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ソウルフィルド・シャングリラ 第三章(2)

承前

西暦2199年7月1日午前10時30分
澄崎市極南ブロック第二都市再開発区域、19番街F21號通り

 少女は、お姫さまが見たかった。

 少女は南西ブロックの廃棄区画にある、今にも崩れそうなアパートの二階で母親と息を潜めるように暮らしている、この街ではありふれた非市民〈ノーバディ〉だった。
 廃棄区画。再整備対象からも外され、道路のあちこちから海水が染み出す、退廃と抑鬱、そして諦観が支配する街。
 そんな場所にも、祭りの熱気は届く。
 少女は祭りの日を、ずっとずっと楽しみにしていた。今までもお祭りが毎年やっているのは知っていた。少女はお母さんの世話や仕事が忙しくて行ったことがなかったけれど。だが今回のそれは規模が違うらしい。
 祭りでは、見たこともない綺麗なものや、おいしいものがたくさん売りに出されるのだそうだ。少女と二人暮しをしているお母さんが、病気で立ち上がれず、声すら出ないのに身振り手振りで教えてくれた。少女はそれを目を輝かせて聞き入った。
 ――でも。
 やっぱりそういう綺麗なものやおいしいものを愉しむのには、お金がいる。
 少女は一生懸命お金を貯めた。だが、そもそも少女一人の稼ぎではお母さんと自分が餓死しない程度に暮らしていくだけで精一杯だ。ノーバディである少女たちにALICEネットから割り当てられるエネルギー量は極わずかなものだ。過労になるのは目に見えていたが、それでも少女は祭りを愉しみたいと心から願っていたのだ。
 鉄屑を拾って工場に持っていくお仕事も頑張ったし、売血所でもいつもより多目に採ってもらった。お母さんはとても残念がっていたけれど、腰まであった髪の毛も切って売ってしまった。そのせいか、ここ一週間くらいは凄くふらふらしたり突然目が霞んだりしたけれど、少女は音を上げなかった。
 当然だろう。少女は、初めて自らの愉しみのためにお金を稼いでいたのだから。
 そして、再整備区画で買い物をしている時に聞いたニュースが、より少女の熱を加速させた。
『天宮のお姫さまがやってくる』
 天宮家次期当主継承権序列第壱位、天津照宮白銀媛悠久真理命〈あまつしょうぐうしろがねひめゆうきゅうまことのみこと〉。
 天宮悠理。
 今までは機密の分厚いベールの向こうに隠れていた、この澄崎で最も貴い少女。売血所に貼られていた画像は不鮮明だったけれど、それでも写真の中の少女がとても――非現実的なまでに美しい顔立ちをしているのがわかった。
 白銀の髪。深紅の瞳。そして髪と対を為す艶やかな漆黒のドレス。
 本物だった。少女が想像していた通りのお姫さま。
 なにより少女を興奮させたのは、悠理の眼と髪が少女と同じ色をしていたことだった。
 少女のアルビノは、お母さんがまだ自分を妊娠中だった時に瘴気中毒に罹ったのが原因らしい。廃棄区画では、閉鎖されているはずの地下から住人たちが〝瘴気〟と呼ぶ毒性の強いナノマシンが吹き出すことが時々ある。お母さんはそのせいで今も一人では何も出来ないままだ。
 しかしその程度、ここではありふれすぎていて、不幸扱いされない。路地裏で強盗に刺されて死に、エネルギー供給が足りなくて死に、市警軍によって気まぐれのように実施される区画消毒キャンペーンによって死ぬ。
 生きていけるだけで御の字だよ、と周囲の大人たちは言っていた。その通りだと少女も信じていた。少女にとって漠然とした世界の不条理の象徴である、自分の色〈アルビノ〉。お姫さまも同じ色。世間を知らなすぎる少女は、境遇の差を嫉妬すらせずにただ感動した。
 ――一目見たい。そして、自分のことも出来れば見てもらいたい。
 少女は知る由もない。元より反天宮感情のあったこの廃棄区画が、それを更に煽るために空宮の裏からの援助で辛うじて成り立っているなんてことは。最も、急に即位が決まった悠理に関する周囲の口さがない噂など少女は気にもとめなかったのだが。
 廃棄区画は絶望の吹き溜まりのような場所ではあるが、ALICEネットの恩恵さえ僅かにしか届かない故に一部の住人同士の結束は強い。少女が一日限りの祭を愉しむために、近所のおばさんたちがお母さんの面倒を見てくれることになった。
 そして当日。買い物以外では初めて廃棄区画を出る少女は、髪と目を隠すフードを被り、精一杯着飾って新しい当主が行幸予定の幹線道路沿いに向かった。
 こんな予定路ぎりぎりの場所を予約するだけでも少女の家のほぼ一月分の家計が飛んでいった。廃棄区画と再整備区域では物価は倍近く違うのだ。
 だが目的地に辿り着く遥か手前で、市場が立つ時の倍以上の人混みに少女はあっという間に飲まれてしまった。祭りを愉しむどころではない。
 周りからは喧嘩の怒号まで聞こえてくる。怖くなって、端を歩こうとしたら前から走ってきた男の人にぶつかり、過労気味なのと昨夜興奮して寝不足だったのがあわさり、簡単に転んでしまった。男は助け起こすどころか謝りもせずそのまま去って行く。
「いたた……え、あれ?」
 首から下げていた財布が入ったポーチが、鋭い切れ目を見せて切り取られていた。スリだ。間違いなく、今の男だろう。
「あっ……」
 振り返る。人、人、人。男の姿はとうに見えなくなっていた。ポケットを探る。しわくちゃの一BLC紙幣が数枚。少女の月の小遣い以下の額だ。何より最悪だったのは、行幸観覧チケットもポーチに入れていたことだった。
 大事なものを一箇所にまとめて入れていた自分のうっかりを攻めようとしても、もう遅い。
「ぜんぶ、なくなっちゃった」
 呆然としてしまって泣くどころではなかった。
 ぼけっとしていたら、喧嘩の野次馬を避けて無理やり押し通ってきた団体に蹴り飛ばされてしまう。フードが外れ、少女の白い髪に周りから奇異の視線が投げられているのを感じ、慌てて被ろうとする。
 その時、少女の目の前に誰かが立った。身を固くする。以前街を歩いていて突然髪の毛を引きちぎられた体験がフラッシュバックし、少女の白い肌は血の気を失い血管が透けて見えるかと思えるほど青ざめた。
 だがその誰かさんは動かない。少女も動けない。通行人たちは露骨に舌打ちして二人を避けて通っていく。
 一分ほど、まるでだるまさんがころんだで遊んでいる時のようにそうやって固まっていた。
 どっと歓声が上がり少女は思わずそちらを見やる。筋肉ダルマの男の人がお化けみたいな女の人に右ストレートを顎に叩き込まれて倒れこむところだった。
「立てるか」
 嗄れた声が振ってきて、少女はそちらを見上げる。誰かさんは、少年だった。年は少女より多分4つか5つ上。声からすると、ひょっとしたらもっと年上かも知れない。晴空を写したかのような灰色の髪の毛。少女より薄いけれどやっぱり他人とは違う、血の色の眼。祭りの浮かれた空気とは不釣り合いな、黒くてタイトなまるで軍人さんが着るような服。
 不釣合いなのは服だけでなく雰囲気もだった。なんだか怒っているような――もしくは今にも泣き出しそうな。
「立てるかと訊いているんだ」
 物凄くぶっきらぼうに、少年――護留は再度尋ねた。

      †

 ――なぜ僕はこの少女を、放っておかなかったのだろう。
 後悔にも似た思考が護留の頭の中を早くも過ぎっていた。
 悠理の行幸を見ようと集まっていた人々を掻き分けながら歩く。この街の人間全員がここに集まっているのではないかと思うくらいの黒山の人集り。新しい天宮の主は即位時の公約として再整備区域の開発再会を掲げていたため、低級市民〈ロウアー〉を中心とした住人の支持はかなり篤いようだった。
 手を離したらすぐ離ればなれになる。しっかりついてきているか呼びかけようとし、その時になって護留は己の間抜けっぷりに気付いた。
「――そういえば君、名前はなんていうんだ」
「おなまえ?」
 今更? というような顔をする少女に、渋い顔で頷く。涙の痕はもう乾き、口の周りは屋台の食品の滓がついている。更に少女の手にはりんご飴。それも二本も。
 護留に助け起こされた少女は気が緩み、同時に一気に悲しみが押し寄せて泣きに泣いた。まさか声をかけただけで泣かれるとは思っていなかった護留は慌てに慌てた。これから要人を誘拐しようという人間がこんな場所で目立つのはまずすぎる。
「あー……泣きやまないか、いや、泣きやみなさい? ……泣くな。泣くなって。……泣くのをやめたらそこの焼きそばを買ってやる」
 ピタッと泣き声が止まった。
「本当? 二つたのんでもいい?」
 ――こいつ……。
 いきなり屋台に走り出す少女を見て、護留は自分から声をかけたにも関わらず釈然としないまま後を追った。
 その小さく細い身体のどこに入るのか、その後も少女は大いに飲み食いした。
「お! 嬢ちゃん、兄ちゃんと一緒にご行幸を見にきたのかい? 優しい兄ちゃんで良かったねえ! これはオマケだよ」
 自分はこの子の兄ではないとよほど口を挟もうかと思ったが、満面の笑みで屋台の売人から二本のりんご飴を受け取る少女を見ると溜息を吐いて肩を落とした。先程から少女はどの屋台でも二人前を頼むが、護留には渡そうとしない。支払いはもちろん護留である。
「あたし、お姫さまを見にきたんだあ。お兄ちゃんもそうでしょ? その眼と髪どうしたの? あたしはお母さんのお腹の中にいる時の病気でこうなったんだけど。あ、あっちでおもちゃ配ってるよ行かないの?」
 少女は、よく喋った。話題はころころ変わり、ただでさえ自分より年下の人間との会話に不慣れな護留を辟易とさせた。
「そうか。違う。どうもしてない、勝手にこうなった。行かない」
 おざなりな返事を返しても少女はあまり気にせずに屋台を見つけては護留を伴い駆けていく。
 時間と共に周りの人混みは更に増えていっているが、護留に手を引かれて安心しきっているのか、風船を配るピエロによそ見をしながら少女は歩いていた。
 少女は護留に名前を訊ねられると、ちょっと考えこみ、そしてにこっと笑うとこう言った。
「知らない人に名前を教えたらだめですよって、お母さんが言ってた」
 ――……こいつ。
 もう本当に置いていこうか。
 というか、自分は何をしているのだろうか。これから間違いなく警備兵たちと血生臭いやり取りをすることになるというのに。作戦決行まで時間があるとはいえ、さっさと別れたほうがいいのは間違いない。
「知らない人に着いていって、奢ってもらってもいいとは言っていたのか、君の母親は……」
 護留の渋面を見て少女はぷっと吹き出す。
「そんなわけないよー。ただ、こういうときは男の子が先におしえるんだよとは言ってたかな」
「いや、あのな……まあいいや」
「よくないよう。あーなたのおーなまーえなんでーすかー?」
 歌うような妙な抑揚をつけて、無邪気に訊ね返してきた。護留は一瞬迷った。もし、彼女が〝負死者〟を知っていたら?
「ふふっ」
 だが結局じっと返事を期待する少女に負けて答える。
「……護留。引瀬護留だ」
「へえ、まもるくん、かあ。なんだか、ぴったりな名前だね!」
 幸い少女は護留の通称は知らなかったようだ。だが、
「――ぴったりって、どういう意味だ?」
 そんなことを言われたのは初めてだった。ぴったりどころか、未だにこの名は自分の物ではないという違和感が離れないのに。
「だって、あたしのことをまもって、助けてくれたから」
 虚を突かれ、つんのめりそうになった。少女もそれに引っ張られて傾き、楽しそうにきゃははと笑う。
 ――護る。
 護り、留める。
 この名の由来。そんなもの、考えたこともなかった。なんの意味もない、ただの仮符号のようなものだと思っていた。
(・――これをあなたに護り留めて欲しい――・)
 一瞬の偏頭痛。そして、頭の中には声。
(・――逃げ続け、天宮の手に渡らないようにして欲しい――・)
「うぐっ……」
 思わず呻く。目からは血涙が溢れてきた。
「えっ、どうしたのまもるくん!」
 少女がしゃがみ下からこちらの顔を覗きこんできた。護留は袖で血を拭う。爪を立て、掌を傷つけると血液はそこにずるずると流れ込んでいった。
「なんでもない。少し疲れてるだけだ」
「でも、血が……」
「ほら大丈夫だろ」
 目を見せる。拭った後の血痕すら残っていない。少女は不思議そうな顔でそれを見つめていたがいきなり手を伸ばしてきたので避けてしまった。
「あ……」
「痛くも苦しくもないんだよ別に」
 ややきつめの調子で言う。計画を前にして要らない面倒事を自ら抱え込んでしまった自分の甘さに腹立たしさを覚えていた。少女はビクッとして手を引っ込めるが、ぐっと唇を結ぶと、こちらの目を見据えて言った。
「傷がなくても、痛いときは、あるんだよ。こころだって血を流すの」
「……それも母親から聞いたのか?」
「ちがうよ。あたしの経験」
 出会った時こそ大泣きしていたが、それ以降少女はずっと笑顔だった。だが彼女はノーバディだ。その日常は護留の殺伐とした暮らしとそう変わりがないのかも知れない。だとしたらこれは子供の背伸びした慰めではなく――本心からの思いやりなのだろう。
「――君に奢りすぎて財布の中身が寂しくなったからな。明日の飯をどうしようかと悩んでいたんだ」
「本当? え、でもあたしそんなに頼んでないよ?」
「本気で言っているのか君は……」
「あ、まもるくんやっと笑った」
 思わず口元に手をやる。その様を見て少女はますます上機嫌になり、
「もっと元気が出るようにいいもの見せてあげる! これ一個持ってて!」
  少女はりんご飴を一つこちらに押し付けると、ポケットを探り、一本の赤い糸を取り出した。糸は輪になっていた。
「よかったあ、これはポーチに入れてなくて」
 りんご飴を器用に持ったまま少女は輪の縁に両手の指をかける。
「あやとりだよ! 今あたし練習してて、けっこうすごいんだから」
(・――ほら、見てお母さん。あたしもあやとり上手くなったでしょ? 悠理にも教えてあげようと思って練習したの。まだお母さんみたいに自分で形を考えたりはできないけどね――・)
 先ほどと同じか、それ以上の頭痛と共にまた声が聞こえてくる。今度は耐えた。少女はあやとりに夢中でこちらの異変には気づいていないようだった。
「ここをこうやると……ほら、塔だよ!」
 捻れた螺旋を描き、縦横に糸が行き交うその形はなにかと問われれば確かに塔だったが、
「下手くそだな、君」
「なっ!?」
 ずばりと言った護留の言葉に本気でショックを受けた表情をする少女。白い顔はすぐに手に持つりんご飴と同じくらいに真っ赤になり、
「じゃあまもるくんもやってみれば! むずかしいから!」
「道の真中でやることじゃないだろ……またこけて泣くぞ」
「あたしそんなにすぐに泣かないし!」
 街頭の時計は10時50分を指そうとしていた。もう天宮悠理はこの再整備区域入りをしている頃合いだろう。幹線道路を浮遊車〈フライヤー〉で回った後は元区庁舎の前で短いながらも所信表明をすることになっている。護留はそのタイミングで仕掛ける予定だった。
 ――わああああああああああああ!
 急に一区画ほど先から大きな歓呼が上がった。
「あ……」
 お姫さまが、やって来たのだ。少女は自分の一番の目的を思い出し、それと同時にチケットをなくした現実ものしかかってきた。
「そろそろ、別れるか。君は天宮の新当主を見にきたんだろ」
「うん……でもあたし、予約のチケット、なくしちゃったから」
 それで護留が見つけた時へたり込んでいたのかと、納得する。
「……よければ、余ってる観覧チケット、やるよ」
「え?」
 ばっと顔を上げる少女。その表情には先ほどまでの悲壮さは既に微塵もない。どこまでも現金な娘だ。
「ほら」
 護留が差し出したチケットを遠慮なく受け取ると少女はその場で跳ねまわった。
「やったー! まもるくんすごいね! お金持ちだね! チケット余ってるなんて!」
「いや、まあな」
 今渡したチケットは現場の下見のために大量にダフ屋から購入したもののうちの一枚だ。確かに法外な値段を請求された。ノーバディの少女にとってはまさに身を粉にして働いてようやく手に入れられるものだろう。
「お礼にりんご飴一個上げる! あと、このあやとりも!」
「あやとりはともかく、もともと僕が金を払ったやつだろ、りんご飴は!」
「オマケで貰ったからあたしのだもーん。いらないならあたしが食べちゃうよ?」
「……貰っておこう」
「まもるくんは? お姫さま見ないの? チケットあるんだったら一緒に見ようよ」
「残念だけど、僕はこれから仕事があるんだ」
 少女は驚きの顔になった後にしょぼんとした様子になる。
「お祭りの日にもお仕事しなきゃいけないなんて……。まもるくんって本当はびんぼうさんなの? たくさん食べ物頼んじゃってごめんね? このりんご飴もあげようか?」
「二個もいらないよ。とにかくこれ以上は一緒にはいられないんだ」
「そうなんだ……もっと一緒にお祭り見て回りたかったな」
「子守から開放されてこっちはせいせいするよ」
「またまたー。そんなこと言って本当はさびしいんでしょ!」
「ああ、そうだな。もうそれでいいよ。じゃあな、転けるんじゃないぞ」
「あ、待ってまもるくん!」
「なんだ。まだ食べ足りないのか?」
「あ、あたしそこまでいやしんぼさんじゃないもん!」
「どの口が言うんだ……」
「もー! そうじゃなくてー! 名前! まだ言ってなかったでしょ」
「ああ……。君が妙なこと言うから聞きそびれていたな」
「みょうなこととか言ってないよ。普通だもん」
「いいからさっさと教えてくれ」
「んもー」
 歓声は近づき、観覧チケットを持ってない民衆が予約場所に割り込もうとして辺りは混沌を極めてきた。護留も押されて少しよろめく。
「失礼」
 ぶつかってきたのは男だった。服装は違ったが、顔は覚えていた。先ほどりんご飴を一つサービスでくれた、屋台の売人だ。護留は訝しんだ後、冷水を掛けられたような感覚を味わう。
 売人は、暗灰色のスーツを着込んでいた。
 目が合ったのは一瞬のことだ。売人はするすると人混みを抜けていき、姿を消す。だがそれでも護留ははっきりと見た。
 そいつが、笑ったのを。
 ――我々は〝助力〟を惜しみませんよ。
 屑代の言葉が脳裏に浮かび、護留の直感が警鐘を鳴らした。
「あのねえ、あたしの名前は――」
「――逃げ、」
 叫ぼうとしたその時、少女と護留が手に持つりんご飴が、
 爆裂した。

(続く)

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