多くの子どもが経験"チャットでのトラブル"防ぐには?
ネットを介した人間関係で悩む子どもたち
LINEのトーク、オンラインゲームのチャットなどのやりとりで悩んでいる子どもたちは多くいます。
実際のお友だちだけでなく、会ったこともないゲームの相手という場合もあります。
悪口や喧嘩では終わらず、誹謗中傷の加害者・被害者になってしまうことも少なくありません。
私が相談を受ける時は既にトラブルが起こってしまった場合がほとんどですが、その度に、未然に防ぐための教育の大切さを痛感しています。
未熟さゆえのトラブル
「死ね」「きもい」「うざい」
子どもたちから日々聞こえてくるこれらの言葉。子どもたちにとっては全く普通のやりとり。注意すると「なんで?」と逆に聞かれます。
「そういう言葉苦手でドキドキしちゃうから」と言うと納得するのか、使わないように気をつけてくれます。
(でもすぐにもどってしまいますが笑)
言葉のやりとりでトラブルになってしまう原因の一つに、文字のやりとりだけだと意図が伝わりにくいことがあげられます。
特にトラブルの原因になる言葉には、主に2つの特徴があると私は考えています。
・インパクトのある言葉
・いろいろな意味で使える言葉
子どもが頻繁に使う言葉は、文字が少なく発音が楽なものがまず前提なのですが、そのほかに、語感に面白みがあって友だちと共感できる言葉、汎用性が高い言葉が多いと感じています。
言葉の重みや意味など考えずに何気なく使っていて、微妙な違いに合わせて使い分ける工夫を普段していないので、文字だけのコミュニケーションになった時にも同じように使ってしまって、誤解が生じるのではと思うのです。
大人でもメールやSNSのやりとりでコミュニケーションが上手くとれずにトラブルが生じてしまうことを考えれば、語彙も少なく社会性も想像力も未熟な子どもならばなおさらです。
チャットトラブルを防ぐために
ネットでのトラブルを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか。
親のいう事を素直に聞く年齢とそうでない場合、子どもの方がネットやスマホに詳しい場合などで対応は変わってくると思います。
それでも根気強く、年齢に合わせた工夫をしながら、大人がサポートしていく必要があります。
チャットトラブルを防ぐ対応策
■最新のトラブル事例を知る
最新の情報が掲載されているサイトをいくつか知っているだけで役に立ちます。小学生以下ならば一緒に見て、中高生以上ならば保護者が目を通して食事やちょっとした話題の中で話す程度でも良いと思います。
・上手にネットと付き合おう!安心・安全なインターネット利用ガイド
総務省によるサイト。トラブル事例、誹謗中傷やフィルタリングなどネットトラブルを防ぐヒントが漫画や動画で紹介されています。
・TOMARIGI
SNSトラブル裁判例共有サービス。裁判例だけでなく、対処法や悩みを共有できる体験談広場もあります。
政府広報オンライン、文部科学省、NHK for schoolなどでも事例や対応方法などとりあげているので、お子さんやご家族の状況にあった信頼できるサイトやサービスを一つ見つけておいてはいかがでしょうか。
■技術的な対策をする
現在、フィルタリングを含むペアレンタルコントロール、プライバシー設定などサービスや機能も多種多様です。
誹謗中傷など危険なメッセージが送信されたら保護者に通知される、子どもがSNSでつながっている相手を確認できる、などのサービスもあります。
「フィルタリングをすると不便」と嫌がる子どもが多くいますが、18歳未満がスマホを利用する場合は「フィルタリングサービス」への加入が法令で決められています。
大人も子どもも正しく理解して、快適に使える範囲で設定していく必要があります。
各種キャリアのサイトでもわかりやすい説明が掲載されていますし、店舗でも説明してくれます。
■「どうありたいか」子どもがマイルールを考える
ゲーム機やスマホを持った時点でルールを決めるというのはとても良いことですが、NTTドコモの調査では、6割が親と決めたルールを破った経験ありというデータもあります。
そこで、長時間使用、特にお友だちとの途切れないやりとりに悩む子には、ネットを使って「どうありたいか」「どうしたいか」をまず考えてから、マイルールを決めてもらうことを提案しています。
例えば、
・楽しくみんなと気持ちを共有したい
・自分の時間を大切にしたい
・1日1時間は好きなことに使いたい
・自分は疲れやすいからしっかり休みをとりたい
手元にある機器やネットを使用して自分の人生をどうしたいのか、自分はどうありたいのか考えると、使用時間、投稿内容、友だちの範囲などのマイルールも決まっていきます。時間はかかりますが自律をサポートすることが大切だと感じています。
■家族間SNSで語彙力を高め、会話になれる
出来ればスマホなどの機器を持ってすぐにお友だちとやりとりするのではなく、慣れるまでは家族だけでのやりとりをします。
表現など気になる点があったらそのつど話しあい、SNSでのコミュニケーションに子どもを慣れさせ、親から見ても大丈夫だと思える状態になったら友だちとのSNSを始めてみるのが理想です。
年齢によっては、始めてしばらくは定期的に友だちとのやりとりや履歴を親がチェックするのも良いと思います。
SMS、メール、LINEのほかに、「家族間SNS」と言われるアプリもあるので使ってみるのも良いと思います。
■想像力を高める
子どもたちは、初めて知った方法や、ほかの子やユーチューバーなどがやっているのを見ると、気軽にまねしてしまいがちです。
人を不快にさせる発言、一時的なノリや感情で投稿する行為が、周りの人だけでなく自分も傷つけ、大きなトラブルになる可能性があることを頭でわかっていたとしても、衝動を抑えきれない場合もあります。
よくあるトラブルを学び、自分の行動を客観視し、そのあとどうなるのか想像できるようにします。
・スマホにひそむ危険 疑似体験アプリ(デジタルアーツ株式会社)
ネットいじめや友達とのトラブルなどを疑似体験できるアプリです。保護者がとるべき対策の解説もあります。
・情報化社会の新たな問題を考えるための教材~安全なインターネットの使い方を考える~
文部科学省のYouTubeチャンネル内の「情報化社会の新たな問題を考えるための教材」です。
たくさんの事例にふれることで、「自分だけではなかったんだ」と安心し、相談にきてくれた子もいます。
詐欺や犯罪のような大きなトラブルでなくても、ささいな言葉のやりとりによって日々ストレスを感じ疲弊している子どもは多くいます。
すぐに問題が解決しなくても、誰にも言えず悩んでいたことを話せるだけでも、その子にとっては一歩前進です。
大人も全知全能ではありません。でも、私たちの働きかけによって子どもたが何らかのきっかけを作ってくれたらと願わずにはいられません。
最後に
進学や就職にも影響するバイトテロや不適切投稿。
スクショで、閉ざされたやりとりも拡散されてしまう現代。
授業でもネットリテラシーの授業が行われますが、悪気なく短絡的に行われるこれらの行為は日々の行為の積み重ねであり、一朝一夕で変われるものではありません。
何が良くて何が悪いのか、大人でも判断が難しいことは多いです。
SNSでのやりとりであっても結局は「人と人」のコミュニケーションです。「デジタルネイティブ」と呼ばれる子どもたちと対等かそれ以上に頑張ってなろうとしなくても、私たち大人には沢山の経験と知識があります。
自信をもって、私たち大人が見守り、サポートしていくことが大切なのではないでしょうか。
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※記事内の事例や会話内容については、各省庁の公表している事例をもとに個人情報保護に配慮し編集しています。