SBTの未来|ヴィタリック氏ら論文 "Decentralized Society: Finding Web3’s Soul1"のまとめ
SBTとは
Soulbound Tokenの略で、譲渡不可能なNFTです。つまり、一度受け取ったら、他人にあげることもできないし、売ることもできない、ウォレット(ソウル)と結びついたトークンだということです。
SBTの提唱
SBTを初めて提唱したのは、Ethereum創始者ビタリク・ブテリン(Vitalik Buterin)氏。
彼が2022年1月に投稿したブログで、初めてSBTという言葉が使われました。
Vitalikのブログ
そののち、2022年5月に、Vitalikは他2名とSBTに関する包括的内容を記した論文を発表。上記のブログ記事の内容もほとんど論文に含まれていました。
今回のnoteでは、そのSBT論文の要点をまとめました。理解し切れていない部分もあるので、理解を深めつつ追記していく予定です。
執筆者
E. Glen Weyl
Puja Ohlhaver
Vitalik Buterin
SBT概要
譲渡不可能なNFT
発行者は、SBTを取り消すことができる
例:借金のSBTは返済後に削除される
SBTが可能にすること
コミュニティによるウォレット回復
シビル攻撃への耐性
DAOの投票を改善
他のDAOが投票を改善するためのSBTを発行する団体なども出現するかもしれない。
分解可能な共有権
ポジティブ、ネガティブ、両方のレビューの蓄積
ローン、ローンの返済完了、ビジネスパートナーのレビュー
ソウルドロップ
エアドロップより効果的な新しいマーケティング手法
→これらにより、様々なバリエーションのアプリケーションがを可能にする。
→この多元的で豊かなエコシステムを「分散型社会」DeSocと呼ぶ。
現在のWeb3はアイデンティティの表現を欠いている
それゆえのデメリット
NFTアーティストはOpenSeaなどの中央集権的なプラットフォームに依存
自身が発行したことの証明のために
単純なコイン投票を超えようとすDAOは、ソーシャルメディアのプロファイルのようなWeb2インフラに依存
シビル攻撃抵抗性を高めるため。
人間であることや、複数アカウントでないことを担保するため
分散型の鍵管理システム(メタマスクなど)は、一般人にとって使いやすいものではない。
鍵、リカバリーフレーズの紛失
結果、CoinbaseやBinanceのような中央集権的な組織が管理するカストディアル・ウォレットに依存
今日のDeFiは、担保不足の融資や、アパート賃貸のような単純な契約など、実経済に偏在する活動をサポートできない
匿名すぎるがゆえのデメリット、どんな人かわからない
SBTが可能にする社会の段階
証明の確立
評価による担保不足の融資市場の活性化
分散型鍵管理の実現([ichiro.icon]現時点では、メタマスクの秘密鍵やリカバリーフレーズをなくしたら終了してしまう。)
分解可能な共有の権利と、許可による新しい市場の創造
アートとSBT
アーティストのウォレットがSBTを持っていればいるほど、そのウォレットから発行されたNFTの正当性を証明しやすい。検証可能なオンチェーン方式で、NFTの出所と希少性を証明できる。
ディープフェイクとSBT
情報(動画や文章など)を発行したウォレットの社会的文脈をSBTで証明する(所属、資格、対象者との社会的距離)ことで、情報の真贋を判定しやすくなる。情報発信者(ウォレット)を社会的に文脈化可能。
発信される情報はチェーンに刻まれることが前提の論。
無担保融資
既存のトップダウンの信用システムより、ボトムアップで、透明性の高い信用システムを作れる。
例:借入は、譲渡不可能だが取り消し可能なSBTとして表現され、返済されるまでウォレットに存在。未払いのローンを譲渡したり隠したりすることが できない。
SBTを用いた債務の計算が容易になれば、融資市場がオープンソース化される。SBTと返済リスクの間に新たな相関関係が生まれ、信用度を予測する優れた融資アルゴリズムが誕生し、それによって中央集権的で不透明な信用スコアリング・インフラの役割が軽減されるであろう。
ウォレットの紛失防止策
SBTを普及させるにあたり、ウォレットキーの紛失というのは重要な課題になる。
ソーシャルリカバリー
信頼できる人々を「保護者」として設定し、保護者の過半数が同意すれば自分のウォレットのキーを変更することを可能にする。
キー紛失という単一障害点を避けることができる。
SBTコミュニティリカバリー
保護者の設定にあたり、自分が保有するSBTが帰属する組織を保護者としていくことで、リアルタイムな関係から保護者の設定が可能になる。
保護者の編集が不要になり、直近に活動している先の団体などを保護者としていける。
ソウルドロップ
エアドロップ
これまでのWeb3の新しいコミュニティを形成するための手法
アルゴリズムによって選んだウォレットにトークンを無料配布
特定のトークンを持っているかどうか、など
デメリット
複数アカウントやボット、エアドロップを効率的に得るための戦略的行動に弱く、届けたいユーザーに届けられないことも多い。
マシュー効果を促進してしまう。
ソウルドロップ
ある特定のSBTを保有している、または、特定の複数のSBTを保有しているウォレットに対してトークンを付与する。
メリット
真にリーチしたいユーザーにトークンを届けることができる。
ユースケース
一定期間SBTを保有したのちに、NFT/FTを付与する。
NFT/FTを一定期間保持することで、さらなる権利を与えるSBTを付与する。
→より幅広くコミュニティの関与を最大化するメカニズムを試行錯誤することを可能にする。
DAOの投票を改善する
現状のDAOの投票の課題
シビル攻撃
複数ウォレットで投票権を多く獲得される
1トークン1投票のスタイルの場合は、51%のトークンを得て決議権を握られる。
SBTでの改善
ウォレット内のSBTを参照して、ボットなど、シビル攻撃に加担していると思われるウォレットの投票権を無効化する。
より評判の良いSBTを持つウォレットに、より多くの投票権を与える。
学歴、免許、資格など。
特定の選択肢を支持するウォレットの持つSBTの相関を調べて、相関性の高い投票者の投票ウェイトを低くする。
相関性の高い参加者は同じ判断ミスや同じバイアスを共有する可能性が高く、投票において多様性を重視することが重要。
以下のTwitter調査からも、多様性の重視に賛同する人が多いと考えられる。
他のDAOがより良い投票を行うことをサポートするSBTを発行するDAOなどが登場してくるかもしれない。〜を保証するSBTを発行するDAOなど。
DAOのリーダーを選定
リーダーとなる人に求められる要素を、各DAOがそれぞれ抽出し、それを満たす人を選ぶときにSBTを利用できる。
→プログラム的にリーダーを選定できる。
複合的権利の分割
使用権、売却権、利益を得る権利など、1つの財産に紐づく複数の権利を分割して付与する。
SBTの場合は、売却権や譲渡権なしで、利用権のみ認めるといった利用が可能。
4.8 From Private and Public Goods to Plural Network Goods
あまり理解できず。
§5 PLURAL SENSEMAKING
あまり理解できず。
非中央集権的社会
Web3で、金融システムだけでなく、広く社会を変革するには、 今日の社会構造とそれに関する幅広い関係性を示す要素がWeb3には必要。
DeSocが可能にするのは、デジタルと物理の2つの世界を横断して拡大し続けるネットワークが交差し、部分的に入れ子になった構造。
プライバシーを守るために
全てのSBTをチェーン上で公開するのは、多くの情報を公開しすぎており、プライバシーの問題に直結する。以下の方法が対策として考えられる。
SBTがデータをオフチェーンで保存し、データのハッシュ値(トークンID?)だけオンチェーンに公開。
自分が望むときだけ、SBTの内容を公開することができる。
ゼロ知識証明で、任意のステートメントを、そのステートメント以上の情報を明かす ことなく証明することも可能。
例えば、政府文書やその他の証明書が暗号的に証明可能な世界では、 "私は18歳以上で経済学の大学を卒業し、5万人以上のTwitterフォロワーを持つカナダ国民で あり、このシステムでまだアカウントを主張していない "といったステートメントを真偽だけを返して証明することが可能。
Unirepプロトコルは、これがどのように実装されるかの一例です。
Proof of Personhood
個人の一意性を証明するトークンを発行
SBTの社会実装へのステップ
現在普及しているウォレットは、リカバリーシステムがないため、SBTの最終的な保管場所にはならないかもしれない。
しかし、リカバリーシステムを機能させるには、多様なSBTが入っている必要がある。
初期のSBTは、発行者が、取り消し(バーン)可能であることが必須。
秘密鍵を失ったときや、ウォレットを乗っ取られた時のため。
オフチェーンでの関わりが強い組織(雇用主、教会、ミートアップグループ、クラブ)が発行したSBTなら、トークンをバーンして、新しいウォレトに再発行することに適している。
なりすましを簡単にチェックできるから。
単発の交流(コンサートやカンファレンスの参加)を証明するSBTはあまり適していない。
多くのDAOは、ガバナンスを強化するためにPoP(個人の一意性を証明すること)を使用している。
DAOでの投票を改善するために、SBTは使われると考えられる。