高山が作家として更に飛躍することを願い創作活動を支援したい!~エッセイ「ガーターベルトの女」の作品化を目指して【444】
妄想家・夢想家無名居士の夢物語の記録です
無名作家高山のエッセイ「ガーターベルトの女」の映画化芝居化・・・
その他いろいろ作品化できれば
なんて途方もない夢を観ています
📖 高山のエッセイ〜「シン・ゴジラ 雑感
2017/03/25
『シン・ゴジラ』を観ました。
これは去年から話題になってたから、新作でTSUTAYAで一週間で借りました。
一週間で借りると高いけど、二泊三日では仕事で観られなくて返す事も多いから滅多にしませんが、一週間で借りましたね。
そのくらい、どんな映画だろうと期待してました。
これは、世代によってうけるかうけないか分かれますね。
ゴジラ=娯楽と言う世代の四十代後半の僕には、非常に違和感が有りましたね。
しかし、新しいゴジラ像を作ったのと、あれを公開した東宝は偉いのかもです。
ラジオか何かで特技監督と監督をした樋口さんが、東宝があれを受け入れたのは冒険だったと言ってました。
総監督がヱヴァンゲリヲンで有名な庵野さんですね。
ヱヴァンゲリヲン的な部分が随所に出てますね。
僕は、ヱヴァンゲリヲンは嫌いではないです。
熱狂的なファンでは無いけど、テレビシリーズも映画も一応観てます。
テロップの入れ方とかネットとの関係とかや、その他ヱヴァンゲリヲン的ですね。
樋口監督がインタビューで答えてたのを少し聞いたんですが、本当にゴジラが来て恋愛とか友情とか入れられないだろう、です。
大抵ああいう映画でも男女の恋愛とか男の友情とか入るけど、ほとんどそれを排してます。
まあ、そりゃそうなんですけどね。
それとヒットのもう一つの理由は、映画の情報をなるべく公開前に出さない事ですね。
『シン・ゴジラ』は一回しか試写会してなかったらしいです。
普通は、テレビでも良くやってるけど抽選で何名に試写会にご招待とやりますが、この映画は公開まで謎が謎を呼ぶっていう上手い手法使ってますね。
そして、ゴジラを初期に戻して始めてのゴジラ上陸を描いてます。
そこは、良いし最初にえ!?これがゴジラなのってを出して来ます。
着ぐるみのようなゴジラです。
あれには驚きますね。
その後にどんどん変わってくるですけどね。
斬新ですよ。
結論から先に言えば、なんだかんだ言ってもこれは政治的映画ですね。
いかに日本の政治が縦割りで無能かも描いてます。
何かある度に会議会議で、総理に決定権はないんです。
そうしてたら、こういう想定外の事が起きたら何もかも遅れるんですね。
総理になる人、或いは総理になる人の側に優秀な人をきちんと置かないと不味いな、です。
明らかに福島の事故を意識して描いてますよ。
地震と福島原発の事故の時の対応の遅れを、ゴジラに置き換えてますね。
そして、米国との関係も描いてますね。
映画ですから、この辺り最終的に総理の代行が日本は日本の道を行くと決めるけど、実際は米国に押しきられるでしょうね。
それと映画だから、たまたま良い政治家が居て何とかゴジラを倒すけど、実際は無理でしょうね。
福島の時にそれは実証されてて、今もそれが続いてると思います。
悲劇的国になりつつありますね。
この映画がヒットして賞も取って、評価も高いのはどうも納得行かないです。
八十億円を超える興行収入は異例ですね。
まだまだDVDとか売れるから上がりますね。
政治的映画、或いは群像劇として見たら悪くないし、特撮も日本映画のレベルでは相当高いです。
しかし、群像劇とするなら映画の枠内では収まってないなと感じますね。
二時間弱では、収められてないですね。
当然日本の政治家の無能ぶりも描かれます。大袈裟に描かれてるようで実際はもっと酷いのでは、と個人的に思います。
これが、良いとか悪いは別にして、アメリカ映画では大統領は優秀で決定権は持ってると描かれますけどね。
日本を描いた斬新さも良いんですが、僕にはもやもやが晴れませんね。
これは世代間ギャップでしょうね。
ゴジラに、リアリティーを今の人は求めたのかも知れないけど、僕らの世代は、ゴジラにリアリティーより娯楽性を求めます。
それと、これを見てて憂鬱になりましたね。
今の日本の政治家に、自分自身の政治生命或いは命を賭けてもって人はいませんよ。
全ての責任は自分自身が取る、って覚悟の人は居ませんね。
それと判断する能力が総理にしても総理の側近にしても、居ないでしょう。
想定外と言う言葉が何度か使われるけど、想定外の事が今後も起きない保証などないんですよね。
大きな地震が、首都か大都市を襲ったらどうなんでしょうね。
最近はやたらシミュレーションしてるけど、その通りになるとは思えないですよ。
そうなったらまたもや政治家は、想定外とか言うんでしょうか?
今の議員を三分の一減らして、優秀で良い人材をおくべきでしょう。
自分自身の保身しか考えてないような人は、どんどん辞めて欲しい。
ある種の信念をきちんと持って活動してる政治家を選ぶべきです。
美しい国とか言って、福島の事は無かったようにしたい人とかは、早く今のスキャンダルで降りて欲しいですね。
アベ君の目指す美しい国は、戦争前の国でしょう。
中国や韓国にしたことは反省しない国でしょう。
日本人の美徳として、僕はある種の謙虚さが有ると思います。
中国や韓国が言ってきても、今までは謙虚で大人の対応してたのに今はどんどん右寄りになって、中国が来るぞー!!朝鮮が来るぞ~!!と煽ってるように見えます。
昔の絵本で羊飼いの少年が、狼が来たぞ~!!って嘘ばかり言ってたら、本当に来た時には遅かったって感じです。
広島、長崎、そして、福島での事から何も学ぼうとしないようにしてると思います。
僕の子供時代は、戦争体験者や被爆者がまだ沢山いて教えてくれました。
僕は何度か書いてますが、幼少期に広島に住んでたし広島とは縁が深く、被爆者とも仕事をしてます。
それは、リアルで見たり接するとどれだけ悲惨かですよ。
人間ってのは何十年かすると、戦争したくなるように出来てるのでしょうかね。
もしも、ゴジラが本当に来たらアベ君には、是非とも零戦に乗って最初に突っ込んで欲しいです。
ついでに、特攻隊を美化するネトウヨの方々にも是非ともです。
特攻隊行為を美化しなくて、特攻行為をしなくてはいけなかった若者を悼むべきなのにね。
まあ、アベ君に指揮を取られては、日本はゴジラにやられますよ。
副総理の飯塚のチンピラも一緒にお願いします。
『シン・ゴジラ』を見てたら、そういう酷い事を考えてしまいます。
これはブログですから書けますが、今の政権に任せて良いのか、です。
かといって代わりの政権は無いなら、自民党から今は隠れてても反アベ的な人が出てきて良いのではと思います。
『シン・ゴジラ』は、そういう風に考えさせてしまうって事はある意味良いのかも。です。
僕が求めるゴジラとは違うけど、若い人は違う見方をしてるのかもとも思います。
この先苦労するのは僕の世代より、更に若い人ですからね。
今の時代にああいう映画が支持されたのも、若い人の柔らかい頭だからかもですね。
一部に『シン・ゴジラ』からナショナリズムを感じたと言うのが出てたけど、僕はそうは思わなかったです。
波紋を広げたと言う意味では、成功した映画なのかも知れないです。
一部に、熱くなり不適切な発言が有りますが、たまには腹の中を見せても良いでしょう。
僕はアベ君のやり方は大嫌いだし、現政権のやり方には非常に危機感と怒りを覚えてますが、左翼ではありません。
左翼的と言われても別に気にもなりませんけどね。
『シン・ゴジラ』は、僕に予定外のこういう事を書かせたというだけのインパクトはあります。
観て、様々な感想が出て良いのではないでしょうかね。
もう一つ言いますと、四十代後半の映画好きな土方の一つの意見であって、若い人が熱狂するのを否定してる訳では全くないですからね。
おわり
📖無名居士のたわ言・・・音楽でひと遊び〜My Heart Will Go On
勝利の女神・・・ニケ
ああ・・・そうだったのか
映画「タイタニック」の有名なシーン
船の甲板の先端で両腕を広げる姿は
彫刻の女神ニケの姿だったのか・・・
Celine Dion - My Heart Will Go On (タイタニック主題歌)
2013/12/5(木)
強烈な歌だった
彼女の表現者としての
狂気を観た思いがした
凄い歌手だと思った
事あるごとにこの歌を聴く
Blue Angel & Cyndi Lauper - I'm Gonna Be Strong
2013/12/3(火)
📖 高山の作品から〜 「濡れる穴の中7 キヨシ君」
こないだ、ヒロシ君と言う若者を一応研修期間で辞めさせたので、新しい男の子を募集してヒロシ君と同じように採りました。
二十二歳だそうです。
まあ、ヒロシ君が十代でしたから多少違うかなと思いましたね。
僕自身が、今のトンネルの世界に入ったのがほとんど同じ頃です。
女性と違って男の場合は、この時期位に一気に大人になるって多いですよ。
人それぞれですが、男の方が何にしても遅いですね。
新しく来た男をキヨシ君としますね。
身長も平均的で特に筋肉質って感じでは無いですが、普通ですね。
選んだのは他の社員です。
「濡れる女子事務員」シリーズのえり子ちゃんは、今は作業を覚えるので忙しいから任せましたね。
僕もタッチしてないです。
えり子ちゃんを鍛えるのに忙しいし、もう色々有りすぎてタッチ出来ないですよ。
現場が十も動いててその統括責任者ですし、営業もそろそろ動かないといけないですからね。
他の社員が選んだのは、特に問題ないですね。
選び方は、建設関係に近い学校を出てるかと面接ですが、今回は四人程来たらしくその中でベストだったのが、キヨシ君らしいです。
まあ、とにかく使わないと分からないなと言いましたね。
やはり、現場で使ってみないと何とも言えないんですよね。
素人はね。最初は皆素人ですから、慣れるかこの仕事が合うかでしょうね。
トンネル内でダイナマイトを仕掛けて掘削して、ズリ(土)を出して吹き付けコンクリートをやってたらおかしいなとなりました。
掘削したら、支保工と言う鉄の枠を建てるんですね。
それから吹き付けコンクリートをします。
山が悪いと先に吹き付けしますが、今は安定してるから支保工を建ててからです。
ナトム工法になるとロックボルトと言うのを入れますが、山が良い時はロックボルトを新しく直ぐに入れずに、一気に打ったりします。
今は、それですね。
しかし、吹き付けコンクリートが悪いとコンクリートが付着しません。
掘削班の班長と、あれ!?付かないじゃねえかと言ってて、早速持ってきたコンクリートを見ました。
これが悪くないなら、急結剤言うコンクリートを直ぐに付着させる機械が壊れてるか、急結剤が入ってないかです。
急結剤は、常に入れてますからコンクリートを先に見ました。
生コン車から出てるの見ても分からないから、手で触ってみましたね。
柔すぎました。班長に柔いぞと言いました。
坑内に内線電話が有るのでそこまで行って、コンクリートを作るプラントに電話しました。
コンクリートもプラントで自分達で作りますが、大きいトンネルだとバッチャープラントと呼ばれるコンピューター制御のプラントなんですよね。
コンピューターって言っても手動に切り替えられますが、プラントが大きいので、プラントをやってる作業員は分かりにくいんですよ。
電話で言うと、え!?おかしいですねとなりましたね。
設定は変えてないし手動でやりますが、このタイプの手動は分かりにくいと言いました。
確かに分かりにくいタイプのが今回は使われてて、それなら行くからと言ってえり子ちゃんを連れて行きました。
そしたら、キヨシ君と社員も来てましたね。
たまたま、色々な所を見て行る途中でプラントに来てて、トラブルだから社員は、確か手動にするのはと色々いじってましたが、僕がこれは一番知ってたから、僕がやりました。
手動に変えてえり子ちゃんと社員に、下でコンクリートが良いか確認しろと言いました。
プラントやってる作業員には、手動にする手順を教えてましたよ。
キヨシ君はそれをボーッと見てるから、お前も下に行ってコンクリートを見ろよと言いましたね。
そしたら、はい?って感じで言葉が返って来たから、まあ素人だから仕方ないかです。
掘削班の班長も車で来ると、急がないと駄目だぞとなりました。
急がないと崩れる可能性があるようです。
こういう時はトンネル屋は早いです。
下からオーケーですと言ってきたから、生コン車にコンクリートを作ってどんどん入れました。
班長も社員もえり子ちゃんも皆手伝ってて急いで生コン車を出しましたが、直ぐに二台目も作りましたね。
僕は、カブに乗ると坑内の様子を見に行くと戻ってきて、大丈夫のようだとほっとしました。
プラントにまた戻って、プラント作業員に手動を固定して自動に変えるのを教えようとしましたね。
とにかくこういう時は急いでますし、こういう時に俊敏に動けるかは、トンネル屋の大事な所です。
俊敏に動けないと、事故になりますからね。
そうしてプラントに戻ろうと階段を駆け足で上がってたら、キヨシ君が階段の所でボーッとして缶コーヒー飲んでました。
僕は、邪魔だから退けと言うと中に入って、プラント作業員にあれで確実に良いなら固定して自動に戻す方法を教えてました。
それと、手動の方法も再度教えてましたね。
そしたらキヨシ君が、退けって酷く無いですか?と来ました。
プラント作業員はチラッとそちらを見ると、今は忙しいから素人がうろうろするなよと言いましたね。
まあ、当然言われるし、僕に対して良くまあ素人が文句言うなあとも思ったんでしょうね。
僕の気性をプラント作業員は知ってるし、こういう時のトンネル屋のやり方も知ってますからね。
僕は教えるとほっとして、煙草に火をつけて一服しました。
後は、前より良くなってるだろうけど微調整が必要かなです。
プラント作業員が、生コン車が戻る前にと急いで缶コーヒー買いに行きましたよ。
皆に迷惑かけたからでしょうね。
僕は一服しながらも、プラントの中をうろうろしてました。
キヨシ君が、退けって酷く無いですか?とか言ったのは忘れてると言うより、どうでも良かったんですね。
プラント作業員が缶コーヒー持ってきて、僕にもキヨシ君にも渡しましたが、キヨシ君は、素人にはそんな態度なんですかと僕に言って来ました。
僕は笑いながら、急いでてお前なんか相手に出来ないよと言いましたね。
そしたら、キヨシ君が偉そうにと返して来たので、プラント作業員が僕よりカチンと来たようで、お前なあふざけんなよとなりました。
えり子ちゃん達も丁度戻って来て、もう少しだけ硬めでお願いしますと言ってきました。
それでも、まあ付いたようです。
僕はプラント作業員に、後からきちんと若いのには言うから硬めで調整しろと言いました。
えり子ちゃんも社員も、何かしら起こったなって感じてるようでしたが、黙ってました。
僕は、キヨシ君に落ち着いたら呼ぶから事務所に戻れと言って、自分は再びカブで坑内に入りました。
掘削班の班長が、二台目で吹き付けをやってましたね。
班長に、まあ付いてるなあと言いながら、もう少しだけ硬めだなと確認しました。
吹き付けをやってる人間が一番分かりますからね。
僕はまたプラントに戻ると、硬めにしたコンクリートが生コン車に乗って出ようとしてました。
多分、これで大丈夫だなと思いました。
班長にも、まだ悪いなら坑内電話で指示を出せと言いましたからね。
しかし、プラントの中に入るとキヨシ君が残ってて、雰囲気が凄く悪いんですよ。
どうも、あの後もキヨシ君は生意気な発言をしたようです。
そんなにトンネル屋が偉いのか、とか言ったようですね。
後から知りましたけどね。
相当腹が立ったのでしょうが、こっちは危険なのでやってるんですよ。
僕は、プラントでヘルメットを脱ぐとさっきの缶コーヒー飲みながら、キヨシ君にヘルメットの線を見せました。
お前を雇ってるのは俺で、俺は二本の線がヘルメットに有るんだよ。
えり子ちゃんも二本の線があるし、社員も一本の線がある。
それに、プラント作業員はこれだけじゃなくて他の仕事も出来るが、今回はプラントに出て貰ってる、資格も沢山持ってるしお前より年長だから、口の聞き方に注意しろと言いました。
そしたら、女の子はべらかして仕事してるおっさんが、何を偉そうにと言い返して来たので呆れましたが、プラント作業員が首を抑えつけましたね。
これ以上色々言うなら、そこの階段から投げるぞと言いました。
プラント作業員は三十代前半ですが、他の所では掘削班もやってたし、コンクリート班もやってたオールマイティーなんですね。
しかし、うちがレベルが高いのと大型の免許を持ってるからと言うので、今回はプラント作業員なんですよ。
キヨシ君は、まさか暴力が出るとは思ってなかったようです。
その、ビビり方は普通じゃなくて震え始めてましたね。
僕は、プラント作業員に許してやれと言いました。
そして、キヨシ君にはお前みたいなのは何処に行っても通用しないだろうし、生意気なのは良いけど、それならそのくらいの覚悟で来いよと怒鳴りつけました。
怒鳴られるのにも驚いたようで、完全にビビってしまってましたよ。
僕は今日で辞めろと言うと、プラントのドアを開けると急いで逃げるように出て行きましたよ。
キヨシ君を選んだ社員がすいませんと言ってきましたが、ありゃ何処でも無理だろうし、特に建設業は無理だから良いよと答えました。
次をまた探そうと言いましたね。
なかなか良い人材って居ないなとも思うし、今度は少しだけ事務所に居させてトンネルがどういう世界かを、ある程度分からせるかと言いました。
素人を雇う方も初めてですから試行錯誤ですが、色々勉強になりますね。
えり子ちゃんは、あれで高山さんが怒らなかったのは珍しいと言うから、お前なあ俺が何時も怒ってると勘違いするなよと笑いましたね。
それにしても、えり子ちゃんを使うと馬鹿な人間はステオレタイプに、女の子はべらかしてとか言うのには呆れますね。
プラント作業員は、少し自分も暴走してすいませんと言って来ましたが、彼とは数年の付き合いですが暴力を振るうタイプじゃないと思ってたから、これにも笑って良いよと答えました。
まあ、次に良いのが来れば良いなですし、こちらも試行錯誤しないと仕方ないなあですね。
素人を雇うって難しいなと思ってますが、今ではナンバー2のえり子ちゃんも、一年前は素人でしたからね。
まあ、えり子ちゃん基準で他の人間を考えてはいけないですけどね。
次に期待してますね。
おわり
📖「ガーターベルトの女」の映画化のためにエッセイをお読み下さい・・・「ガーターベルトの女 5」
「ガーターベルトの女」シリーズも、後書けてこれを含めてせいぜい三作書けるか二作で終わるかだろうと思う。
或いは、これで終わるかも知れない。
そこは何とも言えない。
二十年以上前の話しは、書いてたら思い出す事も有ればすっかり忘れてる事もある。
Mを美化しすぎかも知れないが、当時のMに愛された男は同じように思ってるのでは、とも思う。
しかし、Mに愛されずに振り回された男はそうは思わないだろう。
Mの気まぐれや、一種のこだわりや自信を嫌った女性も沢山居たと思う。
突出した存在とはそういう物だ、と僕は思う。
それに若い頃は頭の回転が良いと、相手が馬鹿だと許せない場合もあると思う。
そういうMだが、Mの義理のおばさんがやってたお店を任されていたが、二十年前、当時でさえ古臭いスナックだった。
時代は九十年代の半ばだが、地方はまだまだバブルだったと思う。
地方でもスナックやラウンジクラブと言えばきらびやかな店が立ち並ぶ中でもMの店はビルの一階の奥にあり小さな古臭いスナックだった。
カウンターがあって、申し訳程度に一応ボックスがあったが十人も入れば一杯だった。
無理に入れて、会社の連中と作業員を連れて二十人程で貸し切って打ち上げをした事があったが、かなり苦しかったのを思い出す。
それに、Mが積極的な客引きやお店からお客を迎えに行ったり滅多にしなかった為に、Mの店の客層は中年が多かった。
僕と出会った頃、Mはそこの店を任されてそんなに経って無かったと思う。
一年位ではないだろうか。
Mのその前の仕事は何をしていたのかはっきり覚えてないが、県の中心で事務員をやっていたと聞いたように思う。
しかし、Mが隠れてても狭い街の為か徐々に若いお客も増えて行くが、僕が付き合い通ってた時は若いお客の比率はとても低かった。
僕の父の会社の連中は若かったが、それが主になっていた。
僕達は当時は、ほとんど皆仲良く綺麗な飲み方をしたからMから嫌がられはしなかったし、Mが僕の彼女だと皆が知ってたから変なちょっかいも無かった。
Mは、若いお客をどちらかと言えば嫌っていた。
自分を口説きに来る荒い連中を面倒に思っていたから、まだ中年の方がましだと言っていた。
しかし、中年もMの魅力に惹かれて来ていたし、隙あらばと思っていたと思う。
病院の先生がその代表格だったが、もう一人銀行員のAと言うのが来ていた。
年齢は四十代半ばで、何時も綺麗めな格好をしていた。
ラルフローレンが好きなのか、ラルフローレンのポロシャツにスラックスを穿いていた。
当時の少し高級思考のファッションは、ラルフローレンと決まっていた。
少なくとも僕の地方都市では。
僕とMはラルフローレンが嫌いで、その人を呼ぶ時に陰でラルフさんと呼んでいた。
Aは綺麗めな格好をしていたが、小肥りで頭髪もかなり薄くなっていた。
離婚したらしく、子供は居なくてMを狙っていた。
普段は大人しいが、酒が入りすぎると時にMにしつこく迫っていた。
着けていたタグ・ホイヤーの時計をやると言い出して、聞かなかった事もあった。
Mは、仕方なくその時は貰って店に飾って置いたら、次に来て持って帰ったと笑っていた。
普段のMなら質屋に持っていて売っていたかも知れないが、粘着質なAの性格を知っていたから店に置いていた。
それに、タグ・ホイヤーなんて安いから大したお金にならないよ、と笑っていた。
ある日、僕が一人で店に居てMと馬鹿話しで盛り上がってると、Aがすっかり酔っ払い来たことがある。
最初は歌を何曲か歌ってから、Mを口説き始めた。
僕は、次のお客が来たら出ようと思って見ていた。
その時の口説き方は何時もより執拗な感じがしたので、僕はニヤニヤしながら見ていた。
ご飯を食べに行こうから、電話番号を教えてくれから、自宅は何処かまで聞いていたが、Mは適当にあしらっていた。
Aは執拗だが暴力的では無かったし、もう一人僕がお客で居るのを意識してかブレーキもかかっていた。
そのうちどんどん水割りをロックで飲むと、Mにチークダンスを踊ろうと言い出した。
この当時のスナックやラウンジやクラブでは、中年は直ぐにチークダンスを踊ろうと言ったものだ。
チークダンスと言っても、ただ女の子の身体を触りたいだけなのだが、ダンスの苦手な日本人には向いていたのだろう。
特に、フィリピンパブでは女の子の方から誘ってきた為に、僕も何度か経験があった。
今でも僕より十才位上の五十代後半などは、時々踊ろうと言って女の子を困らせている。
僕はMの店が狭い上に、女の子がMしか居ないのに良く言うよな、と呆れて煙草を吸いながら成り行きを見ていた。
Mは、しつこいAに明らかに苛立ちを見せていたが、宥めようとしていた。
僕の方を何度かチラッと見たが、僕はわざと無視した。
Mの普段の気まぐれに、時には振り回されていたからMが困ってるのを見ようと思ったのか知れないし、Aの行動が余りに情けなくて面白く、もう少し見たかったのかも知れない。
今となっては分からないが、早めに助け船を出すのを今回は少し焦らしていた。
Aは無理だと言うMの事など聞かなくて、つのだ☆ひろの『メリー・ジェーン』を入れろと言った。
当時のカラオケは、女の子がレーザーディスクを入れないと駄目だったから、Mは入れないと言い出した。
ちなみに、つのだ☆ひろの『メリージェーン』は、チークダンスの定番的曲でもあった。
執拗な攻防がMとAの間で続いたが、Mがいきなり僕の方を向いて、もしも踊るなら若い人の方が良いに決まってるじゃない、と僕に言った。
僕は吸ってた煙草を落としそうになった。
それを言ってはいけないだろう、と思ったからだ。
するとAは僕の方を向いて、お兄ちゃんは良く来てるけどMと出来てるの?と聞いてきた。
僕は、そんな訳ないじゃない笑いながら誤魔化した。
すると今度は、高校は何処を出てるのかと聞いてきた。
僕は、自分自身の高校をきちんと伝えた。
Aに、蔑むような目付きが現れたのが分かった。
小さな街では、僕の高校は不良の吹き溜まりで馬鹿の集まりと思われて居たから、Aはいかにも銀行員らしく態度を変えた。
仕事は何かと名前は何かと、更に聞いてきた。
僕は面倒になっていたのと、腹が立っていた。
人を高校でそういう風に判断するエセインテリには、つくづくうんざりだったからだ。
僕は、仕事はトンネル堀りで会社名と名前をわざと言った。
Aの態度が、さっきと直ぐに変わった。
会社名と名前を言われたら、Aの銀行ともうちの会社は取引があったし、名字を言われて社長の息子か関係者だと分かったようだ。
そのくらい、当時はうちの会社名は売れていたし、そこの息子か関係者ならヤバイと思ったのだろう。
僕は追い討ちをかけた。
明日、自分自身の預金をAさんの銀行から全て下ろすし、他の社員にもそういう風に伝達しますわ、と言った。
僅かに貯金がある程度だったが、大袈裟に言った。
相手が見下して権力で来るなら、こっちも嘘でも言ってやろう、だった。
珍しく財布を見ると名刺が入ってたからAさんに渡して、よろしくお願いしますと言った。
Aはノックアウトされた上に、リングから放り出されたような感じだった。
Aは、また来ると言うと、僕に非礼を何度も詫びた。
そして明日にでも会社に行きますから預金の件はお願いします、と言い出した。
僕は、詫びるならMちゃんに詫びてチップでも渡したら、と答えた。
Aはそうですね、と敬語になって、Mに釣りは要らないからと言うとMにも何度も頭を下げて、僕にも何度も頭を下げながら逃げるように帰った。
Mは、何事も無かったようにAの席を片付けると、レーザーディスクを勝手に入れて『メリー・ジェーン』を掛けた。
そして、カウンターを手を着いてヒョイと飛び越すと、こちら側に来た。
ミニスカートでカウンターを飛び越す女の子を、初めて僕は見た。
Mは、僕の手を取ると立ってと言って、『セント・オブ・ウーマン』のアル・パチーノのように踊って、といった。
映画『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』は、Mが最近僕に勧められてビデオで見ていて、気に入っていた。
特に、アル・パチーノ扮する盲目の元軍人が、若い女とタンゴを踊るシーンは気に入っていた。
このシーンは、名シーンだった。
Mは、最初にヒールで僕の足を強く踏んだ。
早めに助けようと思ったら出来たでしょう、とクスクス笑いながら言った。
僕は、会社名を出したのは反則だったなと言うと、Mはあの場合は仕方ないでしょ、と笑った。
とにかく足を動かして密着してと、狭いスナックで僕達は、チークダンスなのかタンゴなのか分からない物を踊った。
Mは踊り終わると、あんな風にはなかなか踊れないね、と言いながらも満足した表情を見せて、隣に座った。
僕が、あれはアル・パチーノと相手の女性の役者の名演だよ、と言った。
二人で並んで座っていると欲情して来てキスをしたが、店が空く音がするとMは冷静に立ち上がって、今度はきちんと出入り口からカウンターに入ると、いらっしゃいませと言った。
僕の会社の同僚だった。
来た瞬間に、二人のムードに気づいたのか出直そうかとおどけて言ったが、Mが入って入ってさっき面白い事があったから聞いて、と言って中に入れた。
またもやMは、さっきの話しを面白おかしくして話した。
僕もそれを楽しく聞きながら酒を飲んだが、意外にMから踏まれたのが痛いのに気付いた。
Mの、側に来た時の匂い等はもう思い出せないが、カウンターを飛び越したMは思い出せる。
その日は、ガーターベルトは着けていなかった。
おわり
「ガーターベルトの女」 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 番外編 番外編2 14 15 番外編3
「ガーターベルトの女 外伝」(フィクション編) 1
「新・ガーターベルトの女 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
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