3.謁見
【登場人物】
高木 秀才(たかぎ ひでとし)、原 春(はら はる)→『1.これが生徒会』参照。
上里(かみさと)→『2.俺も生徒会』参照。
白鳥 沙月(しらとり さつき)→今年の生徒会長。スラッとした大人っぽい雰囲気の生徒。思い出作りや進学の為に生徒会長になった。
以前の物語はマガジン『これが生徒会!』(https://note.com/ichiroiro/m/m3e293ebb4fd4)へどうぞ!
謁見
ナレーター:今日は水曜日。今週の金曜、つまり明後日には今年度初の生徒会役員会議が行われる。昨日、生徒会に入ったと伝えた所一時は母に笑われてしまったものの、すぐに両親とも激励してくれ、また改めて浮かれ出した秀才だったが…
春:お前は忙しい奴だな。会議ったって、別に特別準備なんていらないと思うよ。まぁ、メモくらいは用意しといたら?
秀才:ほ、ほほほ、本当にそれで!それだけで良いのだろうか!!!!!!
春をガックンガクン揺らす秀才。
春:痛い痛い痛い。浮かれたり慌てたり何なんだよ。(チャイム)…あ、じゃ、あとでまた聞いてやるから。
教室へ戻っていく春。
秀才:裏切り者ー!
春:なんも裏切ってないだろ!(笑)
秀才:……休み時間とは儚いモノだな。こうして我が不安を解消させずに授業時間をもたらす。
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授業中。ノートのページを破り取った秀才。
秀才:役員会議までに何をすべきか整理しておこう。……そもそも役員会議とは何をするんだ?…今回は今年初の会議だ。今年1年の方向性でも話し合うのだろうか?
ふと見上げると、黒板の上に掛けられた校訓が見えた。
秀才:「逞しく 勤勉に 誠意ある行動」……そうか、まずは校訓に沿って生徒達をあるべき姿へと導く為に話し合うのだな。
ナレ:秀才はひとまず校訓をノートの切れ端に書き写した。このメモ書きに意味はあるのだろうか?
秀才:誠意…ある…行動…と。よし。……ん?
ハッとした秀才。
秀才:誠意…!生徒会と言えば生徒会長。まずは生徒会長にご挨拶せねば、無礼だ!誠意がない。今日の昼休み、会長様にご挨拶に伺わねば!
深呼吸をして会長様へのご挨拶を決意。
秀才:さて、ご挨拶は良いがどのようにすべきか。
ナレ:ここで秀才は、自身の聖典[バイブル]『王国学園[キングダム スクール]』を思い浮かべた。主人公が学園へ入学したての頃に書記として生徒会入りしたという回想シーンがあったが、生徒会長への挨拶シーンはなかった。逆に現生徒会長である主人公へ挨拶に来た生徒の描写もない。
秀才:ならばご挨拶は必要ない…?いやいや、作品の都合上省略しているのだろう。…どうしたものか。挨拶と言えば菓子折り?しかしそれは校則違反ッ!しかも今すぐ用意なんてできん。
教師:高木。高木ー、教科書読んで。
秀才:くッ…俺は生徒会入りすると言うのに礼儀も知らんのかッ!
教師:高木、聞いてる?
秀才:ん?…あ、ああ、もちろんです。教科書ですか?…えっと、アイ ワズ ア ベイビー…
教師:今は国語の時間です。こんなベタな事やる奴いるんだねぇ。
クラス一同、無言。
ナレ:実際、こんな事で大爆笑とはいかないものである。そして、なんやかんやで昼休み。
秀才:やれやれ、やっと昼休みか。高校は良いな。それぞれが自由に弁当なり何なりで昼食を済ませられて。中学は「ごちそうさまでした」まで動けん。
3年生の教室棟。
秀才:さて、確か今年の会長は白鳥さんと言ったか?女性との事だが…白鳥さんか。なんとも聡明そうな響きだ。漫画のヒロインのようだな。
ナレ:なんて考えはしても「聡明」の意味は分かっていない秀才。
秀才:白鳥会長…女性会長……女王陛下…!
ナレ:説明しよう!秀才の中の女性生徒会長は「女王様」なのである。と言うのも、秀才が今まで見てきた作品の女性生徒会長は皆、女王気質だったからだ!
秀才:名前の響きこそ"主人公を支えるヒロイン"や"マドンナ"と言ったイメージだが、生徒会長となるとキャラが違うはず!
ナレ:女王こと女性生徒会長は…立派な玉座で脚を組み、他の役員を従えている。そして……セクシーさも持ち合わせている。
3年生:どうしたの?誰か探してるの?
秀才:えっっ!!??な、なんですか!
3年生:いや、こっちが聞きたいわ。2年?なんかフラフラしてたから。
秀才:ああ、失礼しました。そ、その、会長を…
3年生:は?会長?
秀才:は、はい。えと、白鳥…会長を…
3年生:白鳥?ああ、生徒会長って事か。ちょっと待って。…白鳥ー!なんか2年の子が呼んでるけどー!
見知らぬ3年生はそのまま去った。そして現れた白鳥。
秀才:こ、この方がッ…!
ナレ:スラッとした体型に下ろした長い髪。系統としては美人系である。女王キャラだったとしても納得できる…気がする。
白鳥:何か用?
秀才(知らない2年生)を前に怪訝そうな白鳥。
ナレ:この表情が秀才の重症な心に火を着けた!
秀才:女王様だ…!高い身長で見下ろして、
ナレ:確かに中3としては高身長だが、秀才が小さめ且つ腰が引けている状態なのもある。
秀才:鋭い目付き!
ナレ:この子誰だっけ?の顔である。
秀才:言葉少なにどっしりと落ち着いている…!
ナレ:特に言いたい事がないだけだ。……ともかく、秀才ビジョンでは力強さを持ち合わせた高貴な女王様であった!高貴の意味はよく分かっていないが。
秀才が緊張して何も言い出さないので教室に戻ろうとする白鳥。
秀才:じょ、女王!いや、えと、白鳥会長とお見受けしました!
跪く秀才を前に白鳥は思った…
白鳥:え?何こいつ、キモっ。
ナレ:突然知らない後輩が来たかと思えば、おかしな口調で跪き出したのだから、それもそうである。
ふざけてからかっているのか?と思う白鳥。
秀才:あの、わたくし!今年度の庶務に任命されました、高木 秀才と申します!生徒会長にご挨拶に参りました!
白鳥:大真面目っぽい…それはそれで気持ち悪い。しかも庶務とか言った…?
ナレ:つまり、生徒会のメンバーと言う事。こんなのと付き合っていかねばならないとは、一気にやる気が失せる。とりあえず今はとっとと去る事にした。
白鳥:…よろしく。
スタスタと去る白鳥。
秀才:クールだ…!
ナレ:こうして白鳥は今日から、学園の女王となったのであった。秀才の中で。
上里:コラ!白鳥さん、髪はちゃんと結びなさい!毛先が肩につく場合は耳より下の高さで結ぶ!あなた今年は生徒会長でしょ?率先してお手本になる行動を取りなさい。
秀才:じょ、女王が、叱られている…だと…ッ!
ナレ:女王謁見を終え安心したのも束の間、衝撃的な場面であった。