無かったため、今ある装備で厳冬期にテント泊をしてみると寒さに耐える事ができるのか経験してみたく今回思い切って挑戦してみました。
無人の行者小屋に宿泊するのは心配だった為、ベースキャンプには冬季も運営している赤岳鉱泉に。
初日は美濃戸口から徒歩入りし北沢ルートを通って赤岳鉱泉へ。
翌日は行者小屋を抜け文三郎尾根に入り赤岳登頂、ピストンで戻る1泊2日の山行を計画しました。
2.装備について
僕はこれまで3シーズンでのテント泊しか経験した事が無く、厳冬期用の装備はこれと言って所持していません。
買い揃えるとなると大きな出費となるため、今回は今ある装備のポテンシャルを限界まで引き出し使用する事にしました。
シェルター、シェラフ、マットにつきましては下記3点を使用。
①シェルター シックスムーンデザインズ「ディシュッツプラスタープ」
②シェラフ ハイランドデザイン「ダウンバッグ」※限界温度₋6℃
③マット サーマレスト「リッジレストクラシック」※R値2.0
※合わせて山と道「ミニマリストパッド」※R値0.7
僕が私用しているシェルターはフロアレスの為、グランドシートとしてSOLの「ヘビーディユーティーエマージェンシーブランケット」
その上に100均で買った銀ロールマットを使用しました。
雪面に「エマージェンシーブランケット」+「100均銀マット」+「リッジレストクラシック」+「ミニマリストパッド」
この4点を重ねる事で底冷えを防げるのではないかと考えました。
底冷え対策の次は防寒対策になります。
ダウンバッグと合わせて下記5点を使用しました。
①モンベル「ベンディスカダウンジャケット」※極寒地用ダウンジャケット
②モンベル「スペリオダウンパンツ」
③モンベル「ダウンフットウォーマー」
④SOL「エマージェンシービビィ」
⑤ホッカイロ「マグマ」※貼るタイプ
星空を眺めたり撮影するのが好なので極寒地でも耐えられるダウンジャケットを所持していました。
実際の耐寒温度は分かりませんが、まるで夏用シェラフを纏うかのようなダウンのボリュームです。
ダウンバッグ(限界₋6℃)に合わせてベンディスカダウンを着こむ事で₋12℃くらいまで耐えられるのではないかという想定です。
ダウンパンツ、ダウンソックス、そして念のためにホッカイロを太ももと腹部に貼る、
後はシングルウォールのテントになるため、結露による濡れからダウン類を守る為のビビィを上からから被せて完成。
実際の現場で耐えれるか未知でしたが、結果からお伝えすると全く冷えを感じる事なく熟睡する事ができました。
(参考までに、深夜外気温₋15℃~、シェルター内₋5℃になります)
寒さの感じ方は人それぞれだと思いますが、僕は身長177㎝体重65キロの通常体形ですがむしろ夜中に若干暑さを感じる程の温度になりビビィの中で結露が起きてしまいました。
一番の懸念点だった底冷えは全く感じる事が無く、赤岳鉱泉くらいの標高2000メートル弱では高価なエアマットを購入せずとも3シーズンで使用しているマットに+αのブーストを用意するだけでも十分かと思います。
(一般的な厳冬期の必要R値は5と言われています。僕は今回のR値4程度の組み合わせでも問題ありませんでしたが余裕があれば準備した方が良いと思います)
その他持参した装備につきましては画像参照。
![](https://assets.st-note.com/img/1709630871750-zndrKNAywp.png?width=1200)
実際に計量していませんが恐らく10キロ前後のパックウェイトになったと思います。
バックパックはハイパーライトマウンテンギア「PORTER3400」
デイジーチェーンやサイドストラップに色々と装備を留められる為パッキングの自由度が高く気に入っています。
得に今回のような厳冬期はバックパックの中に納まらない道具が沢山ありましたので改めてPORTERの万能性を感じる事が出来ました。
僕は登山以外にも海が好きで沖縄やハワイにもこのPORTERで行きますが、山以外でも最高に使い心地が良いです。
DCF素材(現キューベンファイバー)は水を通さない為、突然のスコールにもわざわざレインカバーを付ける煩わしさもないですし、
何よりこの真っ白なボディに旅を重ねる度に刻まれる経年変化(と言う名の汚れ)がなんとも言えない自己満足感を刺激してきます。
ざっくりとですが装備につきまして以上となります。
![](https://assets.st-note.com/img/1709631723083-XYrckcvYGH.jpg?width=1200)
3.アクセス
冬季平日は美濃戸口までのバスが運休している為、茅野駅からはタクシーを利用してアクセスしました。
【DAY1】
新宿駅 7:00発 あずさ1号(松本行)
茅野駅 9:07着
茅野駅 9:10発 ※タクシー予約必須
美濃戸口 9:50着
【DAY2】
やまのこ村 16:00 ※タクシー配車依頼
美濃戸口 16:30発
茅野駅 17:10着
茅野駅 17:52発 あずさ50号(千葉行)
新宿駅 20:08着
前日に予約しアルピコタクシーを利用しました。
タクシーは1分20秒毎に100円加算で茅野駅から美濃戸口までは7000円程の料金となりました。
雪が降っており路面も凍結していたため、状況によってはもう少し安く済むかもしれません。
スタッドレスを履いている車であれば美濃戸口までは車で問題なく車でアクセスできると思います。
以降はチェーン必須、車高も高くないと場所によってはスタックするのではないかという状況でした。
帰りにつきましては時間に追われ焦りたくなかったので予約していません。
やまのこ村付近まで下れば電波が入りますのでそこから美濃戸口までの下山時間を計算してタクシーの手配をしました。
(下山まで約30分想定)
運転手さんに伺いましたが夏の時期ですと繁忙期に当たりますので直ぐに配車が難しい可能性があるとの事です。
冬季であれば大体配車できるので僕の様に下山途中で予約される方も全然いらっしゃるとの事でした。
日の入りが早い厳冬期限定で健脚の方は硫黄岳でサンセットを望んでからヘッデン下山するのもありかもしれないです。
平日は20:39が茅野駅~新宿最終になります。
4.DAY1
そんなこんなで山行の記録のご紹介です。
春に赤岳~横岳~硫黄岳を縦走した時はやまのこ村まで車で乗り入れましたが今回はタクシーなので美濃戸口からスタートです。
【美濃戸口 10:00】
目指すベースキャンプ地である赤岳鉱泉まではアップダウンの少ない緩やかな山道を通っていきますのでチェーンスパイクを履いていきました。
平坦な道が多いとは言え、場所によっては凍結しているのでチェーンスパイクは必須です。
![](https://assets.st-note.com/img/1709636885919-jVBX1Uu4At.jpg?width=1200)
木々の間から見える八ヶ岳ブルーの空が日々の仕事疲れを癒してくれます。
冬の山は降り積もった雪が音を消し去るので聞こえてくるのは踏みしめる足音だけ。
このノイズレスな空間がたまらなく好きです。
自然の美しさに癒され、今ここに居れる事に感謝しながら進む事約50分程で赤岳山荘まで到着します。
【赤岳山荘 10:50】
冬季は休業していますが雪のついていないベンチがありますので皆さん休憩を取られていました。
冬場は疲れたからと言って腰を雪面に付けると一気に体温が奪われますのでドライな環境って大切だと思います。
ヒップマットを持ってきていない方はここで休憩されてから先の道へ進んだ方が良いと思います。
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僕は赤岳鉱泉をベースキャンプとする為、北沢を進みます。
赤岳に登頂する事だけを目的とするならば南沢の方がルートの短縮ができますし、行者小屋からは赤岳にアタックする為の文三郎尾根、地蔵尾根へのアクセスも容易なのでルートは南沢を選んだ方がいいと思います。
行者小屋の冬季運営はしていないので、テント泊をされる方は十分な装備の用意が必要です。
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歩いていると雪化粧した阿弥陀岳が。山頂付近は風が強いようで白い靄が掛かっていました。
てんきとくらす予報ではアタックする明日の天気は「A」
今のところ青空も望めていますしこのまま天気良く明日を迎えられたら良いな~なんて想いながらもくもくと歩を進めていきます。
道中ではこの時期ならではの自然の造形美を楽しみながら進みました。
美しい氷柱や凍った河川、都会で生活していると忘れてしまう自然の美しさに癒されながら目的地を目指し進みます。
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![](https://assets.st-note.com/img/1709683076886-Qyc4IGhJ4e.jpg?width=1200)
春に訪れていたので川が見えてくるとコースの半分くらいを進んだ事が分かります。
ここまで美濃戸口からゆっくり約2時間の時間を掛けて歩いてきました。
太陽の光を反射して煌めく小川の流れを眺めながらミニマリストパッドを雪面に敷き休憩の時間です。
【堰堤広場 12:00】
薄さ5mmながらもしっかりと冷気を遮断してくれるため冷えを感じる事なく15分程休憩できました。
残りの工程は約1時間程アップダウンがある林道を抜けていきます。
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美濃戸口からスタートする事3時間、やっと赤岳鉱泉へ到着です。
【赤岳鉱泉 13:00】
つい先ほどまで八ヶ岳ブルーを見せていた空は厚い雲に覆われ、雪が降り出してきました。
太陽が遮られる事で気温も低くなり、明日晴れるよな・・・?という心配よりも持ってきた装備で夜を超える事ができるのかという心配が胸の内に湧き出てきます。
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赤岳鉱泉のカウンターでテント泊の手配を済ませ、設営に取り掛かります。
(テント場の利用は1泊¥2,000になります)
風と雪の中、設営地を決めるべく散策しますが今年は暖冬の影響もあってかとにかく雪が少ない・・・・!!
持参したブリザードステイクは雪があってこそ機能する物なのでこの状況に焦り始めます。僕の持ってきているシェルターはワンポールなのでしっかりとしたペグダウンが必須。
どうしたものかと30分程悩みましたが木の根元に雪が豊富にある場所を見付けましたのでそこをテント場にする事にしました。
少々開けた場所で風通りが良いため、裾はベタ付けでロケーションからは背を向ける形で設営しました。
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1つここで勉強になったのは冬季であったとしても路面状況が分からない為、3シーズンで使用しているペグは持ってきた方が良いという事。
念のため持参していたアライテントのスクリューペグが雪下の氷を突き破りグリップが非常に効いたので次回はもっと本数を多めに持参したいと思います。
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無事設営を終え、ここでやっとお昼ご飯です。
食べ終える頃には厚い雲もどこかへ行ってしまい、美しい八ヶ岳ブルーの空を覗かせてくれました。
盆地に立つ赤岳鉱泉は周りを山々に囲まれているため早くも辺りは陰り始めます。
同時に気温も下がり始めてきましたので暗くなってからの就寝準備は手際が悪くなるため、早めにシェルターに戻ります。
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寝る前に飲んで身体を温めるためのお湯を沸かします。
小屋宿泊者とテント場を利用する方は無料でお水を貰う事ができますので雪から水を作る作業の手間が無く楽です。宿泊者は甘えさせてもらいましょう。
そんなこんなで辺りは真っ暗になり、外気温は₋10℃へ。
シェルター内は思ったよりも暖かく₋5℃。
懸念していたシングルウォールの結露は思ったよりも起きなく、フロアの中に雪を降らせるなんて事はありませんでした。
ディシュッツプラスタープはフロント側が跳ね上がる作りになっているため、
換気が多くなる分ダブルウォールのテントと比べると外気との温度差が産まれにくく結露の発生が緩やかなのかもしれません。
![](https://assets.st-note.com/img/1709700176675-hzOgsAajhD.jpg?width=1200)
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18:00には辺りは真っ暗へ。防寒対策をばっちり行いシェラフの中でダウンロードしてきたパイレーツ・オブ・カリビアンを観始める。
今日だけは秘密基地で過ごす自分だけの自由時間。
電波も届かないから仕事の連絡も来ない。子供に観たい映画の邪魔される事もない、これほどの自由のある時間はテント泊でしか得られないと思う。
静まり返った山の中、温かなシェラフに抱かれて過ごすこの唯一無二の時間が堪らなく好きです。
映画も半分程進み、物語も中盤に差し掛かる頃、
至高の時間に突然の邪魔が入ってきます。
・・・小水問題。
だんだんとお手洗いに行きたくなってくる。だけれど寒いから出たくない、格闘し続ける事30分、ついに我慢の限界になり厠へ行く事に。
もそもそと寝袋から這い出し、シェルターのzipを閉めて空を見上げた瞬間、美しい視界一杯の星空に心を奪われました。
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雲一つ無い空に星々が輝き、僕を出迎えてくれました。
夏の空は天の川が美しく、冬は沢山の正座が一面に広がり違った表情を見せてくれます。
極寒だけど景色は暖かく、マットを出して小一時間程眺めていました。
20:00過ぎた頃に小屋泊の方達も外に出てきて騒がしくなり始めたので星空に別れを告げ、シェルターに戻ります。
新しい景色、思い出を胸に明日はどんな絶景を観れるかワクワクしながらぐっすりと眠りに着きました。
5.DAY2
目覚めると辺りは明るくなっており時間を見て絶句しました。
8:00に起床・・・。
元々予定では5:00に目覚め、朝食を食べてから6:00に赤岳鉱泉を発って赤岳へ向かう予定でした。
その予定が8:00。あまりにも熟睡してしまい寝過ごしてしまいました(汗)
ここまで遅く起きてしまったらもう開き直って朝から美しい景色を眺めながらゆっくりと朝食を楽しみましょう。
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朝食を食べ終え、昨日作った白湯で更に身体を温めてからストレッチし、装備を整えていざ赤岳へと向かいます。
【赤岳鉱泉9:00発】
行者小屋を経由し文三郎尾根に取り掛かり赤岳登頂を目指す。
最高の天気に胸を躍らせながらスタートを切りましたが久々の冬靴にアイゼンのコンボが重たく早々に股関節が痛くなる。
普段から定期的に運動しとかないからこうなるんですね。もっと沢山の景色を観たいから今年はちゃんと運動しようと思います。
道中は終始穏やかな林道を通り、木漏れ日が気持ちよく肌を刺激します。
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30分程進み行者小屋に到着します。
【行者小屋 9:30着】
行者小屋は冬季運営していませんが、大賑わいの様子。白い雪面をキャンパスに色とりどりのテントが鮮やかに彩ります。
赤岳を目的とするならば目の前が地蔵尾根、文三郎尾根になりますので行者小屋の方が時間のロスも少なく効率よくアタックする事ができます。
雪の量も赤岳鉱泉と比べて豊富にあり、ブリザードステイクの効き具合も非常に良さそうです。
次来るならば行者小屋をベースキャンプにしたいと思いました。
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アタックに向けて再度装備を整える。
「アイゼンの緩み」「バラクラバの装着」「ヘルメットを被る」
平地では当たり前に行える事が森林限界を抜けると一気に強風に煽られ難しくなるため、ここは流行る気持ちを抑え一つ一つ慎重に整えます。
準備を終え、ピッケル片手に道中を進み始めると下山された方々より逸れ違いざまに、
「今日は最高の天気ですよ!山頂では全部見えます!」
興奮冷めやらぬ様子で報告して下さり、僕のテンションもMAXに!!アドレナリンが止まらなくなり黙々と登り始めます。
取っ掛かりは木々の間を縫うように進みます。
早くも勾配がきつくなり、大きな筋肉を動かすので汗が出てきます。風もなく、太陽が照り付けるので尚更熱く感じてきます。
このままのペースで稜線に出て一気に冷やされると身体が動きにくくなるだろうなと思い、暫し小休憩を取ろうと腰を落ち着かせて振り返ると・・・
山の谷間から雲海に浮かぶ北アルプスを望む事が出来ました。
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その姿はまるで海の上に浮かぶ大陸のよう。
美しい景色に感謝し、白湯を一口。
ここからは文三郎尾根の核心部に入っていきますので気を引き締めます。
森を抜けると表情が一変、強い風が身体を揺さぶってきます。
振られた拍子にバランスが崩れる事を防ぐため、ピッケルで支点を確保しながら一歩づつアイゼンを効かせて登っていきます。
春には見えていたマムート印がトレードマークの階段も冬には全て埋もれてしまい、目の前には雪壁が立ち塞がる。
ルートを確保をしようと顔を上げると昇る太陽の光が眩しく、視界を遮ってきます。先行者が滑落してくる危険もある場所なので、くれぐれも二次被害にあわないよう注意が必要です。
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前日に降り積もった雪が乾燥してパウダー状になっているため、踏みしめる雪がグリップせず危険を感じる場所も多々ありました。
夏場と違い足場の状況が一変するので改めて冬は一歩一歩注意しながら時間を掛けて登る事が必要だと感じました。
山行は余裕を持って計画する事が大事ですね。
更に歩を進めていくと右手には雄々しい表情の中岳、阿弥陀岳が見えてきます。
均等の取れたすり鉢状の山容に写真を撮らずにいられません。
この辺りから一気に風が強く、時折耐風姿勢を取らないと身体を持っていかれそうになる場面が多々ありました。
遮る物は何も無いため、山肌を下る風が直撃してきます。走る雪がバラクラバで覆われていない頬を刺激し、痛みが出てきます。
ゴーグルを持ってきていたのですが曇るのが嫌でサングラスのまま森林限界を超えたのですが、やっぱり穏やかな場所で装備はしっかりと整えるべきですね。
状況が分からないなら尚更、途中で着ける事の方が大変なのでゴーグルは必ず着けるべきだと勉強になりました。
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![](https://assets.st-note.com/img/1709711851430-jJCVofkjcT.jpg?width=1200)
風が弱まった隙に一気に赤岳と阿弥陀岳へと抜ける分岐点へと登りきる。
ここまでくれば大きな岩に囲まれた空間になりますので風を防ぐ事が出来ます。
一息ついて周りの景色を見渡す。
あまりの絶景にただ「美しい」の言葉しか出てこない素晴らしいロケーションが僕を出迎えてくれました。
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同じ場所に居合わせたハイカーさんも同じ感情で一緒に景色を眺めていました。
赤岳には何度か登っているとの事でしたが、こんなに雲一つなく全ての山域を見渡せるのは初めてとの事で、ため息が出るようなこの絶景に出会えた瞬間に感謝です。
「先に行きますので満足行くまで写真撮ってください!!」
場所を譲ってもらい、お言葉に甘えて動画も沢山撮らせて頂きました。ありがとうございます。
ここからは山頂まで10分程、赤岳核心部の岩稜帯です。
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春にはチェーンが出ているので支点を確保しながら登る事が出来ましたが今は降り積もった雪の下。
頼れる支点はピッケルと両足のアイゼンのみ。
身体を半身に逸らせないと通る事が出来ないポイントを何度も通過します。
風が強く吹き抜ける場所なので先行者のステップも直ぐに消えてしまい、ピッケルを突き立てようにも岩に当たってしまい刺さらない。
乾燥した雪はパウダー状でアイゼンのグリップも効かない。
今日はソロだから周りには誰もいない。
怖いけど折角ここまで来たから赤岳は絶対に登頂したいな・・・
と進もうとした瞬間、
ふと下を見てしまい身が竦みました。
雪を中途半端に纏った岩肌出る急斜面が100m以上続いている。
直ぐそこに死が口を開けて待っている状況にこのまま登頂できたとしても僕の技術と臆病な性格だと降る方が難しいと判断し、悔しいですがここで下山する事にしました。
先に登頂されたハイカーさん、待ってもやってこない僕にもしかしたら滑落したかと思われたかと思いますが無事に下山してこの備忘録を残しています。
潔く登頂を断念して慎重に分岐点まで戻ります。
途中怖くて何度もへっぴり腰になりながら降りやっとの思いで分岐点へ到着、
恐怖に負けた自分を責めながら雄々しい阿弥陀岳を眺める。
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「僕は楽しみに山へ来ているのであって、恐怖を感じる為に来ているのではない、」
そう気持ちに整理をつけると心が落ち着きます。
しかし本当に怖かった。赤岳は雪山初心者なんてガイドブックとかに書いてあるけどこれで初心者だったらアルプスの雪山は当分行けなさそう・・・(泣)
切り替えて安全に下山します。
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下山は気温が少し高くなり雪に湿り気が出てアイゼンの刃が良く効く。
あっという間に降っていきます。
道中では春に縦走した横岳~硫黄岳を望み、更に彼方には蓼科山も見えました。美しい景色に見惚れます。
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![](https://assets.st-note.com/img/1709719167014-66wuUKT8l8.jpg?width=1200)
でもやっぱり今回の山行のベストシーンは北アルプスの峰々。
何度でも見返したくなる素晴らしい景色。改めて出会えた今日の縁に感謝しながら行者小屋まで降りました。
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行者小屋に到着し、改めて振り返ると凄い場所に行っていたのだなと感じます。
無事に帰ってこれた事に安堵し、一気に足の力が抜けます。思えば緊張続きでロクに水分も取らないまま山行を続けていたので少しだけ休憩を取ります。
【行者小屋 12:20着】
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さあ後は赤岳鉱泉まで戻り、撤収して下山するだけ!緩やかな林道をを突き進みあっという間に赤岳鉱泉に到着。
行きは30分程掛かりましたが帰りは20分程で到着です。
【赤岳鉱泉 12:40着】
幕営地に着くと天気が凄く良いので結露で濡れたシェルターも乾いており素早く撤収を済ませる事が出来ました。
お腹が空いていたので余った最後のカップラーメンを食べ、いよいよこの素晴らしい景色ともお別れの時間。
朝よりも更に濃くなった濃紺の空を見上げ、ありがとうございましたと一言。
次に来られる時はこんなに良い天候じゃないかもしれないので景色を目に焼き付け赤岳鉱泉を後にします。
![](https://assets.st-note.com/img/1709727792942-l5J3UWRgcW.jpg?width=1200)
帰りは早い物で、初日に景色も写真も楽しんだので一度も休憩せずに下山しました。
天気が良く道中は雪解けが始まり泥水の箇所も多々ありました。
もう間もなく訪れる春を予感させる雰囲気になんだか少し寂しい気持ちになります。
今回は赤岳の山頂に立つ事は出来ませんでしたが、お天気に恵まれ星空も、パノラマのアルプスも臨む事ができ大満足です。
また来年も厳冬期には八ヶ岳に訪れようと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1709728123351-powxW9lKiB.jpg?width=1200)
帰って写真を見返すと思い出を隅々まで振り返る事が出来、改めて素晴らしい旅だったなと思います。
日々都会の喧騒や時間に追われ、なんのために頑張っているのか見失いそうになるときもありますが、忙しい時間があるからこそこの旅の時間がより濃密で掛け替えのない瞬間になるのだろうなー、なんて思います。
今回の経験を糧に、仕事を頑張り次の山旅も全力で楽しもうと思います。
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6.改善点
今回初めての厳冬期1泊2日の旅を経験していくつか改善点が見つかりました。
①ペグについて
ベースキャンプの場所によると思いますが、2000メートル前後の場所では雪が少ない可能性がある。
得に今年のような暖冬は路面の状況が予測できないため、3シーズン用のペグも持参するべき。
スクリューペグはサイズも大振り、打ち付けても曲がりにくいため使い勝手がとても良いと思いました。
②シェルターについて
僕が使っているようなワンポールタイプは自立しないため、ペグダウンが必要になる。
今回のような雪が少ない、又は地面が凍っているような環境では設営に時間もかかるし、場合によっては立てる事も出来ない可能性があるので厳冬期とワンポールは少し相性が悪いと思いました。
状況に応じて上手く対応できる技術や知識を磨くか、環境に左右されない自立型のシェルターを購入するのも有りかと思いました。
③テーブル
エクストリーム用のガスを購入していきましたが地面が冷たいと全然火力が上らず、お湯作りに時間を要しました。
寒冷地用のガスだとしても冷え切っている状況では燃焼しないため、テーブルの必要性を感じました。
ショベルで地面を平に慣らしたつもりでも凹凸はどうしても出来てしまいますし、お湯をこぼしてシェラフを濡らしてしまうと命の危機に関わります。
平面を作るためにも、地面からの冷気を防ぐためにもテーブルはマストで購入しようと思います。
④ビビィについて
幕の結露がシェラフに降りかかり濡れてしまう事を防ぐためにマミー型のビビィを寝袋の上に被せましたが、対策したつもりがシェラフの中で結露を起こしてしまいました。
僕が愛用しているシェラフのハイランドデザイン「ダウンバッグ」はUDD-超撥水ダウン‐を使用した濡れや湿気に強いタイプのシェラフです。
シングルウォール且つ僕のような換気抜群のシェルターであれば外気温と大きく差が出ずそもそも結露が起きにくいので、カバーを付けない方がむしろ良かったのではないかと思いました。
若しくはもっと通気性を良くするためにマミータイプではなく封筒型のSOLエスケープビビィLiteにするなどして、完全にzipを締め切らないタイプを使用することで温度差を緩やかにし、結露を今よりも軽減できるのはないかと思います。
以上、赤岳厳冬期1泊2日テント泊山行の備忘録でした!
次の旅も素敵な景色との出会いを楽しみにしています。