韓国着陸失敗に見るB737-NGの危うさ

事故自体の原因究明は、次第に進むとして、事故機材のB737-800そのものについても設計年次が古いことによる弥縫的かつ姑息的設計変更を繰り返してきたことにより、陳腐化が見られ、安全な運航に支障を来たしていると思う。

この趣旨に基づき整理してみた。

今回の事故は、現状の情報により次の時系列に整理できる。
着陸体制→降着装置作動→1回めの着陸試行→バードストライク→主脚格納部内部の油圧装置・油圧タンクとエンジン損傷→着陸復行→エンジン停止と全油圧喪失、電源喪失によるコントロール喪失→降着装置不作動、スポイラー不作動、ストラトリバーサ不作動、高速での着地・滑走・ローカライザー土手への衝突。

ここに737-800シリーズの後進性が関わってくるのではないか?

1)フライバイワイヤ未採用
ライバル機のA320シリーズが搭載しているフライバイワイヤ(FBW)を採用していない。
なのに、採用機で多い現代的なグラスコクピットとなっており、操縦装置の外面は立派だけど、実は旧式な油圧と、ケーブルによる動翼や主脚の操縦となっている。MAXシリーズも、コンピュータ制御で姿勢制御を補っているが、間接的にコンピュータ制御していることになる。これはコスト増加を嫌ったものと思われる。一方、エンジンのデジタル制御などはしっかりと取り入れ、燃費向上が狙える部分はしっかり改良しているのである。つまり、機体コストを節約しつつ運航コストは圧縮している。
直接の事故との因果関係はないものの、トータルの安全性はライバル機に劣り、最新機材のつもりが、トラディショナルな操縦系統で、非常時の、対応などについて乗員の十分な理解がなくFBWとの混同を招いていた可能性はあると考える。

2)APU 補助動力装置は手動で作動。
B737のAPU は地上でも空中でもいつでも働かすことが出来る (壊れていなければ)とのこと。
ただし手動で第1第2エンジン双方停止の場合、自動的に起動するものとなっていない。降着装置の作動やエンジン再始動にかかっていると
手動で起動する暇がなかった可能性はあるのではないか?また、エンジン始動にはAPUを使用するが、事故に前後してエンジン始動時の不具合やエンジン停止があったと報じられており、APUや、その他の一連のエンジン始動に関わる装置に何らかの不具合・欠陥があった可能性も考えられる。その場合には、コクピットは大きな困難にぶつかり、八方塞がりの状態に陥ったとも考えられる。

こうした部分はFBW未採用でマニュアル操縦を基本とするポリシーがB737クラシック、NG、MAXに至るまで維持されており、ライバル機や大型最新の機材と異なる部分で陳腐化していて、最新の水準ではない。
3)ラムエアタービン未搭載
最新の大型機では搭載されている、緊急時に自動的に作動し、電源を供給するシステムであるラムエアタービンが搭載されていない。
エンジン・油圧を喪失すると、電源も失われていた?
電源が回復しても油圧が作動していないとFBWない機体では動翼は作動しないが、エンジンのコントロールや機器の表示はできた可能性がある。
ストラトリバーサ起動ができなかったとすれば大きくこれが関わっている可能性がある。
なお、主脚はロックが解除されれば自重落下により展開する形式もあるが、B737の場合はいずれにせよ、油圧や電源が失われていると手動で動かすしかなさそうである。

4)主脚カバーがない。
バードストライクの場合に降着装置へのダメージが大きくなる可能性、死骸などが挟まりやすかった可能性がある。
また、主脚格納部には、油圧装置と油圧タンクが配置されているとのことで、1回目の着陸試行時にここにバードストライクを受けたとすると、エンジン停止によらずとも油圧装置やタンクが破損して油圧によるコントロールを失った可能性がある。
1回目の着陸試行時には展開されていたと言う降着装置と油圧装置・タンクにバードストライクによる損傷が生じて、着陸復行のため降着装置を格納した際にさらに鳥の死骸が挟まった影響か、油圧・電源の喪失の結果として降着装置を着陸復行で展開できなかったのではないだろうか?
航空関係のサイトや書籍では、主輪の冷却に有利などと言われているが、コスト削減のためでは?と訝ってしまう。他にこのような機種はないので。

5)大直径のエンジンを前方に配置したことによるバランスの悪さ。
B 737MAXの連続墜落事故でも問題になった問題にと同じ。飛行時の機種上げ傾向が見られる機体(飛行時には、仰角が上がりすぎるとコンピュータで姿勢を機首下げに制御するMCASと言うシステムで補う。)が、今回の着陸・着地、滑走時にも悪い影響が出たと見る。
つまり、滑走の姿勢がエンジンナセルを支点として、尾部を引きずり、高速でほぼ減速せずに滑走を続けている。
着地には理想的な姿勢だったのだが、もう少し重心が後ろに有れば(エンジンが後ろよりなら)やがて、尾部が浮き、エンジンナセルに全荷重がかかりるだろう。さすればエンジンナセル脱落か、2点での設地で摩擦が比較大になり、より大きな減速が生じてローカライザー激突のショックが減少するか、滑走路から逸脱して未舗装部分に乗りあげるなどして柔らかな地面で静止できたかも知れない。

以上、1960年台の機体に、いくら回収を加えても、やればやるほど、ムリが生じて、機体価格は安上がりに抑え、燃費や乗務員訓練など運航コスト低減に関連する改修だけを行い、結果として安全性軽視、多少の不便さ(自動制御の限定、貨物コンテナに対応できないなども含め)は我慢しながら飛び続けていることになるのではないか?

B737-7,-10も 737-8.9とは別の形式認定・操縦資格となりそうだし、この際、脚の延長と、エンジン配置の最適化と同時に胴体直径の拡大や外殻のスリム化と貨物室のコンテナ対応を可能にするなど懸案を解決できる新型に移行すべきだと思う。
ANAをはじめとするエアラインも、「乗りたくない」ので 737シリーズは他の新型機材に入れ替えてMAX導入などは見合わせてほしい。

(主な参考URL)
Niji-Net https://www.niji.or.jp › engine_start

https://newspicks.com/news/11069155/?block=headline&ref=index

https://x.com/e92m3s65b40a/status/1873378914091098129

https://s.japanese.joins.com/jarticle/327974?servcode=400&sectcode=400

https://news.yahoo.co.jp/articles/d2503fca3dc2296380c697a5354e3af395942467

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-12-29/SPA3WST0AFB400

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