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2024年報酬改定の影響 就労定着支援について

障害福祉サービスでは3年に1度、制度の見直しも含んだ報酬改定が厚労省主導で行われます。福祉サービスには障害者の就労にかかわるサービスがいくつかあり、2024年の4月改定で就労定着支援事業に影響が出た部分と元からある課題を解説をしていこうと思います。

改定の概要

まずは改定の内容ですが、利用者の人数による差がなくなり定着率のみの基礎算定になりました。加えて、どの定着率のランクでも報酬が上がっており、福祉事業所としては運営がしやすい改定となっています。
この改定が実施された理由としては事業の普及率が伸びない事を改善することが目的です。

※令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要より引用

課題

①サービス利用率が低い

 1つ目の理由としては障害福祉サービスは収入によって個人負担がなくなります。ただ、定着支援を利用するという事は給料による収入が発生しています。これまで無料で使えていた福祉サービスが、就職後すぐというわけではありませんが個人負担が発生する可能性がある為、利用を敬遠する方もいます。
 もう一つの理由としては就職することがゴールとなり過ぎる点です。この感覚は障害のある本人も支援者も同じです。本人は就職が決まった事で、その後の課題に目が行きにくく、支援者も定着期間の3年の過ごし方を本人と共有出来ていない事業所が多くみられます。

②定着支援事業が始まるまでに半年の期間がある

就労移行や就労継続などを経て就職した場合、就職後半年は元の事業所が支援しその後就労定着支援事業が開始します。半年の間は元の事業所には報酬が発生しません。就職したばかりで一番支援が必要な時期に事業所は無報酬で支援をすることになります。そこであえて支援の質を落とす事業所はさすがにあまりありませんが裏付けがない支援では優先度が下がる事業所の事情もうなづけます。

③法律通りの運用がされていない

制度運用上では就労定着の3年間は企業内での支援ではなく、本人が関係機関の構築を含めた職業生活が送れる様に支援する期間と定められています。つまり、この3年間で本人、企業ともに直接的な支援がなくても大丈夫な支援体制を作ることが求められています。ちなみに前回の改定で、企業訪問が必須項目から外されています。つまり企業内での支援より職業生活を支える体制づくりを重視された事の表れと言えます。
さらにいうと3年修了時に体制づくりが出来ていない事業所は減産対象となることが明記されています。

④事業の普及率が悪い

特定の場所に利用者を集めてサービスを提供するものではないため、スケールメリットが 働く余地は少なく、利用者数を増やしたとしてもコスト軽減が期待しにくい事業なので実施する事業が少なくなっています。今回の改定で利用者の人数による差がなくなり定着率のみの基礎算定にしたことで普及率を上がることが期待されていますが、実施4か月が経った現在では実施前の自然増を超える伸び率は認められていません。

最後に

実施事業の普及率を上げるには、今回の単価上昇・利用人数の制約解消では効果は薄かった様に感じます。3年後の改定では自然増の範囲で増加した事業所数がどう評価されるかが注目されます。
現行、実施している事業所も、地域で本人が安心して職業生活が送れる様なサービス体制を構築できていない事業所が多いです。
この2つの課題を解決するには、事業を正しく理解し運用できる様に地域行政が指導していく必要があります。ただ行政・相談支援事業所がそもそも就労系サービスに対するアセスメントが弱いという別の側面もある為、中々いい方向に進んでいくには時間がかかりそうです。

もっと詳しいことがお知りになりたい方、ほかの障害福祉の制度についてもお知りになりたい方はコメント等でお知らせしていただければ記事にさせていただけます。


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