高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【271】
妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
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【随筆】トイレットペーパーと殺伐とした空気
高山の作品から
随筆「映画『キッズ・リターン』と『あの夏、いちばん静かな海。』 雑感」
2017/05/12
このブログも段々と政治と映画に偏りつつあるけど、それは意図して無くてたまたまです。
書きたい情熱で書いてるし、そこそこ読まれてるし、まあ好いかと思います。
映画も新しいのも観てますが、自分自身多分何度か観ないと、納得しないタイプなのかも知れないです。
それと、この時期は鬱とか有る上に時間帯がバラバラだと、なかなか新しいのに入り込めないのもあります。
今回も、北野武映画の初期の二作を書きますね。
やはり、初期の方が見直すと良いですね。
最近の作品が落ちてるとは思わないけど、初期の方に何故ここまで評価されたかが、詰まってるかも知れないし、一人の監督が何作も作ると多少落ちて来るのは仕方ないかもです。
今回は、北野映画でも極力暴力が少なく、初心者が観ても良いって作品二作を挙げます。
それと、キーワードは青春でしょうかね。
もう一つは、北野武がビート武として出てない作品を挙げます。
ビート武の、役者としてのアクの強さを嫌う人が居るのも分かりますからね。
前にもしかしたら、武が出てないと嫌だとか言ったかも知れないけど、人の意見なんて変わるものです。
最初は『キッズ・リターン』です。
これは、青春のヒリヒリした感じを上手く撮ってます。
観てて、あー!そうだったよなあと思いますよ。
思春期の、男の子独特の感じを上手く捉えてますね。
個人的に非常に好きだし、自分自身も小説サイトでこういうのを書きたいなと思わせます。
内容は、二人の男の子が居るんですね。
高校生ですが、落ちこぼれの、不良です。
これを金子賢と安藤政信がやります。
正直二人はその後も活躍してるけど、『キッズ・リターン』を超えた作品はない、と個人的に思いますよ。
この二人は同級生ですが、金子賢の方が親分的です。
安藤政信の方が、金子に付いてるって感じですね。
高校生三年の就職の頃を描いてて、周りの高校生も面白いです。
ある者は漫才師になりたくて、ある者は、喫茶店に勤めてるウェイトレスを真面目に口説いて結婚までします。
ある者は、金子賢と安藤政信の真似をします。
自分自身不良の高校に行ってたから、あー!有るよなって部分がとても有りますね。
金子賢も安藤政信も不良だけど、何処か空しく日々を過ごしてます。
白けてると言うか、目標がないと言うかね。
それでも不良の中では一目置かれてます。
そういう時にかつあげをした相手が、先輩らしき人を連れて来て、金子賢を簡単に叩きのめします。
喧嘩には自信を持ってた金子賢をです。
ボクシングをやってるようです。
ここから物語が動き出します。
金子賢はボクシングジムに通い始めます。
安藤政信も誘います。
金子賢は、特に今まで酒も煙草もやってたのを辞めて熱心にやります。
一方の安藤政信は、金子賢に何となく付き合うって感じです。
偶然そのジムに、金子賢を殴った男も居ます。
こうして、二人のボクシングトレーニングが始まりますが、金子賢は、スパーリングをして安藤政信に負けます。
今まで同級生では有るけど、何処か弟分のように扱ってた安藤政信に負けたのは、金子賢にとってはショックですし、ボクシングの才能は安藤政信の方に有るんですね。
この辺りさらっと描いてるけど、分かるなあです。
今までの上下関係と言うか、何かを壊されてショックを受けるのと、自分自身にボクシングの才能がないって分からせられる感じが、分かりますね。
個人的に自分自身も長い間剣道やってて、いくら努力しても勝てないって人が居ましたし、それは才能なんですね。
僕は辞めませんでしたが、負ける奴には負ける、と諦めが出るようになりましたね。
これは、その後のトンネル屋の仕事してても、あー!才能が有るなあ、って有りますよ。
だけど、仕事なら機械に乗る才能で負けるなら、人を上手く使う才能で勝とうとか出来ますが、勝負の世界は残酷ですよ。
勝てないのには、勝てないんですよね。
小説サイトで書いてても、圧倒的に上手いなあって人が居るけど、それは、それほどコンプレックスになりません。
小説はあらゆるアプローチが出来るけど、勝負の世界はやはり勝てないと駄目だなと昔は思いましたし、今でも自分自身では思いますよ。
話しは逸れましたが、思春期に特別な関係に有る人間からそういう事を知らされる、って辛いですね。
金子賢は、前にラーメン店で会ってたヤクザの子分になります。
この兄貴分をやるのが、石橋凌ですね。
その下に付いてるのが、北野映画でお馴染みの寺島進です。
石橋凌の演技は若干オーバーですが、こういう役は合いますね。
寺島進に関しては、最近はすっかりテレビタレントのようですね。
大杉漣と寺島進は、武の映画でブレイクしたと思いますが、最近の寺島進を観てると普通の役者になったな、と少し残念ですね。
まあ、この頃は尖ってて良いですよ。
一方の安藤政信は、メキメキとボクシングの腕を上げて行きます。
試合でも連戦連勝で、ジムの期待を背負います。
安藤政信は、確かこれがデビュー作品で、相当ボクシングの練習したと聞いてますし、ボクシングシーンは非常にリアルです。
一方の金子賢も色々な抗争があったせいで、一気に組の中で出世します。
金子賢が、子分を連れてボクシングジムに来るシーンは印象的ですね。
子分と、上半身裸になって遊びでスパーリングをするけど、背中には既に刺青が入ってます。
ジムの会長が来て、もう近づかないでくれと言うと、大人しく帰りながらも安藤政信に、お前がチャンピオンになって俺が組長になったら又会おう、とか言います。
この辺りから、順調だった二人に暗雲が立ち込めます。
安藤政信には、モロ師岡の中年ボクサーが色々な悪い事を教えます。
食べても吐けば良いんだ、とか言って一緒に飲みに行ったりですね。
会長はモロ師岡との付き合いを辞めるように言うけど、聞きません。
モロ師岡は、この映画で非常に上手いですね。
屈折した中年ボクサーを好演してますよ。
隠れて煙草を吸ったりまあ、身なりもそういう感じで、味わいさえ有りますね。
しかし、伸び盛りのボクサーに不摂生は駄目ですね。
試合前になっても減量出来ません。
モロ師岡が下剤をくれますが、走っててもしたくなるし、下剤で体重を落とす何てのはボクサーがやっては、動きが悪くなるだけですね。
連戦連勝だった安藤政信が負けます。
完全に相手に圧倒されての負けです。
金子賢の方はヤクザの抗争に巻き込まれて、上手く立ち回れなくて、失脚します。
二人は偶然又会います。
そして、かつての学校にかつてのように、二人乗りして行きます。
安藤政信もボクシングを辞めてます。
二人は、かつての学校の校庭を自転車で走ります。
そこで、安藤政信が金子賢に、俺たちもう終わったのかな?と言うと、金子賢がまだ始まってねえよ、と返します。
爽やかな気持ちさえ残る作品ですし、何より青春の独特な青臭さと、ヒリヒリした気分が伝わります。
もう一つ、個人的に僕の同級生で友人にも、ヤクザになったのが居まして亡くなったのですが、それを思い出します。
正直その男の事は、今でも心の整理がつきませんね。
北野武監督は、男の子に向けて描いてるように思いますが、女の子が観ても一種の映画『スタンド・バイ・ミー』的な感動が有りますね。
男が見たら、あー!そうだよなそうだったよなあ、と思うと思いますよ。
何かしら目標を持ちたいけど、それが何か分からなくて、白けながらも何かを求めるって感じですね。
僕は何度も観てますが、久しぶりに見たら、あー!そうだったよなと共に、今の自分自身に投影しましたね。
あの頃、何かに夢中になりながらも白けててだけど、先には何かしら有ると思ってたなあ、としんみりさえしました。
個人的には、あの頃求めてた物は見事に手からこぼれましたが、良い映画です。
僕は中年ですから、その辺りのリアルな感情も揺さぶられましたよ。
それと北野監督映画の特徴で、女の子が重要な役割をしません。
セックスが、重要な役割をしないって多いですね。
少年のままの心と言うと変ですが、北野監督映画は、ヤクザをやっても少年なんですね。
少年が、大人になってヤクザをやって破滅する、って感じですね。
それと独特な間です。これが時に笑いになったりしますが、これは、北野武の漫才師としての間を上手く利用してるように思います。
お笑いが笑えるか笑えないかは、非常に間が大事ですから、それが北野監督は分かってますね。
それとこの映画は1996年ですが、北野武の例の事故の後の復帰作品です。
これで見事に復帰して来ます。
北野武、或いはビート武って人は凄いなと思うのが、何か起こしてしまったあとの復帰と、生き方ですね。
FRIDAY襲撃の後の、『その男、凶暴につき』でしょう。
そして、あの大きな事故の後の、この傑作です。
もしも、ビート武があのままお笑いに留まってたら、とてもじゃないけどもたなかったのではと思いますよ。
漫才ブームの後少しして、既にお笑い芸人としては落ちてましたからね。
タモリのように『笑っていいとも!』と言う国民的番組は無理だろうし、さんまのような反射神経でやっていくタイプではないですからね。
映画がなかったらどうなってたか、と危ない橋を渡りながらも、ギリギリで自分自身の才能で道を開いて行くってのは凄いなと思います。
切り開くと言うか、引き寄せると言うか、才人ですね。
とにかくヒリヒリしますよ。四十九才の僕が観ても、青春のヒリヒリが伝わりますよ。
非常に良いですから見て欲しいです。
それでは、もう一作を挙げます。
『あの夏、いちばん静かな海。』です。
これは、故淀川長治が絶賛した映画です。
女の子が、珍しく重要な役割をしてますが、やはりセックスとかとは無縁ですよ。
非常に炎々としていて、静かさと切なさとが入り交じる映画です。
1991年の映画で、北野武映画の三作目ですね。
当時は、バイオレンスばかりではないぞ、と見せつけましたね。
見事に、もう一つの才能を見せつけた作品です。
この映画は細かく説明するよりも、概要だけを言いますね。
細かくストーリーを説明しても仕方ないですよね。
ゴミ収集の仕事に励む若者を真木蔵人が演じます。
その恋人を大島弘子が演じますが、大島弘子はこの一作で、何故か芸能界から消えてますね。
二人とも聾唖者です。
二人の交流はあっても、台詞は二人にないです。
それが、この映画を一種の無声映画のようにしてます。
わざとその設定にした、と当時のインタビューで北野監督が言ってたと思います。
それと、これもビート武は出ませんが、出なくてもこれだけの物を作れると言うのを僕は当時感動しましたが、こないだ見直して自分自身の中でそれほど評価を上げてなかったのですが、これも『キッズ・リターン』並みの傑作です。
ゴミ収集車で働く真木蔵人が、偶然先の欠けたサーフボードを拾います。
それに発泡スチロールのような物をくっ付けて、真木蔵人は恋人の大島弘子を連れて、始めてのサーフィンします。
最初は上手く行かないし、ウェットスーツとかもないけど何度も海に入って練習します。
周りのサーファーは笑いながら観てます。
しかし、やはり先を発泡スチロールのような物では取れてしまいます。
二人でサーフィンショップで中古のボードを見るけど、八万円位します。
恋人の大島弘子が、もう少し安くならないかと言うけど無理です。
ゴミ収集の給料が入ると、二人でサーフショップで中古のボードを買います。
この二人の交流は言葉がないし、手話もありません。
ほとんど簡単な動作だけです。
そして二人の間は固く結ばれてるけど、決してベタベタした部分を見せません。
ウェットな愛情表現は無いけど、二人が好きあってるのが伝わります。
その辺りの細かい演出も、上手いなと感心します。
炎々とサーフボードを持って歩く真木蔵人を、大島弘子が付いて歩くってシーンが繰り返し出ます。
この歩くってシーンは、武の初期の映画では繰り返して出ますね。
『その男、凶暴につき』なんて、延々歩いてますからね。
武は独特の歩き方をしますが、真木蔵人は、若者らしく背をきちんと伸ばして歩きます。
徐々にサーフィンの才能を開花させますし、仲間も出来ます。
しかし、聾唖者って事での厳しい所も描かれてます。
ストーリーは、二人とそれを取り巻く人々のひと夏です。
ラストに色々な事が分かりますが、特にそれが重要ではないですね。
重要なのは、二人の若者のラブストーリーをこういう形で、ある意味クールに描いた事でしょう。
クールと言っても、熱いクールですね。
そしてキタノブルーと言われる青を基調とした映像美が、この映画では凄く有効的に使われてると思います。
キスシーンもなければ、もちろんセックスシーンもありません。
若者二人なのに、それを匂わす部分さえ無いですが、ラブストーリーです。
静かで、そして何処か熱いラブストーリーですね。
監督三作目で、こういう風に作ったのは素晴らしいですね。
真木蔵人は。その後『BROTHER』(ブラザー)でも使われますが、こちらが良いですよ。
ファッションなんかも、真木蔵人の趣味でしょうね。
上はトレーナー着て下にTシャツ着てて、それがセンスが良いですね。
真木蔵人はサーフィン上手いの有名ですから、その辺りから上手くファッションも取り入れてますね。
退屈に思う人も要るかも知れないけど、二度三度と観てると北野監督は上手いなあと思いますよ。
やはりこの映画も間なんですね。
『キッズ・リターン』よりも、更に弛い間を取りますが、この辺りが良いと思うか退屈と思うかは個人で別れますが、何故ヨーロッパで受けてアメリカではいまいち受けないかは、この間を理解できるかでしょうね。
余談ですが、北野武の娘がアメリカにいる頃に、日本人なら面白いのが有るぞと言われて薦められたのが、武の映画だったそうです。
二人の、今となっては貴重なインタビューで、娘さんがそれを言ってましたね。
この映画は、北野流の若者のラブストーリーですし、ストーリーを追わずに映像をじっくり見るように出来てます。
ストーリーが悪いので無くて、ストーリーを追わずとも二人と仲間の関係や、二人の関係は分かりやすいです。
今回見てて、意外にも泣きそうになりました。
聾唖者だからでは無くて、二人の純粋な関係を見事に撮ったな、と泣きそうになりましたね。
『キッズ・リターン』が気に入ったら、多分気に入りますよ。
年代はこちらが先ですが『キッズ・リターン』の方から勧めます。
それとこれは私感ですが、久石譲の音楽は、北野映画では前に出過ぎますね。
この映画で初めて使われてますが、北野監督も近作では音楽が余りに的に発言してて鈴木慶一を使ってるけど、それが良いですね。
これも、亡くなった若いクリスチャンの女の子が、久石譲は音楽を本当に愛してるのかと言ってて、この映画を観た時に前に出過ぎてると言ってましたが、確かに出過ぎてますよ。
宮崎駿監督では上手く行ってるけど、北野映画では久石前に出過ぎだよ。と何度か思いました。
僕が考える映画音楽は、映画を引き立てる物だと思います。
坂本龍一はそれに成功してますね。
坂本ファンの僕でも途中で、え!?もしかしたらこれは坂本龍一かな?って調べたら、坂本龍一ですね。
久石譲は久石です!と、出過ぎてますね。
あくまでも個人的意見ですが、北野武が久石譲を外したのは正解ですね。
とにかく『あの夏、いちばん静かな海。』は、ある意味究極のラブストーリーかも知れないし、無声映画のようで有りながら、愛情を描いた傑作です。
実は、凄く映画に厳しかった淀川長治さんが絶賛したのも、分かりますよ。
僕も今回又久しぶりに観て、あー!これは傑作なんだなと思った位だから、もう一度観るのもありだと思いますよ。
おわり
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