うつけ者、コインを拾う
西新宿で11円玉を拾った。
正確には10円玉と1円玉。
昔から落ちてるコインを拾わずにはいられない。
というか落ちてるお金をどうしても拾ってしまう病。
地元で裸の7千円を拾ったことがある。
道に散らばった7千円。
その上をタクシーが走り去りお札がひらひら舞っていた。
しっかり拾って最寄りの交番に届けた後、時を経て落とし主が現れなかったため我が物になった。
7千円を裸のまま落とした落とし主もまさか交番に届いてるとは思うまい。
「落とし主現れずでいつか貰えたらいいな」の意思はあった。
ただそれを拾って直で己の財布に入れるのと一回公的機関を経由して己が財布に入るのとでは訳が違う。
前者は所謂ネコババだ。
後者はオフィシャル。
オフィシャルなのかアンオフィシャルなのかでそのお金を使う際の心持ちに多大に影響する。
アンオフィシャルで手に入れた汚いお金で姪っ子のあーちゃんに何かを買ってあげられない。
それであーちゃんが喜んだとて後ろめたさは残る。
と、姪っ子大好き男を即席で作ってみる。
本当は姪っ子にそこまでの思い入れはない。
すまんな姉よ。
自分以外に興味はない。
好感度を上げるために姪っ子をも踏み台にする。
そのあと入った居酒屋でこの11円玉がどういう経緯で道に散らばったのかを、友達と小一時間考察していた。
最終、
「女子会して店を出た後、会計をまとめて払った子にみんなでお金を渡した時にこぼれ落ちた端数の11円」
だと俺の考えは着地した。
勿論、落とした11円玉に気付いてはいたが“11円”という金額よりプライドを取って拾わなかったと睨んでいる。
ここは西新宿だが港区なら大いにあり得る。
ま、俺は拾うけどね。
しかも拾う時「お、11円落ちてんぜ」って言って拾った。
後から考えたけどこれは多分照れ隠し。
無言で拾うのはさ、なんか、あれじゃん。
おそらく“少額でも道に落ちてたら拾う無邪気さ“を演出した可能性が高い。
いや、元から財布に入れる目的で拾った訳じゃない。
前述した通り、裸の7千円を交番に届けたことを担保として引用したい。
拾った先は考えてなかった。
11円を交番に届けても冷やかしだと思われるのが関の山だ。
結局のところその後の居酒屋まで持って行き、テーブルの見やすい位置に置いて酒の肴にできたため、あの時間だけはこの11円玉も11円以上の価値を生み出していた。
「これで会計が端数11円だったら運命感じるよな。」
って話してたけど端数は60円だった。
そんな上手いことはいかない。
1円を拾わなかったこたにしようか一瞬迷った。
話はそこから「道に落ちてるコインを拾った方がかっこいいか、拾わない方がかっこいいか」や
「いくらなら交番に届けるか」という話でこれまた小一時間した。
なんだこの時間。
迷った時にこの言葉を贈りたい。
『全てのお金に拾われる権利がある。』
fin.