高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【260】

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【随筆】「小津と黒澤」雑感

高山の作品から
随筆「映画『怒り』雑感

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2017/04/06
映画『怒り』を観ました。

批判もしますが、大前提としてはとても良かったですよ。


だけど、この監督とこの原作者ならもっと良いのを作れたのではとも思います。


何故かは、『悪人』で、やはり吉田修一原作で李相日監督で組んでますが、それが良すぎたんでしょうね。


『怒り』は、五点満点中の四点ですね。

これでも、映画には厳しい僕にしては良い点数ですよ。


原作者の吉田修一はデビュー当時から全ては読んでないけど、かなりの数を読んでます。


『怒り』も原作を先に読みました。

『悪人』も原作を先に読んでるから、原作を先に読むとどうしても映画が落ちる、とはないんです。

『悪人』は、原作もパーフェクトなら映画もパーフェクトって言う素晴らしい映画ですよ。


妻夫木聡と深津絵里の名演も素晴らしいです。


『怒り』は、あれに比べたらってだけで、久しぶりに新しい映画では良かったですよ。

映画『悪人』がストレートな直球だとしたら、今回の怒りはカーブかも知れないですね。

李相日監督は良いですよ。他にも『フラガール』や、『許されざる者』を撮ってますね。


調べたら、あー!あの傑作『フラガール』なんだと驚きました。

それとまだ、若いのに驚きましたね。四十代前半ですね。


『許されざる者』も、クリントイーストウッドの映画を日本版にリメイクしてて、評価は割れてましたが、悪くないですよ。


素晴らしい監督だと思ってますよ。


吉田修一は、自分自身は好きな作品とうーんって作品が入り交じる作家ですが、常に注意しながら見てる作家です。


『横道世之助』も、映画も原作も良いですね。


特にこの映画で独特の存在感を放った、吉高由里子は良かったです。


今回は、『怒り』について書きます。

ストーリーは、八王子で夫婦を殺した犯人が壁に血糊で「怒り」と残して行きます。


一年以上経ってもこの犯人、山神は捕まりません。

これは、市橋達也事件をモデルにしてますね。

外国人のリンゼイさんを殺害後に逃亡して、整形する男です。


僕は、この市橋の逃亡の本を読んでます。


犯罪者の本は読みたくないんですが、市橋がどうやって長きにわたり逃亡したのかに興味があったからです。


サバイバル本として読みましたね。

お勧めしないけど非常に不謹慎ですが、興味深いです。


『怒り』は、あくまで事件の部分をモデルにしてますが、群像劇にしてます。


東京でゲイですが、わりと充実した生活を送る妻夫木聡演じる男の所に現れる若い男。


二人はゲイとして結ばれて行きます。


しかし、その男の素性ははっきりしません。


その男を、綾野剛が演じます。

千葉では、発達障害のある少しだけ普通でない娘と父親のもとに、やはり身元がはっきりしない若い男が現れます。


この父と娘を、渡辺謙と宮崎あおいが演じてます。

身元がはっきりしない男を、松山ケンイチが演じてます。


沖縄では、移住してきてまだ慣れない若い女性が同級生と無人島に行くと、そこにはバックパッカー的な生活をしてる森山未來が居ます。


女の子を、広瀬すずが演じます。


広瀬すずの同級生を、佐久本宝と言うオーディションを勝ち抜いた若手が演じます。


この三つの視点で物語が動きます。


身元がはっきりしない三人に、段々と親しみを持って深く入って行きますが、途中から殺人で逃げてる山神をテレビで公開捜査など始めます。


自分達が親しみを持って信じ始めてるのは、もしかしたら山神なのではと思い出します。


信じようとしながらも、殺人犯なのでは?です。

三人のうちの誰かが犯人なのではと言う不安が、一つの映画のミステリー的な要素です。


東京でも、二人は独特な関係を築き出して行きます。


沖縄でもある事件をきっかけに、急速に近づいて行きます。


千葉では、宮崎あおい演じる女と身元がはっきりしない男は恋仲になっていきます。


ここで、渡辺謙が宮崎あおいの父なんだけど戸惑い、男の身元を調べたりします。


自分自身の娘を可愛がりながらも、普通でない娘に対して悩みます。


この辺りが非常に良いです。

渡辺謙の武骨だけど必死に娘を守ろうと思いながらも、何処かで娘を信じきれてない親って分かりますね。


宮崎あおいも非常に上手いです。


東京でも妻夫木と綾野剛の関係はゲイです。


二人の性の描写が、やや激しいと思うかも知れないけど、あれでも抑えてるでしょうね。


それよりも、二人の信じたいけど徐々に崩れていく関係が見ごたえ有ります。

沖縄でも、若い佐久本は自分自身の親の民宿に森山を働かせます。

若い佐久本は、有ることをきっかけに悩み出してるんですね。

沖縄の問題も微妙にはらんでますね。


この映画と原作が語りたいのは、人を信じる事。


そしてそれは、とても難しくてだけどやはり信じるって事ですね。

誰が殺人犯の山神なのか?途中からそういうミステリー要素が強くなりすぎるのが少しだけ残念です。


原作の方は、ミステリー要素よりも人間模様に重点を置いてます。


しかし、これは原作も非常に良いけど、かつて同じタッグの『悪人』程ではないんですよね。


それでも画面から緊張感が漂ってて、僕は何時ものようにDVDで借りて観たんだけど、途中で停めたのは一回です。


トイレに行きたくてですね。


原作を忘れかけてるとはいえ、読んでるのにここまで引っ張る力は最近の邦画で無いなと思いますよ。


何せ豪華な俳優陣ですが、豪華なだけで無くて皆が上手いですよ。


特に宮崎あおいと妻夫木聡と渡辺謙ですね。

三人とも上手いのは知ってるけど、宮崎あおい、妻夫木聡は更に一歩踏み込んで来ますね。


宮崎あおいの、少しだけ普通でない女性。


妻夫木聡のゲイの男。


ラストに向かってどんどん行きます。


ラストには、原作を読んでても三つの土地の人間の切なさや、人間の悲しみ救いが一気に来ますね。

生身の人間を剥き出しに見せてくれながらも、映画として観客もきちんと意識してます。


それを妙に説教臭くせずに見せて行くってのは、監督の技量でしょうね。

それぞれの立場で悲しんだり、何とか救いがあったりします。


妻夫木聡のラストの表情は印象的です。


これだけの、豪華で上手い俳優をまとめあげたのも流石です。

豪華で上手い俳優を集めてもそれを使いきれないと無駄ですが、李監督は使い切って更に引き出してますね。

特に宮崎あおいと妻夫木聡を、またもや一皮剥けさせたなと思いますよ。


二人とも上手いですが、他の映画ではここまで行けないかもですね。

脇を固める役者も良いですね。

刑事役のピエール瀧等もやはり存在感有ります。

一つだけ不満が有るとしたら、新人の沖縄の佐久本君は素晴らしいのに、広瀬すずが余りに周りが良すぎるせいか僕には若干苦戦してるなと思えましたね。


画面から漂う緊張感と、最後に全てが分かってからの爆発が良いです。


何処の場面も映像が綺麗なんですが、映像が綺麗な分だけ人間の切なさが逆に引き立ってるようにも感じます。


特に沖縄は、そういう部分が顕著に出てます。


沖縄の綺麗な海が、逆に人間の悲しみや切なさ引き立たせてます。


音楽も坂本龍一で、静かに上手く使われてます。

最近の坂本龍一の音楽は、坂本龍一ですと言う押しの強さが無くて、映画音楽に徹しててまた良いですよ。

生きる事や普通とは何か?とか、人を信じるとはどういう事かとか考えますね。

生きる悲しみや希望が描かれた秀作ですね。


今年もけっこう新作を観てるけど、今のところ一番良いと思います。


新作で無理して借りても、損はしない映画です。


李相日監督の今後にも期待してますね。

吉田修一も確か僕と同い年の作家ですが、興味深い良い作家です。


話しが、とっちらかりましたし、役名を覚えてなくてすいません。こういうのは調べたら分かりますよ。

あくまで個人的雑感ですが、なかなか書くのは難しいなと思いましたね。

多分この先も、何度か観るだろうと思える作品です。


おわり

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