「寛解」という希望が潰えた日。②
2020年5月1日(金)、
右目の視野がチカチカする症状を訴えていた妻と共に、先日、2度の手術を執り行ってくれた都内のがん専門病院に向かった。
この日の前日には、頭部MRI検査を撮影するために、既に同病院を訪れていた。
今回は目の症状ということもあり、眼科での診察となった。
眼科の先生に色々検査をしてもらった後、「目については特に問題が見られない。」と言われた。
ホッとしていた矢先、そういえば昨日のMRI検査については何も触れられていないことに私は気づいた。
(私)「先生、昨日、頭部MRIの撮影をしたんですけど、その結果はどうだったんですか?」
(眼科医)「あ、そういえばそうだったね。ちょっと確認してみますね。」
我々を診察室に呼ぶ前に確認していないことに、正直、少し驚いた。
その後、PCの画面上で、MRIの画像データを見つけた先生は、少し驚くようにして我々にこう言った。
「うわぁ...これはちょっと主治医の先生に相談した方が良さそうだね。。。」
この時、何が起こっているのかさっぱりだったが、PC上のMRIデータを見ると、脳の右下くらいの位置に、卓球の球のような丸い形をしたものが見えた。
全く悠著に構えて来院してきたが、嫌な予感がした。
それから1時間後くらいだろうか。
肝胆膵外科の主治医の先生に部屋に呼び出されて、優しい口調で、こう伝えれた。
「脳に3cmくらいの腫瘍が見つかりました。少し大きいですが、幸い、これ以外には転移が見られないのですぐに治療に取り掛かリましょう。とりあえず、この後、内科の先生の診察を受けてください。」
崖から突き落とされたような気分だった私達に、主治医の先生は優しい口調でこう伝え、特にショックを受けていた僕に、そっと私の背中に手を添えた。
この時は、まだしっかりと理解できていなかかったが、この時点で、妻と私が目指し続けてきた最大の目標である「妻の病気の寛解」が潰えた瞬間だった。