公用車広告④~助っ人登場。オンブズマンと市議会議員に協力依頼
契約書から追及できないか。法律関係者に相談
2020年10月上旬、私が最初に行ったのは、無料で相談にのってくれる法律関係者を探すことだった。というのも募集要領の中にある契約書案(最終的に締結された契約書と同じ内容だった)には、素人目には首をかしげざるを得ない内容が、いくつも書かれていたからだ。
まず市の担当課(財産管理課)と広告代理店が、協力して「広告主の秘密を保持する」ということと、そのハウツーが、1ページにわたって長々と書かれていること。
プライバシーの保護ならわかるが、秘密の保持って何? たとえばブラック企業とわかっても、財産管理課と広告代理店が隠すことだってできるのではないか…。
もしかしたら、面談で財産管理課の係長が「守秘義務があるから、広告主に問題があるかどうか他の部署に照会することはできない」と言ったのは、この条文のせいではないのか…。
一見、広告主というお客さんを守る「正しい」条文のように見えて、実は必要な情報を隠蔽する隠れ蓑になりかねない条文だと、私は感じた。
もう一つ、市の事業にもかかわらず「何か問題があればすべて広告代理店の責任で、市は責任を負わない」とあるのも、市の姿勢としてどうかと思った。ネットで調べた「行政契約」は、昔は「官が上で民が下」だったが、近年では「官と民はフィフティ フィフティという考え方が主流」とあったからだ。
しかし、やっとみつけた法律関係者は、契約書に目を通すとこう言った。
「ふつう契約書に、広告主の秘密を守ると記載することはないですね。ブラック企業の秘密を守るためだと解釈する人がいても不思議ではありません。
でも広告代理店に不利な契約かどうかに関しては、代理店がそれを了承しているなら何も言えません。そもそも行政契約というものはグレーな部分が多く、どちらの責任かはっきりしないケースがよくあるのです」
結局、法律の専門家ではない私が、契約書の面からこの事業の不適切さを追及することは無理だということがわかった。でもいったい誰がこの条文を入れさせたのだろう。この疑問は、その後もずっと頭の中から消えなかった。
※後日、情報公開請求で得たその他の8つの広告事業の契約書をチェックしたが、広告主の秘密の保持をうたった契約書は一つもなかった。
オンブズマンと市議会議員に協力依頼
並行してトライしたのは、千葉県市民オンブズマン連絡会議のアドバイスを仰ぐことだった。なにしろ私は自分の思いをどうやって行政に届けたらいいのか、何一つ方法を知らなかったからだ。
そこで相談に乗ってほしいことを繰り返しメールで訴えると、助けてやろうと思ってくださったX氏が、個人的に協力してくださることになった。
誘われて東京高裁にオンブズマンが原告の裁判を傍聴しに行ったが、自分の身に降りかかった事件でもないのに、巨悪と戦うオンブズマンの方々の姿に感銘を受けた。一つひとつ証拠を積み上げ、戦略を練り、戦い続ける意識の高さと正義感、エネルギーはハンパではない。
そのオンブズマンの実力を、のちにX氏から見せていただくことになる。
知人からは「船橋市の話を船橋市の行政に届けるなら、市議会議員に相談したほうがいいのでは?」と言われ、その方の知人である今仲きい子議員(無所属)が話を聞いてくださることになった。
追々わかったことだが、今仲議員の行動力と勉強家ぶりはすごかった。4人のお子さんの母である今仲議員の起床は、午前3時とか4時。その誰にも邪魔されない時間に新聞各紙に目を通し、必要な情報をピックアップする。
また、私がお願いしなくても財産管理課に話を聞きに行き、整理した情報をくださるなど、びっくりさせられることが多かった。
「市議会議員て大変だね」と知人に言ったら、「いやいや、なーんにもしない人なんていっぱいいる。彼女は市民目線でしっかり仕事をしているから紹介した」とのこと。
無所属なのは議員にとって不都合なことがあると思うが、私にとっては無所属であるがゆえに、変に政党や会派の思惑がからまないのもありがたかった。
こうして強い思いはあるけれど、その実現方法を知らない私を、冷静かつ行政手法をよく知る2人が支えてくださる形で、10月下旬、情報公開請求を行った。