見出し画像

稀代の傑作「Bloodborne」─3D酔いでもグロでもなく、精神的ショック一本で私を嘔吐させた唯一のゲーム

まずはSEKIRO、TGAのGOTY受賞おめでとうございます。
この記事はその行き場のない興奮のままに書き殴っております。
尚、当記事にはBloodborne序盤のネタバレが含まれておりますのでご注意下さい。

Bloodborneとは

The Game Awards 2019でGame of The Yearを勝ち取った"SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE"を手掛けた宮崎英高氏がディレクターを努めたゲームです。
宮崎氏が手掛けた他のタイトルに共通するように、一瞬気を抜けば即死、しかしプレイヤーの成長にしっかり呼応して生き抜くスリルを提供してくれる絶妙なゲームバランス
そして徹底的に練り込まれた世界観とてっぺんからつま先までロア(物語背景を示唆するフレーバーテキスト等)たっぷりな仕上がりが魅力の大傑作です。

じゃああなたはBloodborneの何でゲロ吐いたの?

私にも未だによくわかってませんが、私自身はこう分析します。
「プレイヤーである私と、Bloodborneの主人公であるハンターが類を見ないレベルでシンクロしてしまった結果である」と。
グロくて吐いたとか3D酔いしたとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえです。

宮崎氏の手掛けたゲームたちに共通するのが、一貫して「生と死」「欲望」「生命の営み」「闘争」などの最大公約数的な、すべての人間に共通する重厚なテーマを扱っている事です。
当然Bloodborneでもそれは同様で、主人公を含め登場人物はほとんど皆、何かに狂っています。
殺戮に狂う者、知識に狂う者、妄執に狂う者、信仰に狂う者……。

プレイヤーはそんな世界に、主人公であるハンターとなって飛び込む事になります。
突然病院らしき所のベッドで目覚め、記憶は無く、階下に降りれば四つん這いの狼男に襲われ悲鳴をあげて逃げ、そして人に襲われ……。

やがて、主人公は奇妙な場所に迷い込みます。
そこは今後拠点となる、狩人の夢と呼ばれる場所。
武器が落ちており、謎めいた車椅子の老人と動かぬ精巧な人形が一体。
そして再び現実世界へ。

あれは本当に夢だったのでしょうか?
先程拾った武器はしっかりと手に握られています。
「よくわからないが、これでやっと戦える。」

戦う理由も曖昧なままに必死でどうにか生き抜き、やがて主人公は「啓蒙」なるものを手に入れる事になります。
「啓蒙とは一体何ぞや?」
狩人の夢に戻ったプレイヤーを迎えたのは、先程の人形でした。

「う、動くぞ!こいつ!」
人のように動き喋る人形、さっきまで確かに「モノ」だったはずなのに。
これは幻覚か?それとも現実か?「啓蒙」を手に入れたから見えないはずのものが見えているのか?
とりあえずこの人形はプレイヤーを手助けしてくれる様子。
「すげえ背高いな」とか思いながら人や獣を狩り殺して得た「血の意志」を捧げて強くして貰います。

やがて戦闘にも慣れてきたプレイヤー、最初はおっかなびっくり逃げ回りながらつついていた巨大な敵や、目を覆いたくなる程グロテスクな敵にも血を求めて斬りかかっていきます。
強大な敵を倒せば「啓蒙」が貯まっていきます。
常人の時には見えなかったものが見えるようになっていきます。

名状しがたい怪物を恐れなくなっていきます。

血を求め、啓蒙を求めます。

命の駆け引きに夢中になっていきます。

主人公キャラクターは何も言いません。何も感情を表しません。

血を求め、啓蒙を求め、命の駆け引きに狂って名状しがたい怪物に喜び勇んでノコギリ鉈を叩き込み、返り血を浴びているのは、「主人公」ではなく「プレイヤー」である「私」でした。

オエロエロエロエロエロオボボボボボーッ

私がトイレに駆け込んだのはそう気付いた瞬間でした。

かつてメタルギアソリッドで「殺戮を楽しんでいるんだよ、貴様は」と言われた時に似たような衝撃を受けましたが、「人格のある主人公」というワンクッションを挟まず直撃を食らった分とても効果的。

このゲームの中に出てくる人々の殆どは狂っています。
殺戮や知識欲や妄執に狂った人たちです。
「あーやだやだ怖い」と思って傍目に見ていたそのフィクションの人物たちと、今まさにコントローラーを握っている自分が完全に同類だと自覚した衝撃たるや、大嘔吐に値します。私はしました。

でも怖がらないで!Bloodborneは傑作だから!

そんなゲロ吐くようなゲームやりたくねえよ!!という皆さんはしばし待って頂きたい。
私は私以外にこのゲームでゲロを吐いたという話をとんと聞かない。
恐らく私の脳の何かとBloodborneの何かが上手に噛み合ってしまった結果の大嘔吐だったのだと思います。

それに無論、精神的衝撃を抜きにしてもアクションRPGとして空前絶後の傑作ですからプレイしないのがもったいない。
是非とも嘔吐の心配などせず、どんどんプレイして頂きたいものです。
PS4限定タイトルなのが惜しい所ですが。

最後に

私がゲームを評する上で最も重視している評価軸は「どれだけの情動を与えてくれたか」という点です。

その点で言えば、3D酔いもせずグロテスクさにも非常に高い耐性のある私に精神的ショック一本でゲロを吐かせた唯一のゲームであるBloodborneは唯一無二の作品と言えるでしょう。

SEKIROのGOTY受賞でフロムソフトウェア作品に興味を持った方は、他の傑作たちと共に是非触れてみて下さい。

いいなと思ったら応援しよう!