憧れが前に進む力をくれる -Backlog World 2021に寄せて-
憧れというものは時に人を突き動かし、時に人に苦悩をもたらします。
あなたには憧れの人はいますか?
こんにちは、ナカミチ(@ici_mici)です。広島でSEをする傍らJBUGというコミュニティを運営しています。そしてJBUGの年に一度の祭典Backlog World 2021の運営委員長として開催に向けて邁進している真っ最中です。
Backlog World 2021に込める想いと憧れについて書くことにします。
積極的にコミュニティに参加しはじめてもうすぐ2年が経ちます。不安だらけの中さまざまなコミュニティに参加し、自身でも運営を続けるうちにこのたびBacklog Worldという年次カンファレンスの代表を務めることになりました。
未知の体験には恐怖がつきまといます。しかしそれを超える憧れの力が恐怖を克服します。人間が根源的に持つ憧れという感情について少し考えてみましょう。
この記事は #Backlogアドベントカレンダー2020 の最終日12/25分です。
憧れと無関心
僕がコミュニティ活動を続けてきた原動力のひとつは憧れです。コミュニティを通して素晴らしい方々と出会い、強烈な憧れを抱きました。登壇したりコミュニティを運営することで、そのような人間に近づきたいと渇望していた気がします。憧れだけが僕を突き動かしてきたと言っても過言ではありません。
もうひとつの原動力は一緒に活動する仲間がいることです。コミュニティって学校の部活みたいだなってよく思います。目標に向かってこんなに一緒になって盛り上がれる友人が大人になってもできるなんて考えもしなかったのですが、いつの間にか周りにはたくさんの友人がいました。出会えた方々に心から感謝しています。
志茂田景樹さんのツイートを引用します。仰るように、何かに憧れる羨むというのは非常に大切な気持ちだと思います。なぜなら自分の弱さや未熟さを認めないとその感情は生まれないからです。自分を受け入れてはじめて不屈の闘志が湧いてきます。それは恐怖に打ち勝つために必要なものです。
その道に長けた人と出会った際に憧れを抱くことが成長への第一歩なんじゃないかと思うのです。大半の人はあまりに優れた人物と出会うと憧れよりも別世界の人間としてとらえているように感じます。自分と対比しない、つまり無関心です。例えばオリンピック中継で躍動する選手を見て「すごいなぁ」とは思っても「私もこうなってやる!」と思う人は、同じ競技をしている人を除いてはとても少ないのではないでしょうか。僕もそうです。
すっごいひとに対峙してからの成長過程を図にしてみました。少なくとも4つのステージがあると考えています。
初めに、先で述べた無関心のステージについて書きます。「すごいかもしれないけど関係ないや」と自分で壁を厚くしたり、ともすれば「あんなことに必死になって気持ち悪い」と到底たどり着けないことや理解できないことに嫌悪を示す人もいます。断絶の壁を破らない限り成長することはできないでしょう。あまり広い視野を持たずそれなりに経験を積んでしまった人がこのステージにいるのをよく見かけます。
僕が初めてコミュニティに参加した時には完全に無関心のステージにいました。忘れもしない8年ほど前のことです。プログラミングの職業訓練を受け始めた僕は、勉強会というものがあるという噂を聞きつけて興味本位で参加しました。そして悪い方向に衝撃を受けました。話している言葉の意味が全く分からず、真っ黒い画面に映る文字列に対して議論をしている様子を見て恐怖しました。一刻も早く帰りたい以外の感想を覚えていません。そして僕はあの方々は別の世界の人たちで、あそこまでならなくてもいいやと思いコミュニティから遠ざかりました。憧れからほど遠い世界です。
断絶の壁を越えて
それから6年はコミュニティとは無縁な日々を送ります。時折あの恐怖の勉強会にいたエンジニアにたいして「あの人たちは今頃どれ程すごくなっているんだろう」と自分と別の道を歩く人としてふと思い出したりしてました。
結局のところ壁を越えるきっかけをくれたのもコミュニティでした。一度見たすごい人たちの世界をずっと忘れられなかったのです。ふと目にしたオープンセミナー2019@広島に何の気なしに足を運んでみたところ、一つのセッションに出会い頭をぶん殴られるほどの衝撃を受けました。
JBUG岡山のあべさん(@mao_instantlife)のセッションを聞いて「30才を過ぎた僕でも何かできるかもしれない」と、続けざまに参加したJBUG岡山にて両備システムズさんのBacklog導入事例では「自分が別世界の人間だと思っている人たちも道の先にいるのかもしれない」と考えるようになりました。なによりこの人たちのようになりたいと初めて自分の中に憧れが生まれたことを覚えています。
素晴らしい人との出会いが僕の中の断絶の壁を破壊しました。
そして、急に惨めな気持ちになりました。
憧れの人たちに比べて自分はなんて何もできない人間だろうとか、あの人が僕の年齢くらいの時にはこんなことを成し遂げていたのに。とか。
憧れるということは手放しに尊敬することではないと考えます。自分の未熟な部分と向き合わなければいけません。それでも一度芽生えたこうなりたいという想いの火は忘れることはあっても消えることはないと思うのです。自身の見たくない部分を受け入れてこそ断絶の壁を乗り越えることができます。もしこの時僕が自身と向き合うことができていなければ、壁の側から離れず見たくないものは見ないように静かに歳を重ねていたかもしれません。
あなたには憧れる人はいますか?その人に近づくために弱い自分と向き合えますか?
憧れが前に進む力をくれる
僕は「あしたのジョー」という漫画が好きです。どんなにお金がない時もあしたのジョーだけは売らずに手元に置いておくくらいに好きです。
少年院に入れられたジョーは丹下団平から「あしたのために」から始まる日々のトレーニングについて書かれた手紙を受け取り、力石徹に打ち勝つために自身を鍛えます。
断絶の壁を越えた僕はまた悩みました「で、憧れの人に近づくにはどうしたらいいんだろう?」
壁は他者と出会うことで越えることが出来るかもしれません。しかし、ここから先は自身の足で進まなければいけません。そう、自分の力で、です。
僕はとりあえず「あしたのために」を行うことにしました。凄いなあと思う人のおすすめの本を読み、勉強会で登壇し、コミュニティを運営してみることにしました。学びの場であるJBUGをはじめとした数々のコミュニティで出会った方々が、僕にとっての丹下団平でありヨーダであり東方不敗となってくれました。
憧れの次のステージに進むためには行動が必要です。憧れがすべての起点になりますが、何も行動しなければ夢見る少女で終わってしまいます。行動することで初めて憧れから目標に変わるのです。
行動する場は実はたくさんあります。コミュニティであったり、SNS、この記事を書いているnoteだってそうです。LTをしたりブログを書いたり他者が目に見える形にして初めてあなたの意思を他者が認識可能になります。憧れに近づくという意思を形にして示すことこそ行動です。日々目標に近づくよう積み重ねていけば、いつか開花する瞬間がきます。
僕がJBUG広島を運営する上で大切に思っていることは、JBUGという場所が皆に対しての最初の一歩を踏み出す場になってほしいということです。もちろんBacklog World 2021もたくさんの人に勇気を与えることを目標としています。
共感する
ある時、行動の積み重ねによって憧れの人に近づいてきたことに気が付くでしょう。きっと本人はただ行動しただけだよと思うかもしれません。
小さな一歩の繰り返しは驚くほど遠くに連れて行ってくれることを僕は知っています。憧れの人物と共感することができたなら、それはきっと同じステージまで進んできたってことなのではないでしょうか。
コミュニティを運営するには海のように深い知識といくつもの山を踏破した経験が必要だと思っていました。カンファレンスの代表になるには輝かしい経歴が必須だと考えていました。ことBacklog Worldに関しては先代の運営委員長である西馬さん(@beppu01)が偉大過ぎて、正直なところとてもかなわないなと思っています。
そんな西馬さんが代表引継ぎの時に嬉しかったことや辛かったことをたくさん話してくれました。僕からしたら完璧超人に見えた西馬さんも意外と人間くさいことや些細なことで喜んだり腹を立てたりしていて、そして僕も今小さなことで悩んだりうれしくなったりしています。きっとこれが憧れの人と共感するってことなのかもしれません。
物事を成すにあたって知識や経験はあったほうがいいですが、何より大切なのは憧れに向かって進み続けることではないかと思います。歩いてきた道と、さらにその先へ歩き続ける意思こそが人を遠くの場所へ連れて行ってくれます。
そして遠くへ向かうのはひとりではきっと大変です。
素敵な人と出会う
Backlog World 2021のキックオフでは運営メンバでインセプションデッキを作成しました。そのなかで中野さん(@yasuoyasuo)の書いた「我々はなぜここにいるのか」の答えがとても印象に残っています。
素敵な人と出会いたい
この言葉に喚起されて僕はこの記事を書きました。
僕がコミュニティから受け取ってきたものは最新の技術の知識やマネジメント手法だけでなく、素敵な人との出会いです。人との出会いこそが僕にとって最も価値のあるものであることは間違いありません。憧れる人に出会うことで、狭い世界から脱却し、目標に向けて歩きだすことができました。
憧れにたどり着くために行動をしていると自然と同じ志を持つ人と巡り合います。なぜかわからないけど巡り合います。JBUG広島は3人で運営しているのですが皆コミュニティで出会い仲良くなりました。ひとりでコミュニティを運営したり何かに挑戦することはとても大変ですが、仲間がいるとたいていのことは乗り越えられそうな気がしています。素敵な人との出会いというのは遥か遠くの憧れの人だけでなく、一緒に進んでくれる人も同じくらい素晴らしいものです。
Backlog World 2021のテーマは「旅 -Journey-」です。
Backlog World 2021では関わってくれた皆に素敵な出会いがある場にしたいと切に願います。それは憧れや目標となる人との出会いや共感できる考え、人を突き動かすセッションであったり、カンファレンスの翌日少し世界が広く感じる、旅のような体験を届けます。多くの人の断絶の壁をぶっ飛ばすことができれば何よりうれしく思います。
カンファレンス何それコワイとか休みの日に勉強するなんて意識高いね(笑)みたいな人にこそ参加してほしい。ステージの上にいる人たちは別世界の人間なんかではなく、皆から延びる道の先にいるということ、歩き続ければいつかたどり着くということに気が付いてほしい。
全ては憧れることから始まります。
隣の芝は青く、釣り落とした魚は大きい、それでいいじゃないですか。自身の弱さを受け入れ、志を同じくする人と憧れに向かって進んでいきましょう。
最後に先代の運営委員長である西馬さんが昨年の運営メンバーから贈られた言葉を記します。
早く行きたければ、ひとりで行け。遠くまで行きたければ、みんなで行け。
アフリカのことわざより
2020年3月13日。Backlog World 2021でお待ちしております。皆様に素敵な出会いがありますように。
謝辞
おかげさまでBacklogアドベントカレンダー2020完走することができました。一日もかけることなく、素敵な記事たちに出会えたことは本当にうれしく思います。参加してくださった皆様、そして読んでくれた皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。
若輩者ではありますが、Backlog World 2021の成功に向けて皆様のお力添えをいただければ幸いです。
Backlog World 2021 運営委員長 中道一志