高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【261】
妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
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【随筆】「小津と黒澤」雑感
高山の作品から
随筆「映画『3-4×10月』(英題 "Boiling Point")北野映画 雑感」
2017/04/09
このところ新しい映画を観ても外す事が多いのと、春になると鬱が出てなかなか気分が優れず、古い前に観て良かった映画を観てますね。
金銭的にも厳しいのも有りますけどね。
去年の読んだ本はメモしてたけど、観た映画はメモしてませんが新しく観たのは、多分二百本は行かないでしょう。
何度も同じの借りて観てますね。
その度に新しい発見が有るのは、やはり映画に力が有るからでしょう。
映画『3-4×10月』、北野武監督の二作目です。
一作目は『その男、狂暴につき』は、確か深作欣治監督がするはずが、諸事情で出来なくなってますね。
脚本も変わってるし最初は、武は主演ってだけで話しが進んだと思います。
だから、全てが武のコントロールに置かれたかは難しい所でしょうね。
良い映画ですが、僕はこの『3-4×10月』を、北野武の本格的デビュー作だと思います。
『その男、狂暴につき』は良いんですけどまだ、武の暴力と笑いと静謐が完全では無いですね。
実は、僕の中では武の映画は、『ソナチネ』と『キッズ・リターン』が最高だと思ってました。
『ソナチネ』で、完成されたなあと思ってたんですよね。
その後の映画も好きですが、『ソナチネ』の世界は余りに凄くてですね。
『キッズ・リターン』は、武が出ない映画では一番ですね。
『あの夏、いちばん静かな海。』も良いんですけどね。
何度も見てるから、どうせ順位とか変わるんですけどね。
やはり、観た時の年齢や気分で変わりますが、何度も観る事が出来るのはストーリーの魅力、プラスアルファがないと観られませんね。
それが、出来るのが日本映画では宮崎駿監督と北野武の映画です。
しかし、『3-4×10月』は、今は新しいのを借りて外すならと古い観てるのを何本か必ず借りるんですが、見直して非常に優れてるなと思いました。
何がと言えば、武の映画のエッセンスが見事に詰まってるのと、非常にシンプルって事です。
贅肉のついてない、武映画の初期の傑作ですね。
良く作家とかは処女作に全てが出てると言うけど、これが処女作だと考えたらなるほどと思います。
脚本もシンプルだし、音楽も無いんですよ。
それでも久しぶりに観たら引き込まれて、眠らないといけないなと思いながらも全て観ましたよ。
ストーリーは、草野球チームの冴えない若い男がふとした事からヤクザがらみの事に巻き込まれて、って話しです。
冴えない若い男を柳ユーレイがやります。
主要な役をほとんど武軍団がやってます。
妙に演技に拘らずにやってるからリアルですね。
ガソリンスタンドに勤める柳ユーレイが、ヤクザに絡まれて思わず殴り返してしまいます。
それを聞いた野球チームの監督的な存在のガナルカナルタカが元ヤクザで、因縁を付けてる所の組に兄弟分が居るってので話しをつけに行きます。
ガナルカナルタカ上手いですよ。
元ヤクザで、今はスナックのマスターってのが似合ってます。
話しをつけに行くけど、お前はもう堅気だろうで追い返されます。
しかし、ガナルカナルタカはその時に生意気な態度を取った、元は自分自身の下に居たヤクザを呼び出して殴ります。
この辺りの緊迫感と、そして笑いが上手いです。
ガナルカナルタカの役が井口って名前なんですが、かつては自分自身の下に居たヤクザが、今度会ったら井口さんじゃなくて井口って呼ぶぞって言うんです。
ガナルカナルタカは殴った後に、何度も自分自身の名前を呼ばせます。
相手のヤクザ、これをベンガルがやってるんですが、井口さん井口さんと答えますが、何度も井口だろうと聞きます。
こうして文章だけを読んでたら面白くも何とも無いでしょうが、間と演技で暴力から笑いに変えてますよ。
柳ユーレイは、何を考えてるのか分からない無口な青年を演じます。
しかし、無口ながらも柳ユーレイ演じる青年は、喫茶店で働いてる女の子をガールフレンドにしてます。
それが、若き日の石田ゆり子です。
今でも歳を取らないと言われるけど、とても可愛いですよ。
柳ユーレイとの交流は、ほとんど言葉は使わないんですけどね。
この映画はシンプルなだけで無くて、極力台詞が少ないです。
多分ですが、武軍団を使ったのは予算的な事もあっただろうし、武自身の本格的初監督ならなるべく身内で好きにやりたかったのではと思います。
そうすると下手に台詞を多くしても、役者としては皆が素人なのでボロが出ると思ったのかもですね。
そこの所は分からないけど、結果的に台詞を極力少なくする事で研ぎ澄まされた映画になってます。
その後に、ガナルカナルタカはヤクザに報復されます。
かなりエグくやられますよ。
沖縄で拳銃買ってきて、あいつら殺してやると言ってると聞いて柳ユーレイは、俺が沖縄に行くと言って行きます。
これに草野球チームのダンカンが加わって、二人で行ってます。
説明が極端に少ない映画ですが、分かりにくいとか無いんですよ。
ごてごてした所は無いけど、暴力と笑いと静謐と、もう一つ付け加えたら暴走でしょうね。
沖縄で、破門にされそうなヤクザの武と出合います。
この頃の武は事故をする前で、顔がすっきりしてますね。
四十代前半ですね。
この武のヤクザがむちゃくちゃです。
そして良く喋ります。
ガナルカナルタカも台詞が多いけど、武はアドリブかって位、唯一良く喋るし暴力的でむちゃくちゃです。
何故か、柳ユーレイとダンカンを連れて飲み歩きます。
次の日までに組のお金を使い込んでて返す事と、けじめをつけて来いと言われてるのにです。
武は、今回は主役と言うより柳ユーレイ達をサポートする変なヤクザを演じます。
その武の下に付いてる弟分が、渡嘉敷勝男です。
当時は武が可愛がってましたからね。
武軍団みたいな感じですよ。
武と渡嘉敷のコンビが笑えますね。
柳ユーレイとダンカンを連れて沖縄のスナックで飲んでるんですが、組の若いのが武を見つけてお前こんな所で飲んでて良いのかと言うと、武がビール瓶を持って殴ります。
渡嘉敷は女の子とチークダンスを踊ってますが、組の若いのが反撃に出ようとするとすっと動いて殴ります。
そこは、流石元チャンピオンですから早いです。
そしてまたチークダンスに戻ります。
そういうやり取りが二度ほど繰り返されます。
こういうシーンでも笑いを感じますし、息が会ってます。
そして、沖縄が二人に似合いますね。
『ソナチネ』でも沖縄ロケをしてるけど似合います。
実際は石垣でやったと、沖縄の人に聞いた事があるような気がしますが、照りつける太陽と狂気、そして独特の建物や車のラジオから流れる沖縄民謡。
全てがマッチしてますね。
武の映画では、海が特に初期は使われるけど、ここでも沖縄の海でのシーンをふんだんに入れてます。
武の無軌道ぶりも笑えますが、破滅して行く男の描写が上手いですよ。
沖縄で米軍から銃を巻き上げます。
それを自分達の分だけを取ると、残りを柳ユーレイ達にやります。
武の映画で代表的なのでは、女との交わりとか少ないです。
常に男同士の何かを描いてるように思います。
暴力描写にリアリティーが有るのは、彼が若手の頃の浅草での修行時代が有るのではと思います。
元々下町の出身ですし、修行時代の喧嘩を誰かが言ってたけど、相当強かったと言ってますね。
そういう部分は、自分自身の経験も有ると思いますよ。
女を、自分自身が出演者する時に極力排するのは照れるからも有るでしょうが、男同士の何かを描くのが得意ですね。
今回も、たまたま知り合った柳ユーレイとダンカンに親切にします。
武と渡嘉敷は、組に乗り込んで銃を乱射します。
柳ユーレイとダンカンは無事に本土に戻ります。
そして二人で、ガナルカナルタカの敵討ちのような感じで行きます。
もう一人、草野球チームの若い男も何となく付いて来ますが、いざとなったら銃が発射されません。
安全装置を解除してないんですが、二人とも分からなくて打てないんです。
そのうち組の連中に見つかって、たまたま付いて来てた若い男とダンカンが捕まって、ヤクザにぼこぼこにされます。
柳ユーレイはその場を上手く逃げるんですよ。
その後、若い男の所に行きますが、父親らしき人に怒られて帰ります。
ダンカンの所に行くと最初は嫌な顔をされるけど、アパートを出てずんずんダンカンが歩くのに付いて行きます。
ダンカンは、駄菓子屋のような所でアイスを買うと柳ユーレイに黙って渡します。
この辺りも観たら分かると思うけど、単純には渡しません。
複雑な心理を表してますね。
男同士の友情を、ベタでなく上手く描いてます。
柳ユーレイはガソリンスタンドに行くと、タンクローリーに勝手に乗って暴走始めます。
石田ゆり子も乗ってます。
最後は、組の事務所にタンクローリーごと突っ込んで大炎上です。
破滅して行くんですが、何処か清々しさが残ります。
極力無駄を削いだせいか、観る人或いは観る時によって様々な感情を入り込ませる、良い意味での隙を与えてくれてるように思えます。
そこからまた、一番最初の草野球のシーンに戻るから夢落ちかとも思いますが、それは捉え方次第でしょう。
話しがループしただけどと僕は思いますよ。
とにかく、観ないと良さは分からないでしょうね。
時間的にも冗長にならずに締まってますね。
筋肉質な映画と言えるかも知れないですね。
それと1990年の映画ですから、皆若いです。
そういえば自分自身も若くて、最初は良いな位でしたね。
着てる物などは、時代を感じますが古くなくなってないですよ。
宮崎駿監督の全てが詰まってるのが『風の谷のナウシカ』だとしたら、北野武の全てが詰まってるのがこの映画かも知れないですね。
その後、メロドラマ的な作りや実験的作り方もしてますね。
『BROTHER』は、ハリウッドを意識しつつ何処かハリウッドを突き放してますけどね。
僕は、リアルタイムで武の映画を追ってるから思うけど、『HANA-BI』で外国の賞を取ったからと言っても驚きませんでしたね。
とうとうやったな位です。
それより当時驚いたのが、『座頭市』です。
何故かは、ここまで脚本も書けるんだ、です。
何処か、私小説的な物しか書けないかと思ってたんですよ。
後で観るとそうでも無いんですが、『座頭市』は驚きましたね。
エンターテイメントにここまで近づけられるんだ、です。
しかし、当時は時代劇側からの反発も聞きましたね。
金髪の座頭市で、最後はタップダンスは無いだろうとか、時代劇の所作から外れてるとね。
外国の賞を意識し過ぎとかも有りましたね。
そういう意見も分かるけど、そういう事ばかり言ってては時代劇は廃れますよ。
漫画原作の『るろうに剣心』や、『超高速参勤交代』とか観てると、古い人は怒るかも知れないけど良く出来てます。
傑作では無いけど楽しく出来てますよ。
新しい物も、良ければ受け入れて行けば良いと思いますよ。
そこから時代劇に興味を持って、黒澤明の『七人の侍』や、『用心棒』に行くかも知れないですからね。
武は国内では拒否反応を示す人、業界の人が多いですし、武の映画が良いと言うとインテリぶってるからとか言う人もいます。
もちろん、苦手って人の気持ちも分かるんですけどね。
無理に見ろではないけど、ヤフー知恵袋とか見てると非常に評価を下げてる人が多いね。
自分達の分からない物は駄目だ、と言うのはおかしいね。
僕も邦画の若い男女の恋の物語は苦手ですし、ハリー・ポッターシリーズのようなファンタジーも苦手です。
日本映画の怖いのも苦手です。
一応観るんですが、やはり苦手だなって有りますからね。
武映画嫌いを、非難は全くしません
それぞれ好きな分野があっても当然良いんですが、外国で受けたからとかの言い方は好きになれませんね。
小説サイトに居ると、様々な映画の意見を聞きます。
良く観てる人は観てますね。
結婚して、お子さんがいるとかならなかなか観られないでしょうが、観てる人のは参考にしてますよ。
そこから、あー!こういうのも面白いんだなと教えられます。
しかし、今回の日本のアニメの実写で、『ゴースト・イン・ザ・シェル』で武が重要な役で使われるのは、長年の海外での評価でしょう。
あのスカーレット・ヨハンソンに対抗出来る日本人俳優が居なかった、って事かもです。
それを考えたら、国内の俳優を本業にしてる人達は僻んでばかりいないで、考えたらですよ。
武は上手い俳優ではないですが、存在感の俳優です。
これからどんどんハリウッドに行こうと思うなら、そういう部分も見習うべきだなと思います。
それと、武は四十代から本格的に映画を撮り始めて上手く行ったのは、彼の才能だけで無くて経験も重要だと思います。
このところネット社会ですから何か起こると炎上したりしますが、リアルな体験と現物に当たるべきですよ。
本なら本をきちんと読み込んで批判する。
映画なら映画をきちんと観てる批判する。
表面だけの情報に踊らされ過ぎてると思います。
ネット時代だからこそ、リアルや現物に当たれです。
直ぐにGoogleに頼って調べるよりも、現物を読んだり観たり聞いたりしないと駄目です。
僕は所詮は土方ですから、身体感覚や自分自身の勘と言うの信じてます。
そうでないと、トンネル作業と言う特殊な世界で二十五年以上生き残れませんからね。
自然に対して行くってのはとても大変だけど、大事な何かを教えてくれるように思います。
武の映画は、そういうリアルな痛みや彼の経験からも生まれてると思います。
誰でも武のようになれるとは言えないけど、もっと国内で表面的なだけで無くて評価されて良いと思いますよ。
「世界のキタノ」と単純に言うけど、実際非常に優れた監督ですよ。
武も七十才になりましたね。そう考えたら、いつまで活躍出来るかは分かりません。
彼の今後も、ファンとしては追いかけたいです。
おわり
高山の作品紹介
次回は随筆「総合格闘技『PRIDE』から『RIZIN』 雑感」
「ガーターベルトの女」~映画化のために
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「ガーターベルトの女 外伝」(フィクション編) 1
「新・ガーターベルトの女 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
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