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朝倉海vsパントージャ(MMA駄話)

先日12月8日、朝倉海選手がUFCのフライ級王座に挑戦した。

今年の日本MMA界も様々なことがあったが(良いことも良くないことも色々ありましたねえ…)、その中でもこれは最大級の出来事と言えるだろう。

理由は、主に2つ。

まず、海選手がUFC初登場にして、いきなりラスベガスのメインイベントを任されたことである。
過去には似たような例もあったが、競技としてのシステムがますます洗練されてきた昨今のUFCでは、ちょっと信じられないほどの異例であることは間違いないだろう。

これは実質、RIZINがUFCに次ぐ団体であるとUFCが認めていることと同義であるように、少なくとも自分には思える。この事実は、RIZINが10年かけて何をやってきたのか、ということの一つの答えと言えるだろう。
選手コールの際にブルース・バッファーが海選手をRIZIN王者と紹介していたが、これも異例中の異例である。

今やRIZINの名物社長である榊原氏は、かつてUFCにPRIDEを買収され、数年間(7年半と言われている)は格闘技業界に関われない契約を強いられたと聞く。要するに、格闘技プロモーターとしての榊原氏は、命を絶たれたも同然だったわけである。
そんなことを考えると、RIZINが10年の年月を費やし、コロナ禍や数多のピンチをなんとか乗り越え、こうしてUFCが無視できない存在まで上り詰めてきたことは、何か胸を打つものがあると言わざるを得ない。

そして、海選手は負けはしたが、そのメインイベンターとしての役割を立派に全うしたのではないだろうか。
正直のところ、自分はRIZINが始まるより前からUFCを見ているし、今回の海選手の大抜擢には「UFC舐めんな」という思いはあった。平達郎選手より先に海選手が王者になったら嫌だなあ、とも思っていた。

とはいえ、それはそれ。プロモーションやフェイスオフの際の、海選手の堂々たる姿は非常にかっこよかった。
彼の魅力は勿論、格闘技が強いことであるが、それと同時に、あの物怖じしない堂々とした立ち振る舞いとコミュニケーション能力の高さというのも、人を惹きつける大きな要因なのだなと、唸らされてしまった。
大会後のダナ・ホワイトのコメントからも、今回の抜擢は好感触だった様子が窺えるが、海選手のプロモーション能力には満足できたということなのだろう。興行として海選手の存在は大きかった。

さて、今回のことが日本MMA界にとって最大級の出来事だと思えるもうひとつの理由。

それは勿論、日本人初のUFCチャンピオンが誕生する可能性があった、ということであろう。
話せば長くなるので(ただでさえ長くなってきている…)具体的なことは割愛するが、MMAファンや関係者にとって、日本人UFC王者誕生は悲願中の悲願なのである。

かつてはPRIDE、つまり日本が世界最強を決める場だったというのに、今やアメリカにその場を完全に奪われてしまっている現状。
だったらそっち行って勝ち取ってやんよ、と歴戦の日本最強のファイターたちが挑み、そのたびに跳ね返されてきたきたUFC王座戦。
そう、やはりUFC王座は特別なのである。サッカーに例えると、ワールドカップ優勝も同然(サッカーよく知らないから合ってるかわからないけど)と言えるだろう。

しかし、王者は、アレッシャンドリ・パントージャは強かった。

自分は海選手の最大のスキルは「持ってる」ことだと思っていて、一回目の堀口恭二戦のように出合い頭にKOしてしまうことも十分に起こり得ると思っていたのだが、いやあ、UFC舐めんなとか思っていたくせに、自分のほうが舐めていたようだった。
試合後のマイクで「朝倉海選手のお陰でさらに強くなれた」みたいなことを言っていたが、確かに、パント―ジャからはさらに一段階高みに上ったかのような強さを感じた。

パントージャにも秘めた思いがあったのだろう。ホベルト・サトシ・ソウザ選手がよく「ここUFCじゃないよ!RIZINだよ!」と勝利後にRIZIN愛を表明しているが、この試合のパントージャもまさに「ここRIZINじゃないよ!UFCだよ!」といった様相で、UFC王者としての愛と誇りを感じずにはいられなかった。
パントージャも多くの日本人ファンを獲得したのではないだろうか。

要するに、海選手もパントージャも予想していた以上にかっこよかったし、リング内外のいろんなものがぶつかり合う、少なくとも自分にとっては、物凄く熱い試合だった。
実に興奮する格闘技観戦体験をありがとうございました、と両者には言いたい。

というか、先日のUFC310は神興行と言っていいかもしれないくらい、メイン以外も面白い試合が盛り沢山だったので、海選手をきっかけにUFCを見たという方々も、是非ほかの試合も見ていただきたいと思う。
個人的な一押しは、プレリムのイフロエフ(エフロエフ?)vsスターリング。このガッチガチのレスリングの組み合いを、我らがオギちゃんの解説で見る、というのが極上です。永久保存版。

やはり、世界で戦うには、レスリング力は必須という感じがする。国内MMAでは「腰が強い」とか「タックルを切れる」とかいう表現をよく聞くが、海外MMAではあまり聞かない。
要するに、そういうことではないのだろう。レスリングの展開を未然に防ぐのではなく、普通にレスリングでやり合えないと、海外では、特にUFCでは勝ち進むことはできないことは、今のUFCチャンピオンたちのラインナップを見てもらえば、一目瞭然だろう。

というわけで、今大会のまとめ。

レスリングは大事。

それではみなさん、さようなら。また格闘技のことも書いていきたいと思います。


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