高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【247】
妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
無名作家高山のエッセイ「ガーターベルトの女」の
映画化芝居化・・・その他いろいろ作品化できればなんでも
なんて途方もない夢を観ています
高山の作品から
随筆「様々な人達 エスさんとワイさん」
2017/02/23
ある作業員の話しです。もう亡くなってるらしいです。
三十代の頃に父の会社が倒産して、新しい会社の作業員になって二つ目の現場が鳥取県の田舎です。
家を出る時にもう家が取られることも知ってましたが、ギリギリまで当時付き合ってた女の子と一緒に居て感傷は後から来ましたよ。
ちなみにその女の子には何度も遠距離恋愛になるからと言って別れようと言ったけど、大丈夫だからでした。
ところがゴールデンウィークで帰る前に、新しい男が出来たで別れました。
それほどショックではなかったけど、当時はケータイが入りにくくて車で少し走って疲れてても、なるべく電話してたのにです。
ある時ライトバンのサンバイザーを下ろすと女の子が勝手に写真を貼ってて、思わずビリビリに破って捨てましたよ。
まあこの鳥取県の現場が非常に印象深くてね。
父の会社が倒産して二つトンネル作業に関わったけど、本格的な大きなトンネルはここが初めてでしたし、帰る家がないと言う状況は初めてだったからでしょうね。
父とおじさんと僕がその会社に入って、おじさんがそこの所長でした。
おじさんは今の僕くらいの当時年齢でした。
四十代後半から五十代の初めですね。
おじさんとその後あちこち行くけど、仕事してて甥っ子として扱われた事は一度もないですね。
周りが見てて何故あんなに高山さんに厳しいの、でした。
僕には言いやすかったのと、ここで今のうちに鍛えてやろうだったのだと思います。
滅多に事務所にも行かなかったけど、鳥取県か静岡県で風俗で性病を貰った時は相談しました。
明日は休んで病院に行け、でした。
全く交流がないことも無くて、時々は僕だから言えるの事をそっと言ってましたけどね。
まあ、鳥取県のトンネルでのある作業員の話しに戻ります。
年齢は四十代後半です。
これは小説サイトでは軽く書きましたがここではリアルに書きますね。
その時の状況は、僕は掘る方を辞めててと言うか、掘るのは一つの班だけになったからもう一つの班は解散したんです。
それで辞めた人も居れば他の現場に回ったり、雑工してた人も居ましたね。
僕はコンクリート打設の班の班長をやれと、食堂で夕御飯食べてたら多少酔った工事長に言われました。
おじさんの下にこの工事長が付いてて、これがダメな奴でしたね。
やれと言われても作業員ならするけどです。
何故なら周りが歳上ばかりだったからです。
年下の僕がやるのはやりにくいからですよ。
それでも僕がコンクリート打設の主任者の免許のようなの持ってたのと、機械に乗れたからやれでした。
もうヘルメットも用意してて、そこの会社は何らかの長になると二本の線をヘルメットに入れるんですよ。
普通は二本の線はトップにしかやらないんですが、珍しい所でした。
そこに名前まで書いてたし、お金も良かったから仕方ないです。
多い時で十人以上は居ましたね。
コンクリート打設とその前のシートを張るのとです。
まあ、この辺りはこのブログにも確か書いてます。
コンクリート班は、四十代から五十代の一番歳上が六十代も居ましたね。
若いのも入れたけど他の部署に回されるんですよね。
体力仕事だから若い人が良いけど、主に東北から人出しで来てました。
うちの会社の直でなくて人夫出しで来てました。
直でないから給料も安いんですね。
派遣社員みたいなもんです。
直で居たのは僕と宮崎のエスさんだけでした。
給料が違って、他の会社から来てるとなるとやはり気を使うんですよね。
僕が二万円以上貰ってるのに、その人達は一万円とか聞くと命令もしにくいです。
僕は自分自身の給料は言わなかったですよ。これは僕らの仕事は、自分自身の給料言うなと言われてます。
他の会社から来てない場合でも、給料に差をつけることも有るんですよね。
出来る人間には一日二千円多いとか有りますからね。
それがバレたら、嫉妬やなんかでややこしいですからね。
エスさんは僕の居た会社からの直属でしたから、僕より少ないけどかなり貰ってました。
だから何か有るとエスさんに相談するけど、まあこの人がボケてるというか緩いんですよ。
機械に乗れたから乗せてたら、実は免許なかったとかね。
免許出せと言われてものらりくらり逃げてると、思ったら最終的になかったとかです。
僕が狭い中でずっと溶接か何かを一人でしてたら、いつの間にか皆帰ってて車だけ残ってたとかね。
車で急いで戻ったらもう皆風呂に入ってるんですよ。
班長は僕ですから僕が帰って良いなら分かるんですけど、僕は何も言ってませんからね。
普通は残ってるだろう、です。
風呂場で聞くとエスさんが帰って良いと言ったです。
僕は、風呂に入って飯も食って部屋で晩酌してたエスさんに言いに行きました。
それとエスさんに、他の連中は給料違うんだから僕とエスさんがしっかりコントロールしないと駄目だろう、です。
それを掘ってる方の作業員が見てて、高山ちゃんと呼びました。
エスさん使いにくいだろうと、エスさんにいくら言っても無駄だぞ、です。
この仕事に向かないよです。
そう言われてもどうしようもないでしょでしたが、確かに向かないタイプでした。
朝飯の時間に食堂に降りたら、どんぶり二杯をゆっくり食べてるんですよ。
ギリギリにマイクロバスに乗り込んで来てました。
どんぶり二杯を食べるなでは無くて、ゆっくり食べるなら他の事を早くしろです。
僕は大抵仕事に行く為のマイクロバスには一番に行って、コーヒー飲みながら乗ってましたよ。
せっかちなと言うか、急ぐ部分や役割によって動く部分を知らなすぎましたね。
エスさんはね。
そうしてたら有る時に、コンクリート打ってたら中の型枠がずれたんですね。
どうしても狭い窓から入らないといけないになりまして、コンクリートポンプを動かしてた若い手伝いに来てた作業員に、一時止めてくれと言いに行きました。
広いし大きいから、俺が笛を吹いたらまた出してくれでした。
この若い雑工をしてたのは、初めてのトンネルを親父さんと来てて非常に良かったですし、僕が機械も色々教えたんです。
だから信用して、狭い窓から僕が入って型枠を直そうとしたらエスさんが入ると言い出したんですよ。
エスさんは僕より小柄でしたから、自分が入った方が良いと言うので入って貰ったんですね。
入って直ぐですね、ドスンと異様な音がしました。
狭いからヘルメット脱いでたんですよ。
上手く下に行かないと数メートル落下しますから気をつけてだったのに、落ちたんですよ。
下はコンクリート来てるし、狭い所から見たら下で横になってました。
声を掛けても動かないしです。
ヤバイなです。
仕方ないから、思いきって他の狭い窓から僕が下まで降りました。
ヘルメットが邪魔でしたが何とか降りて、コンクリートの中を必死にエスさんの所まで行きました。
長靴にコンクリート入るし油も付くしでどろどろですが、とにかくエスさんを助けないとです。
コンクリートの中に倒れてるエスさんをそっと起こすと、軍手に赤い血が沢山付きました。
頭からだなと思ったけど。冷静でしたね。
エスさんに話しかけたら、朦朧と返事が返ってきました。
とにかく皆を呼んでここから出そうと思い、声をあげました。
皆他の事をしてたのと、声がなかなか聞こえないんですよね。
するとコンクリートが流れて来はじめました。
え!?ですよ。
すでに膝くらいまではコンクリートに、はまってしまいました。
笛を吹いてないのに何故コンクリートが来るのかです。
どんどんコンクリートは増えるけど、僕の声は聞こえずです。
仕方ないから笛を吹こうとしたら、コンクリートにまみれてまともに音が出ません。
参ったなです。しばらく、とにかく声を打し続けたら、一人が気付いて驚いて来ましたよ。
コンクリートも止まって皆で少しずつ上げました。
僕はエスさんがコンクリートに浸からないように腕で抱えてましたから、何とか型枠を直して上がった時にはへとへとで、コンクリートでどろどろです。
エスさんは車に乗せて病院です。
僕は、何故コンクリートポンプが勝手に動いたのかで見に行ったら、工場長が呑気にそこに居ました。
若い雑工を呼んで、お前きちんと言ったの、です。
言いましたと言うから、工場長にてめえふざけるな、です。
その場でヘルメットを投げつけました。
そして、一度着替えに戻ると言って戻りました。
エスさんは、確か縫わなくて良くてしばらく休んで出てきました。
エスさんに大変だったんですよと言うと、覚えてないらしくハア、です。
全て、この間の抜けたハアが多くて参りました。
この班はハードで、どんどん辞めて行く人も多かったけど、エスさんは居ましたね。
しかし次の現場に呼ばれる事がないのを知ると、宮崎に戻りました。
その後、宮崎の知り合いから山で木を伐ってて、木の下敷きになってエスさんが亡くなったと聞きました。
エスさんを知る人達は、そりゃあり得るなでしたね。
僕もやってしまったかでした。
焼酎好きでいつもボーッとしてるのも思い出すけど、朝から小柄な体でどんぶり二杯を大きく口を開けて食べる姿を思い出します。
変わった人と言うか、僕らの世界では通用しない人でしたね。
二十年近く経ってもっとハードな事故なんか見てるけど、この人は何故か印象的ですね。
この程度の事故は事故のうちに入らないんですが、何故かこのエスさんは思い出しますよ。
或いは余りにハードな事故は、自分自身の記憶から消したいのかも知れないですね。
この程度の事故は、言い方はおかしいけど消したいのに、話すのには面白いです。
エスさんのその後を考えたら不謹慎ですが、その辺りはご容赦下さい。
様々な人間がトンネル工事にはいるけど、異色だったからかも知れないですね。
書いててエスさんが美味しそうにどんぶり飯を食べるのと、コンクリートと油の匂いを思い出しました。
もう一人、対照的なワイさんを思い出したので書きますね。
鳥取県の後に数ヶ月、短い期間静岡県の小さいトンネルに行きました。
一時的な応援的な感じです。
そこでワイさんと言う五十代前半の人が、エム君と言う二十の男を連れて来ました。
このワイさんも印象的ですね。
トンネル内で作業しててエム君が電線を移動しようとしてたんですが、電線が破れてて危ないから一度ブレーカーを落とせと言ったんです。
しかし、トンネル内は小さいとは言えダンプも通るしで聞こえないんですね。
後ろから行って肩を殴って止めたんですよ。
しかし、相手は北海道の田舎の出身で、何か大きな声で反論するけど興奮してたら更に分からないんですよ。
仕方ないから自分自身で走ってブレーカーを落として、退けという仕草を見せて僕が電線を移動させようとしたんです。
そしたらエム君は若いからかかっと来たようで、僕に殴りかかって来そうになったから頬を思い切り張って外に出ておけ、でした。
電線を移動して破れてる部分を修理して外に出たら、エム君を連れて来てたワイさんが偉そうになんだ、です。
この人も北海道の田舎でした。二人は同郷で、ワイさんがエム君の面倒見てる感じです。
そういうパターンは多いんですよ。田舎から出るけどベテランが若いのを連れて来て面倒見てるってね。
ワイさんはベテランでしたから、言葉も訛りはあったけど分かりました。
僕は違うんだと説明しようとしたら、凄い早いパンチが二発か三発来ましたね。
見えなかったです。
僕の前からの知り合いの九州の連中が気付いて、直ぐに止めに入りました。
しかし、今度は腹の虫が収まらないのは僕ですよ。
ダイナマイトを込める棒が有るんですが、隙をついてそれを持ち出してワイさんを殴りました。
後ろから行ったら一発で倒れなくて前を向かれました。
後から聞くんです、ワイさんは昔ボクシングの日本人ランカーだったらしいです。
どおりで凄い早いパンチなんだですが、その時はこの人何かしてるなです。
こっちも剣道してたから、間合いを上手く取って殴りつけました。
また周りに止められましたけどね。
九州の班長が僕から事情聞いてエム君とワイさんに話して、その日のうちに和解しました。
その日のうちに宿舎で飲み会です。
しかし、飲んだらワイさんは分かるけどエム君は非常に分かりにくいです。
北海道は場所によって非常に分かりやすい所とえ!?ってくらい分かりにくい所がありますね。
ワイさんは仕事も上手くて職歴も長く、実は人格者でした。
しかし、来てしばらくして肺に問題があると分かって、トンネル内の仕事は無理になりました。
いわゆるじん肺ってやつで、長くトンネル仕事してると肺に問題が出るんですよ。
何とか再検査したけど、やはりダメでした。
中に入らず外の雑工をとなったけど・プライドが許さなかったんでしょうね。
残念だけどエムを頼むから、俺は辞めるでした。
二ヶ月も居なかったけど、何度か仕事は見てたから上手いなでした。
僕が駐車場で車を洗ってたか何かをしてたら、大きめのバック一つで出てきてお世話になりましたです。
高山ちゃんは勢い良いなあと笑ってました。
駅まで送りますと言うと、バスが丁度来るから良いよでしたね。
そしてエムはまだ全然ダメだから頼むよ、でした。
バックを持って去っていく姿が、何とも寂しかったですね。
トンネルに向いてる人でしたからね。
ワイさんのようにトンネルに向いてても、どうしようもないことも有りますね。
トンネルに向いてるからこそダメになったのかもですけどね。
エスさんの事を書いて、ふとワイさんを思い出しました。
二人は対照的ですね。
色々な人が居て、一時的でも仲良くなったり上手く行かなかったりってのが僕の業界ですね。
ワイさんの早いパンチと、最後に見たごついけど寂しげな後ろ姿も思い出しましたね。
おわり
高山の作品紹介
次回は随筆「Tさんと沖縄」
「ガーターベルトの女」~映画化のために
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「ガーターベルトの女 外伝」(フィクション編) 1
「新・ガーターベルトの女 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
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