スマホ
スマホに何を期待していますか?
アンデシュ・ハンセン氏の『スマホ脳』は世界的なベストセラーになっており、興味もあったので読んでみた。簡単に要約すると、スマホには新しい着信や、インターネット上での新しい情報など、刺激に伴うドーパミン起因の報酬系を刺激する要素で溢れており、使用が習慣化されるというものであった。その前提として、現在を生きる人間の脳は、狩猟採集時代のヒトと殆ど変わっていないことも述べられている。その中で、人間の脳は時間軸を把握できないため、未来に対する不安を現実のストレスと捉え、スマホによる大量のネガティブ情報が不安源となり不眠などの症状に繋がることを、研究結果の事例なども踏まえて説明している。
この本は、そもそも人間の生きる目的は幸福ではなくて、遺伝子を残すことを目的に設計されているという部分である。その観点から考えると、不安というものも捕食者から逃れるという狩猟採集時代には極めて重要な要素となっていたことも理解できる。一方で、そのような心配がない現代社会でも、ネガティブな情報に反応する一因となってしまう難しさもある。要は、何事も程々が良いのだが、その調整が個人レベルでも社会レベルでも難しいということだろう。
人の知識や知恵が不可逆的なものであるならば、技術もまた同様に不可逆的である。一度発明されてしまったテクノロジーは、元々の用途から逸脱した形でも、既にあるものとして応用され、全く異なる使われ方をされるようになる。そういう意味で、人間は何かを創る能力と、それを応用する能力が極めて高いということができるのかもしれない。一方で、その善悪などを事前に考えることができず、問題が起こるまでは行動できないという習性も持つのかもしれない。
スマホを良い、悪いと判断するつもりはないが、少なくともスマホの見る時間を減らしたら、良い睡眠に繋がっていることは確かである。そのために、極力スマホを用いた連絡業務なども少なくなるようにしている。良い睡眠ができれば、その日をよりよく生きることも出来るし、そうすれば幸福な時間も増えてくる。幸福のために生きている訳ではなくても、その時間が長い方が良いということは当たり前のことだと感じる。
誰も生きたことのない時代でのスマホとのかかわり方。私自身は、なるべく使わないことによる幸せの道を模索しているが、もちろん積極的活用して幸福になる道もあると思う。それは人それぞれの特性や感受性の違いでもあるだろう。結果は死ぬまで分からないのかもしれないけれど、一般論ではなくて、自分に合った生き方をしていければ良いと思う一冊であった。