Unusual backgroundでの米国トップPhD受験戦略

前回投稿で述べたように、自分のスペックは米国トップスクールのPhD受験をするにはかなりUnusualだ。Fundingなしでの合格とは言え、合格は合格なので同じようなチャレンジを検討している方の参考になるよう、自分が採用したストラテジーを紹介したい。まずは通常のアプローチに簡単に触れ、それと対比するような形で説明したい。

<通常のアプローチ>
普通の日本人学部生が統計学で米国PhD受験をするための効果的なアプローチは、海外にも名の知れた教授に米国でも通じるようなスタイルの推薦状を書いてもらうことである。できれば応用系の研究分野で学部生の間でもカンファレンスペーパーに名前を載せられるとなお良い。その他2通もできるだけ名の知れた先生の授業で成績Aを取り、その方に書いてもらうと良い。その上で、上記の教授のコネも使って事前にコンタクトを行うことが極めて有効である。

これは日本人に限らず一般的なストラテジーであるが、特に日本人の場合はTOEFLやGRE Generalのスコアが酷すぎる(=足切りレベル)ので、上述の戦略によってスコアの酷さを大幅に上書きする必要があるのである。インド人、中国人はGRE GeneralのV+Qで330 overのスコアを取ってきていることを忘れてはならない。余談だが、日本人の多くが外部奨学金を持ち込まないと合格をもらえないのは、スコアが酷く、完璧なApplicationとみなされていない点が一部災いしていると思う。繰り返すが、あらゆる面でケチのつけようのないApplicationを出してくるインド人、中国人との競争であることを忘れてはならない。

なお、統計学の場合は理論に強いこともアピールできるとよく、Measure Theoretic Probabilityの授業でAを取っておくと良いだろう。統計学の米国PhDではGRE Subject Mathがかなり重視されていることもよく知られている。最高峰のStanfordでは、統計学科の合格者の平均は90%を超えていると明記されていた(現在はコロナ禍をきっかけに方針が変更になり、その記載は削除された)。

<私の戦略>
現役の学生ではなく、現役時の専門は純粋数学(複素幾何)であって、統計学の世界で名の知れた方に推薦状を書いてもらうことは不可能だ。

データサイエンスエンジニアだったなら職歴を武器にすることもできたが、その選択肢もない。

他方、純粋数学で修士を取っており、確率論・統計学の基礎たるMeasure theoryや理論系の研究で重要となるFunctional Analysisには精通していたので、数学的理論に強いことを最大限アピールすることを基本戦略とした。これらについてはSOPならびに数学時代の恩師の推薦状で裏付けることとした。また、恩師の推薦状では修士論文のことについても触れられているはずであり、統計学ではないものの、純粋数学での研究経験があることもアピールできたと思う。さらに補強するため、たまたまミシガン大学留学中にContinuous-time Financeに関するPhD学生向けの授業でAを取っていたので、その授業の担当教授に推薦状を書いてもらうことで、確率論にも馴染みがあることのアピール及び英語圏からの推薦状を得るということにも繋がった。なお、推薦状3通のうち上記2通はそれなりの効力があったのではないかと思うが、残念ながら3通目に数学・統計学と関連する分野の教授からの推薦状を得ることはできなかった。

また、スコア面でインド人、中国人と遜色ないことを示すことは絶対条件と考えた。これはweakポイントを一つでも減らす観点からである。GRE General Testに関してはVerbal 160, Quantitative 170をターゲットとし、実際に達成しすることができた。このターゲットは米国トップスクールの受験生のスタンダードなターゲットであり、インド人・中国人は必ずこのスコアを達成している

また、スコアの観点でも、理論に強いことを示す観点でも、統計学で重視されるGRE Subject MATHでハイスコアを取ることは絶対条件と考えた。スタンフォードの平均が90%を超えているということから、最低限90%を超えるということをターゲットとした。残念ながらこのターゲットはコロナ禍でSubject Mathの試験自体が中止されてしまって、達成することができず、お試しで受けたスコア85%で受験することになってしまった。これについては次回投稿の結果分析で言及したいが、今回の合否結果にクリティカルに影響したと考えている。

自分の弱点の一つは自分のバックグラウンドがUnusualすぎることであり、レジュメの段階で意味不明だと落とされる可能性を感じていた。このため、レジュメのチューニング、SOPでのロジカルな説明に加え、Professor of Interest (POI)への事前コンタクトで丁寧にバックグラウンドを説明することを徹底することとした。できれば直接大学を訪問してアピールしたかったのだが、これに関しては残念ながらコロナ禍で実現不可能だった。Face to faceのコンタクトが最も効くことは社会人でPhD受験をした知人からよく聞いていたので、この作戦が実行できなかったことは残念であった。

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