同期のライバルのこと

T-1グランプリ2024で優勝者としてコメントを求められた際にお話した、同期のライバル「鏡太郎くん(@Kyotaro_kwaidan)」のことを記します。

僕は2018年から怪談語りの練習をするようになりました。それまでは10年程度怪談朗読をニコニコ動画に上げたり生で読んだりしていたのですけど、怪談語りのブームが到来しかけたタイミングで僕も読まない語りにチャレンジしてみたのです。

そんな時に水星の如く現れ、すごい勢いで頭角を現していったのが「鏡さま」こと鏡太郎くんでした。僕と同じ朗読畑の人間で、一行目から場を支配する、そんな圧巻の語りをしていました。

まだそんなに沢山怪談イベントが開催されていなかった当時、僕が「怪談朗読と怪談がたりを融合させたリアルイベントをやりたい!」と真っ先に声をかけたのが鏡太郎くんで「面白そうでありますな!是非ご協力させて下さい!」と演者側ですぐに承諾してくれました。当時はまだ鏡太郎くんは朗読のみをしていたと記憶しています。

そこからあれよあれよと鏡太郎くんも怪談語りの虜になっていき、僕と同じ朗読と語りの二刀流の怪談師となりました。そして僕が最恐戦2019の関西予選から決勝へ進出をすると、鏡太郎くんは関東予選から決勝へ進出し、お互いルーキーイヤーから100万円まで手が届きそうなところまで行けたんです。

来年こそと言っていた時、彼は白血病になり、あっという間に天国に旅立ちました。僕は言霊が強いとよく色々な占い師に言われていたので「絶対治るから心配ない」彼にそう言って励ましたのですけれど、駄目でした。

そしてある日、鏡太郎くんが夢に出てきたんです。自分の部屋にいて天井から声がするような感じで「壱夜どの~、お久しぶりでありますなぁ。お元気そうで~」なんて少しお話していたら「壱夜どの~・・・その~・・・顔見たいでありますか?」そう聞かれた僕が「いや、俺怖いの苦手なの知ってるでしょ?いいよいいよ」と応えると「ふふっ、そうでありますか」と笑い、僕も「ふふっ」と笑ったところでその自分の声で目が覚めたんです。

どんな姿でも対面しておけば良かったなと、今となっては後悔しています。あともう一つの後悔は、彼をユニットに誘わなかったことです。僕は地方住みだったし、彼は有名な怪談朗読の方々と仲良く色々していたから、そちらと絡んでいる方が彼の為にもなるよなと、自重してしまいました。

誘っていたらどうなっていたのか。やんわり断られたか「おっ!一緒にやるでありますか!」なんて快諾してくれたかはわかりませんが、本当に強く後悔しています。

しばらくして、完全に「やりたいこと」が無くなったタイミングで、一旦活動を休止して1年が経ちそうな頃、鏡太郎くんが夢に出てきたわけです。彼はその時も姿は見せませんでした。空から声がするような感じで「壱夜どの~?怪談はもう嫌いでありますか?」と聞いてくる鏡太郎くんに「・・・いや・・・そんなことないよ」と返すと「ふふっ、それなら良かったであります・・・壱夜どの~・・・また壱夜どのの怪談聞きたいでありますなぁ」と言われた所で目が覚めました。起きた時僕はボロボロ泣いていて、もう一度怪談と向き合おうと決めました。

そして復帰を宣言したタイミングでT-1グランプリ2023のことを知り、2024年度の募集を知り、リハビリのつもりでチャレンジしたところ、まさかまさかの優勝となりました。しばらく休んだからこそ新鮮に、真摯に語りと向き合えたのが良かったのかもしれません。

僕のファイナル一本目の話を聞いた方が「鏡太郎くんを感じた」とポストしていたのを見て、彼が力を貸してくれたのかもなと思いました。一度やめようと思った業界ですが、そもそもが嫌いになったわけではありませんので、これからも鏡太郎くんの分も楽しみつつ活動していこうと思います。

最後に・・・鏡太郎くんが生きていたら、僕の位置にいたのは彼だっただろうと強く思います。そんな鏡さまの怪談朗読チャンネル、実は今も残っておりますので、ご興味がございましたらご覧くださいませ。

僕は鏡太郎くんを過去にしたくない。マサヤさんのお母さんじゃないけどさ、消えてもらっちゃ困るんだよ。君は僕の目標なんだから。

【怪談朗読】鏡太郎の怪談奇談
https://www.youtube.com/@user-nk3ni6li9e/videos


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