木曜を噛み締める
雪が解けて 春、桜が散って 夏、蝉の声が聞こえなくなって 秋、そして冬。
ハッと気付くと、あんなに頼りなくてふにゃふにゃだったこどもは家中を走り回っていて、いよいよ3歳になろうとしている。
今日も今日とて元気にトミカを投げ飛ばしてお歌を口ずさむばかりでごはんを食べないこどもを宥めて誉めてヨイショして結局怒って保育園に送り届けている。
隣ですやすや寝るこどもを慈しみの目で見つめながら「いいママになるようにがんばるよ、毎日笑顔で楽しくくらそうね」などと呟いた日々は幻想となり遥か遠くに霧散した。
無理無理無理
イヤイヤ期ほんと無理無理無理無理
とか言っていたらアレナニ期(なんだそれは)が始まり、日々の質問攻めに辟易していたはずが、突如としてイヤイヤ期シーズン2の幕が開けた。
【 イヤイヤ期は自我の芽生えです。パパとママは根気よく愛情を持って接してあげましょう 】
できたら苦労しねえよ。聖母かよ。
話には聞いていたものの、これは人を闇堕ちさせるには十分な破壊力だわ…とため息を吐きながら、頑として開かない小さいお口になんとかかんとかにんじんをねじ込もうと試行錯誤する日々なのである。
さて、すっかりヨボヨボになったわたしを尻目に、こどもはすくすく成長しており、もう背伸びをしなくてもダイニングテーブルの上においてあるジュースを掴むことができる。
テーブルの縁に手をかけて背伸びをしていたあの必死な顔はもう見られないし、全身を揺らしながら何とかバランスをとりながら歩く姿ももう見られない。
あのね、いっぱいおっきくなったから もうひとりでできるのよ!
あかちゃんのときは ちょっとだけこわかったんだよ!
弾ける火花と煙たい空気に興奮しているこどもの、わたしの片手には少し余る丸い頭をわしわしと撫でる。傍に広げられた花火セットの中から大きめのものを選んで重い腰を上げた。
きみ、花火するの初めてよ?
もっとやりたーい あしたもやりたーい