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ドラえもん のび太の新恐竜(2020:日本) #居石信吾の映画実況雑記

 コロナウイルス騒動で延期されていたドラえもん映画最新作、のび太の新恐竜を公開初日に観てきたので感想を書きます。


注意!

以下の文章にはネタバレがあります!

注意!


進化と再構成と

 ドラえもん50周年記念作品として作られた今作は、誰もが知るドラえもん映画一作目「のび太と恐竜」のリビルド作品です。リメイクなら2006年にやってますので、こちらは文字通り、一から新しく現代フォーマットにそって再構築したものなのです。
 その結果生まれたのは何か?
 それは既存のドラえもん映画スキームの破壊であり、今後50年間ドラえもんを存続させるための新しいアニメーションでした。
「ドラえもーん!→主題歌」のお約束を無くすのに、どれだけの勇気と決断力が必要だったのか僕には想像すらできません。中盤スネ夫が呟く「恐竜を捕まえる悪いハンターがいるとドラえもんから聞いたことがある」ってセリフも、逆説的に恐竜ハンターが敵ではないという展開破壊になっておりもうこっちはクリティカルヒット貰いまくりです。

王道と横道と

 恐竜の卵をタイム風呂敷で復活させ、生まれた恐竜を育て上げ、白亜紀に返す。
 ストーリーはのび太と恐竜をなぞる様に進みます。ですが、のび太と恐竜と新恐竜との違いはまず第一に「科学的正しさ」が挙げられるでしょう。最新の学説や研究結果をきちんと反映させています。のび太恐竜2006では「ドラえもんでそういうのは野暮だよね」と切って捨てた要素が、嫌味にならない程度にすっと差し込まれている様に僕はまず感動しました。
 ですが序盤の展開はあまりになぞりすぎなのでは? そして少し横道に逸れて長すぎなのでは?となる。例えばのび太が遅刻しては叱られる、クラスでバカにされる、逆上がり出来ないなどの描写です。でも実はそれは後半に向けての伏線であり全てが本道だったんです。

キューとミューと

 ピー助に代わり主役を務めるのが有翼恐竜の双子、キューとミューです。実は彼らは宇宙完全百科事典にすら載っていない、まさに「新恐竜」なのです。
 良く育ち飛び回る元気いっぱいなミューとどことなくのび太に似ているダメダメなキュー。
 僕は最初あまりに可愛すぎるその媚び媚びなデザインに反発を抱きました。なんなら映画の途中まで抱いてました。なんで「白亜紀の酸素濃度は現代と違って高いから気をつけて」と科学考証に気を配れる映画でこのアニメアニメしたデザインなのだと。
 ですが過去に向かい「本物の」恐竜の登場により、そのデザインの意図を完全に把握しました。今作は敵対・中立な恐竜は全て写実的CGで描かれており、そのクオリティは凄まじく高いです。が、誰とでも友達になれるひみつ道具「友チョコ」を食べさせると途端に見た目がカトゥーン調になるわけです。
 物語の中盤、ついにキューとミューと同じ種類の恐竜の群れが出てくるのですが、これが全部写実的なんですよ。
 やられた。そう思いました。逞しい脚、滑空するその姿。キューとミューと同じデザインにも関わらずそこには生きた恐竜達がいました。

過去と現代と

 タイムパトロール隊も勿論出てくるのですが、その扱いはどちらかと言えば黒子的であり、あまりストーリーには関わってきません。彼らはもう少し上手く料理できた気もしますね……。唯一の心残りです。
 過去は「過去作」の事です。中盤にとあるファンサービスがあるのですが、序盤に軽くニヤッとする程度に差し込まれていたので本気で愕然としました。こんな、こんなことがあっていいのか? 雲の王国でキー坊が出てくるのとは訳が違うだろ!?
 更には展開自体もドラえもん映画で恐竜を扱ったもう一つの作品「のび太と竜の騎士」のオマージュが入り僕は吐くほど興奮しました。「のび太の恐竜2020」にしなかった理由……!!
 そして過去は「歴史」でもあります。それは進化の歴史です。ドラえもんを観てきた僕たちが育ってきた歴史です。
 しつこいくらいに序盤から映し出されていた鳥、ジュラ紀と白亜紀を混同しがちな世間に物申したいだけだと思ってた時代取り違え、のび太の逆上がり失敗描写、ちょっとショボいと思っていた今作のひみつ道具を用いたマイクラ的DIY描写……全てが立ち上がり、合流して「進化」というテーマがバーン!と大写しになります。
 これまでの別れをしっとりとやるドラえもん映画と違い、さよならはかなりあっさりドライです。
 ですが、ラストに逆上がりを一人で克服するのび太のシーンを挿入することにより、6600万年前と現代の接続を果たしまさに夏空のような晴れやかな気分となりました。

これまでとこれからと

 ドラえもん映画はいわゆる旧ドラの終了を機に視聴をやめてしまった人は多いと思います。
 また、わさびドラえもんも十数年経ち卒業してしまった子供たちもいるでしょう。
 これはそんな人達にこそ観て欲しい新時代の最先端にあるエンターテイメント映画です。ノスタルジーと未来への期待を精妙なバランスで配分された、言い方は陳腐ですが「大人も楽しめるドラえもん」です。言うまでもなく声優、作画、主題歌全てが超一級の最高のアニメ作品です。
 来年の映画は久しぶりにリメイクとなりそうですね。アレが今のクオリティで甦るとワクワクが止まらないです!

余談

 ミスチルの主題歌はいい感じなのですが挿入歌にするには少し合わないかなとなりました。
 あとしずかちゃんのお風呂シーンが全くエロくないくてこれも時代か……としょんぼりしていたのですが、川辺で水遊びするシーンの靴と靴下を脱ぐ作画の良さと屈んだ時の尻のラインが天元突破しており、僕はこれからもエロい目でドラえもんを観続けると誓いました。

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居石信吾
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