見出し画像

すべては距離感である 1〜5までのまとめ

note 連載「すべては距離感である」

びっくりするほど沢山の方に読んで頂いていて、何度も「最も話題になった投稿です」という通知(?)が届き、ドキドキしています。あらためて、読者の皆さんに心から御礼申し上げます。

むこう5回くらいネタが渋滞しているのですが「ちょっと更新頻度が速くて追いつかない」「いったん整理してほしい」というご要望を多数頂きましたので、今回と次回は「まとめ」と題して、本連載で何を伝えたかったのかを整理したいと思います。
未読の方も、今回のまとめを読んで頂ければ、概要をご理解頂けると思います。

「すべては距離感である」というテーマについて書き始めたのは、レンジファインダー(距離計)カメラを手に、被写体との「距離感」を意識するようになってから、私たちの人生と人間関係は、突き詰めると「距離感」に行き着くのではないかと考えたことがきっかけでした。

0.7m = パーソナルスペース(インターネットやSNSという「距離感の狂った世界」にもつながりうる)
1m-1.2m = 親しい間柄
1.5 = 程よい距離感
2m = はじめましての距離感
3m = 自分の世界と外界の境界
5m = 他人の世界
♾️無限遠 = 外界(しかし外界にも大切なことが隠れている)


人間はひとりでは生きられない。家族、学校、会社、組織、コミュニティ、国家といった様々な人間関係の中で生きている。
しかし、インターネットやSNS、コミュニケーションツールの普及による情報化によって、人と人のの「距離感」が崩れ、本当に大切な人との距離感を見失っているのではないか……。
そんなことを考えながら、写真撮影の「距離感」を通して、人生の距離感について書かせて頂いています。

①では「すべては距離感である」で伝えたいことの大枠について書いています。
なぜ多くの写真家が「すべては距離感である」━━と仰るのか。
その理由について考え始めたことが、本連載を書くに至ったきっかけでした。

②では、M型ライカの最短撮影距離=70cmは、人間が手を伸ばして届く範囲とほぼ同じであることから、人生の最短距離は70cm前後なのではないか、という仮説について書いています。
現代は、70cm以内というパーソナルスペースに、スマートフォンやPC等を通して、世界中の、本来自分には関係ないはずの情報までが流れ込んできてしまう。「距離感が狂った時代」をどう正気に生きるか……。インプレッション目当てのフェイクニュースに振り回されず、手に触れられるパーソナルスペースを大切にして生きていきたいと心から思います。

③は、宮﨑駿監督がよく口にしていた「半径3m以内で起きていることは世界で起きている」という言葉をきっかけに、結局人間は、1m-3mくらいの世界で生きているのではないか、ということについて書いています。
1m、1.5m、3mという写真撮影の最も基本的な距離感を通して、どう他者と向き合うか。
自分にとって心地よい距離感はどのくらいの距離なのかを考えること。まずはその距離にレンズの距離計を合わせ、撮ってみることで、自分が本来撮るべき写真と、見つめるべき人生が見えてくるのではないか……と思うのです。

写真撮影における5m〜は、フォーカスがシビアではなくなり、だいたいのところでフォーカスが合います。
しかし現代は、5m〜の出来事に人々が熱狂し、見たことも会ったこともない人のスキャンダルに憤り、攻撃し、結果社会全体が蝕まれている。5m〜 は他人の世界と考え、だいたいでいい。もっと近くのことに目を向けて生きたいと、自戒も込めて考えています。

最も多くの方から「♡」を頂いた回でした。
カメラを触ったことがある方は、レンズのヘリコイドを「♾️=無限遠」に合わせると、遠くのものにはすべてフォーカスが合うということをご存知だと思います。
しかし実際には、遠いと思っていたものとものとの間には微妙な「距離感」がある。
人間は自分の知らないこと、遠いことをカテゴリーにくくり、批判したり遠ざけたりしてしまう生き物ですが、本来相容れるべきもの、理解すべきものにフォーカスを合わせず、すべて同じものとして見てしまうことが、日々この世界で起きている「分断」や「不寛容」の原因なのではないか……と考えています。

この回で書かせて頂いた「ちょい戻し」という撮影テクニックは本当に便利です。
実は私のストリートスナップは、ほぼこの「ちょい戻し」で撮っていますので、ぜひ実践してみてください。

次回は、少し哲学的(観念的)なネタも含まれた、第6回〜第10回をまとめさせて頂いたあと、また連載を続けさせて頂きたいと思います。

「こんなことを知りたい」「ここはわかりにくい」「こんなことに気づいた」等、ご意見を頂ければ幸いです。
ほどよい距離感で……。

いつも読んで下さり、本当にありがとうございます。

井の頭公園の夕日

いいなと思ったら応援しよう!