4.新たな仲間…?
【登場人物】
高木 秀才(たかぎ ひでとし)、原 春(はら はる)、原 秋(はら あき)→『1.これが生徒会』参照。
光明院 涼華(こうみょういん すずか)→金持ちっぽい珍しい苗字だが、ごく普通の家庭の生まれ育ち。少女漫画が好き過ぎる。
以前の物語はマガジン『これが生徒会!』(https://note.com/ichiroiro/m/m3e293ebb4fd4)へどうぞ!
新たな仲間…?
昼休み。廊下にて。
春:は?神がいた?
秀才:そうだ。
春:生徒会長に挨拶に行ったら?え?…秀にとって生徒会長が神って事じゃなくて?
秀才:もちろん、生徒会長とは尊き存在だ。しかし…王を叱りつけるなぞ、どこぞの無礼者かと思えば神か…確かあの教師、"かみさと"と言ったか。
春:なんだ、神って上里先生か。つか、"神様"の"神"じゃなくて、"上"で"かみ"だったと思うよ。"上下[うえした]"の。
秀才:……………………そんな事はどうでも良いのだ。
春:間違えてたんだ。
秀才:……
秀才:ともかく!生徒会長を叱りつけていたのだぞ!?生徒会長と言えば、学園の支配者。教師ですら意見できない権力を持っているのだ。
ナレーター:漫画的な世界では。
春:はいはい。で、上里先生がどうしたって?
秀才:だから、王を叱りつけていた。
春:王な(笑) 先生が生徒会長を叱ってたと。
秀才:生徒会長を叱りつけるなど、本来は有り得ない事だ。しかし、目にしてしまったからには事実。…だが、信じたくはない。
春:秀さ、信じられないのは分かる…?けど、実際そんなもんだって。生徒会長って言ったって、ただの一生徒だから。先生の許可無しには何もできないし、その…誰もが情熱を持ってやってる訳じゃないんだよ。
秀才:白鳥会長様に情熱がないと?
春:んー…それは会った事ないし分かんないけどさ。たぶん、秀が思ってる生徒会長様っていうのとは違うんじゃないかな?
何やら考え込んでいる秀才。
春:ごめん。でも何て言うんかなぁ。想像で生徒会長を作り過ぎない方が良いと思うな。
秀才:ほう。想像…
春:厳しいかもしれないけど、秀は想像で勝手にショック受けてると思うんだ。
秀才:確かにそうかもしれんな…
春:!?…意外と素直に受け入れた!?
秀才:まだ白鳥会長の事もよく知らぬからな。…ならば、知るべし!そして作るべし!
春:うん。…ん?知るべしはまぁ、分かる。作るべし?
秀才:そうだ。生徒会長たるもの、強さ、誇り、気品、皆の憧れの的…そういった要素を持ち合わせているのだ!もし白鳥会長がそれにまだ足る者ではないと言うのならば、導いて差し上げるのも、お仕えする者の使命であろう。
春:は?は?そっち?そっち行っちゃう?
秀才:さて、それはよいがどうすべきか…
春:いや。よくないよ!よくない!やめよ?なんか変な奴だと思われて終わるから。いろんな意味で終わるから!
秀才:白鳥会長は、まず見た目としては生徒会長たる素質を備えていると思うのだ。そうなると内面…んー、それにしても充分な女王気質…矯正の余地は無いように思うが。
春:いや、何だか知らんけどさ、やめよ?とにかくやめよ?えっと…何だろ…あ、先輩に対して矯正なんてのは失礼だと思うし、ね?
秀才:まぁ、確かにそうだな。
春:そう!そうだよ。
秋:あ、いた!おーい!
廊下の向こうから走ってくる秋。
春:おおおおお!秋!!!!良い所に!何か面白い話ない?良い感じに気が散るような話!
秋:気が散る?…かどうかは分かんないけど、面白い話あるよ!聞いて!昨日ね、3組に転校生が来たんだって!
春:あー、らしいね。
秋:でね、その子の苗字がすごいの!確か…こうみょういん?って言ったかな。すごくない!?漫画のキャラみたい!
秀才:こ、こうみょういん???どこぞの御曹司か?
秋:女の子らしいよ。でも、そんなすごい苗字じゃお嬢様かもね!今日、秀も部活無かったよね?放課後3人で見に行こうよ!
秀才:おう、言うまでもあるまい!
春:え、俺も?いや、いいよ。それにわざわざ見に行くってのも悪くない?
秋:だって、転校生だよ!気にならない?
春:そりゃ、どっちかと言えば気になるけど、そんながっつくもんでも…
秀才:ぜひとも我が王室に招き入れたい。
春:なんて?
秀才:その こうみょういんさんとやらを我が生徒会に迎え入れるのだ。
春:何でそうなるの?
秀才:金持ちのお嬢様だぞ?その権力を活かし、活躍してくれるやもしれん。
秋:確かに!お嬢様って裏工作がどうとかやったりするもんね!
春:何に影響されたんだ、秋まで!
昼休み終了のチャイム。
秋:じゃ、春、放課後3組の前で集合!よろしく。
1組の教室へ戻って行く秀才と秋。
春:あー、めんどくさっ。
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前日。
ナレ:転校生、それは退屈な学園生活に少しだけ刺激を与えるスパイス。
教師:はい、光明院さんです。挨拶して。
涼華:はい。…えーと、光明院 涼華[こうみょういん すずか]です。…んーと…
「光明院ってすごくね?」などザワつくクラス一同。
涼華(独白):私は光明院 涼華。ごく普通の中学2年生☆ 今日は初めての教室でドッキドキ!……なんて自己紹介ができるはずもなく、何を言おうか思いつかない。それに、やっぱこういう珍しい苗字だと食いつかれるんだよねぇ。金持ちっぽいとか漫画っぽいとか。でも実際何も無い。本当にごく普通の中学生…
生徒1:光明院さんって、お嬢様なんですかー?
涼華:えっと、別に。普通の家…です。よくお金持ちだと思われるだけで…。
生徒1:えー。一族で特別な何かを継いでる家庭です!とか期待してたのに。
生徒2:特別な何かって何だよ(笑)
涼華(独白):勝手に期待されては勝手にがっかりされる。私だって特別には憧れてるんだよ…。
教師:はーい、からかわない。光明院さん、そこの席ね。
生徒2:出たー!転校生定番、窓際後ろの席~!
教師:はい、うるさいよー。
クラス中の視線を感じながら席に着く涼華。まだ「家でかそう」など、色々想像で語っている者達がいる。
休み時間。3組の教室前でガヤガヤしている生徒達。
涼華:なんかこっち見て話してるような。…まぁ、転校生ってこんなもんか。
ズカズカと入って来る他クラスの生徒達。
他クラス生徒:ねぇ、光明院さんって言うんだって?お嬢様なの?
他クラス生徒2:お嬢様なの?って何(笑)
他クラス生徒:え、だって、他に聞き方なくない?(笑)
涼華:…んー…全然そんな事無いよ。普通の感じ。
他クラス生徒:普通って言ってもさ、うちらみたいなのとは普通がそもそも違うんでしょ?
涼華:いや、同じ普通だと思うよ。親も住宅ローンがーとか言ってたし…(笑)
生徒1:なんとかの一族とか、そんなんじゃないらしいよー!
他クラス生徒2:なんとかの一族(笑)ウケる。
涼華(独白):転校って初めてで、漫画みたーい!主人公みたーい!ってちょっとテンション上がってたんだけど、こんな疲れるんだな。みんな悪気は無いみたいだけど、いい加減ウザい。
ナレ:転校先の学校でちょっと嫌な男子に出会い、何コイツ!なんて思っていたらふとした時に胸きゅん…みたいな事をちょっぴり期待してみちゃったりしていたが、現実はそう甘くはなかった。普通にちょっと嫌な思いをしただけの初日だった。
――――――――――――――――――――
涼華の転入翌日の放課後。
秋:よし!みんな集まったね!
秀才:ああ。
春:集まったって言うかね、止めに来たんだよ。自分のクラスにもまだ慣れてないだろうに、他のクラスからワイワイ来たら本人は嫌だと思うよ。
秋:(3組の生徒を捕まえ)あ、ねぇねぇ!光明院さんいる?
春:秋、聞けよ。まったく…
秋:失礼しまーす!
秀才:む。あの者だな!
春:おいおい、2人とも。
帰り支度をする涼華。
秋:初めましてー!原 秋です!
涼華:え?ああ…光明院 涼華です。
秋:涼華ちゃんって言うんだ、可愛い!しかも下の名前までお嬢様っぽい!
涼華(独白):あー、またこれか。わざわざ来てまでお嬢様が見たいのねー。
秀才:高木 秀才と申す。
涼華:申す?
秋:ごめん(笑)この子ちょっと変わってんの!でも良い奴だから!
涼華:はあ。
春:光明院さん、ごめんね!急にウザいよね。あ、俺は原 春。秋と双子なんだ。
涼華:双子!?…へぇ、双子って本当にいるんだ。
春:いるよ。何だと思ってんの(笑)
涼華:えっと、実際に双子に会うのって初めてだから。その…不思議な感じだなぁって。
春:よく言われるわ。え?双子なの?すごくね?声そろっちゃったりすんのー?って。いちいちそろわねぇっつーの(笑)
涼華:そっか。なんかごめん。
春:いいよ、別に気にしてないし!
涼華:うん。
秋:春さん、何ですか?良い人ぶっちゃってるんですか?
春:なんだよ。お前らが転校生見たいとか騒ぐから迷惑かけないか心配で来てやったんだよ。"ぶってる"どころか、良い人だと思う。
秀才:春は確かに人格者だな。
秋:人格者って何?
秀才:それはあれだ。人格が良い…という…あの、人柄が良き…
秋:秀、分かんないで使ってるでしょ?
秀才:そんな事はあるまい…
秋:えー…?
秀才:……
状況に置いていかれる涼華。
春:こいつら変だけど、悪い奴らじゃないから!良かったら…なんだろ…よろしく(笑)
涼華:…うん。よろしく。
春:俺は4組で、こいつらは1組だけどね~。
秀才:ところで涼華嬢。
涼華:…え?
秀才:我が王室にご興味は?
涼華:おうしつ?…何?
春:秀!お前は唐突過ぎるんだよ!打ち解けつつある時に警戒をさせるな!
秋:秀はね、王室を作るの。
涼華:え?
春:秋!お前もお前で!わざとか?
ナレ:悪い奴らじゃないとは言ったが、時々良い奴とも思えなくなる時がある。