公用車広告⑧~市長あてに質問書を提出。市の公式回答を得る
私たちが公用車広告についておかしいと思ったことは、大きく分けて3つある。
【1】なぜこんな契約を結んだのか
①申請と異なる市の収入/承認を受けたのは、1台当たり月3000円(税別、以下同)の広告料、55台の半分しか広告が取れなくても年99万円の収入→実際は月205円の広告料、13万5600円の年収(資料1参照)。
②異常に低い落札最低価格/13万5600円でも落札できる価格設定。
【2】 長田広告との癒着疑惑
事業の企画段階で長田広告に情報を漏らし、実施方法を相談。長田広告が落札(応札1社のみ)。また他の自治体のほとんどは市民との直接契約なので、わざわざ代理店に頼む必然性がない(資料2参照)。
【3】不祥事企業の広告の掲載(広告主の審査をしない)
広告事業のラスボス、財産管理課のK課長と面談
2021年は慌ただしい年明けとなった。
1月15日に前章で紹介した広報課、商工振興課、駅前窓口総合センターの、情報公開拒否メールを受信。
18日には私と今仲議員、K課長以下、財産管理課の職員数人による面談が行われた(昨年末にアポイントをとっていた)。
公開されなかった文書があるとはいえ、すべての広告事業の契約内容や現状がほぼわかったため、市の広告事業の目的やビジョンを聞き、そのうえで公用車広告の現状を問いたかったからだ。
本当は12月の議会で公用車広告を見直すと答弁したH部長とも話したかったが、「広告事業は私の管轄ですから」というK課長のプライドに阻まれてかなわなかった。
K課長は傲慢とも思える文章の印象とは異なる、小柄で繊細そうな人で、ラスボス感はまったくなかった。
事前に「私が調査した全ての広告事業の契約書を読んできてください」とお願いしていたが、やってこなかったため、市の広告事業についての大局に立った話には全くならず、公用車広告の弁明だけ聞いて終わった。時々大きな手ぶりを入れながら、少し高い声で話をする姿が印象的だった。
私は事業の改善に役立つようにと、他の自治体が広告主から取っている「暴力団と関わっていないという誓約書」や、公用車広告の実施方法、船橋市の各種広告事業で代理店がどれほど儲けているかの試算表などを渡し、今仲議員とともに席を立った。
市長あてに質問書を出す
1月22日、公用車広告の疑惑の数々を質問書にして、財産管理課経由で松戸徹市長に出した。
市長あての質問書にしたのは、今仲議員のアドバイスである。
「実際に市長が見るかどうかはわからないけれど、回答には市長の印鑑が押されるので、市の正式な回答になる」からだという。
回答期日は1週間後の1月29日とした。
ここで納得のいく回答が得られれば、私たちの調査は終わるはずだった。
しかしやはりそうはならなかった。以下は私が出した質問と、市の回答を列記したものである(骨子)。
公用車広告事業に関する質問書
1,市が広告主の審査をしないのはなぜか
市の事業である以上、広告主の審査は、市民を犯罪や法律違反などを行っている企業から守るため、市が行うべき当然の義務です。特に公用車広告は目立つため、特別な注意を払って審査しなければなりません。しかし市は代理店が集めてきた広告主の審査を行っていません。それはなぜでしょうか。(私の調査では市も広告代理店も広告主の審査記録を出すことができませんでした)
回答/市と広告代理店の間では広告要綱や基準を順守すること、代理店と広告主の間では広告基準を満たさない場合は広告掲出しないことを明記した契約書を交わしておりますので、基本的には基準を満たしていると判断しております。
ただチェック表など、確認結果を示すものは作っていませんでした。このようなことから、各広告主より基準に抵触しない旨の誓約書を聴取する、またチェック表の導入なども検討してまいりたいと考えております。
2,市民の苦情を無視する理由は何か
平成31年の事業開始以来、公用車広告の苦情は、「記録に残っているものは4件ある」と議会でH企画財政部長が回答していますが、何も対策がとられていません。
私も事件を起こした会社の審査を断られました。なぜ苦情に対応しないのでしょうか。
回答/例えば広告主と暴力団の関係が疑われる具体的な情報がもたらされるなど、市として必要があると判断すれば適切に対応してまいります。 しかしながら法人の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害する恐れがあるため、内容についてお答えすることはできません。
3, 事件を起こした会社の広告を載せている根拠は何か
特に市民から苦情が寄せられているL・C社、LG社は、前者は平成21年(2009年)に脱税で東京国税局に告発され、後者は平成30年(2018年)に顧客2万人の情報を流出させて、どちらも新聞報道されています。
①平成31年(2019年)3月20日、両社から広告掲載の申請がなされた際、事件後にどのような改善策を講じ、実際に改善されたのか、調査をしたのか。
②財産管理課の中で両社の広告掲載の可否について協議をしたか。
③最終的に掲載を許可した根拠は何か。
④市民から事件の情報が寄せられた後も継続して掲載する根拠は何か。調査はしたのか。
それぞれの会社についてご回答ください。
回答/上記2と同様。
4, 公用車広告を実施する前に、事業の下調べを長田広告にやらせたのはなぜか
本来なら公平を期すために、入札に参加しない業者にやらせるのが常識です。また広告料やシステムを調べる程度のことは職員でもできます。
入札に参加する可能性のある長田広告に、事前に情報提供した理由は何でしょうか。
回答/長田広告からは事前に公用車の需要について聴取しました。公用車広告に関し、専門性やノウハウ等を所有する企業であり、より正確性の高い情報を収集するためです。
なお市が発注する修繕業務等においても、事前に相談や見積もりを依頼した業者を入札に指名することは一般的に実施しており、入札に参加する業者に下調べを依頼したことが、公平性に欠けるとは思っておりません。
5, 落札最低価格を低く設定したのはなぜか
広告掲載審査委員会には「55台の半数しか広告がとれなくても年99万円の収入が見込める」として事業の承認を受けたにもかかわらず、落札最低金額を99万円をはるかに下回る金額に設定した理由は何でしょうか。
代理店が13万5600円という安い金額で落札できるようにするためですか?
回答/市は歳入確保の一手段として、建物や物品の余裕あるスペースを貸しつける広告事業を行っています。これは使用許可による使用料よりも、公募等による入札により高い金額で貸付ができるものです。このようなことから、いわゆる行政財産の使用許可などの考え方をもとに、最低限これを上回ることで貸付の効果が発生すると考えて設定したものです。
6, 広告収入を得るために、最大限の努力をしなかったのはなぜか
他の自治体は広告の専門知識がないなか、代理店を使わず、市民との直接取引で広告料を全額受け取る努力をしているのに、財産管理課はなぜその努力をせず、見込み額99万円を大幅に下回る収入しか得られていないのでしょうか。
回答/当時他市の状況を調べた結果、需要はあるものの、募集枠が埋まらないという情報を得たため、代理店にお願いすることにしたものです。専門的な知見や経験を必要とする業務を職員が直接実施することは、非効率的であり、経費もかえって多額に要することになります。
7, 事業を代理店に丸投げし、業務を怠っているのはなぜか
市の事業でありながら、実際の広告料は広告代理店に決めさせ、その金額を把握すらしていません。さらに広告主の募集方法、審査方法なども把握していません。「広告掲載マニュアル」にうたわれた、ホームページでの広告料などの公開もしていません。
このように広告掲載審査委員会の承認に背き、市の責任を放棄し、業務を怠っている理由は何でしょうか。
回答/広告代理店に業務を委託することが、最も効率的と考えたためです。
8, 何をどう見直すのか
令和2年12月1日の議会で、H企画財政部長が「事業を見直す」と答弁しましたが、何が問題だと考え、どう見直そうと考えているのでしょうか。
回答/現状を最善とするのではなく、今後も先進自治体の例等を研究し、公用車広告をご覧になった方々に与える印象なども考慮したうえで、本誌における公用車広告のあり方を、より適切なものにしてまいります。
9, いつ事業を見直すのか
事業の問題点を認識しているなら、いつまでに見直すのか、具体的な期限を示してください。
回答/上記8と同様となります。
改善の意向を示した部分はあったが、こちらの質問にまともに答えようとする姿勢が見られず、納得のいくものではなかった。
そしてこのような回答が、市の公式見解であり、市長の考えなのだった。