花物語~ フクジュソウ

花の行商をしていたおかあさんから
お花の話を聞いて育った少女は
大きくなって念願のお花屋さんを開きました
少女のもう一つの夢は子どもにお花のお話をすることでした
おかあさんがしてくれたように・・・

2009/1/24(土) 午後 5:40 童話『花物語』 

鉢植えのフクジュソウ
画像提供:「花ねこ日記 」

春色そしていのち色

ある晩のこと
お店が閉まった花屋さんの
小さな明かりの下で
黄色い小さな花が咲いていました
フクジュソウさんです

フクジュソウさんは全身の痛みに耐えていました
初春を演出するために化粧鉢に飾られるフクジュソウさん
きれいに見えるように根を切り詰めるだけ切り詰められます
それは人に例えるなら生死をかけた大手術
でもフクジュソウさんはいつも笑顔を絶やしません

明かりが消され人が誰もいなくなると
花を閉じやっとゆっくり休めるのです
日中の笑顔の緊張から解放されると
じわじわと身体の痛みが増してきます
その痛みに耐えてまた明日は人に笑顔を贈るのです

つらくなったときフクジュソウさんはいつも思い出すことがあります
それは花屋のお姉さんの言葉です
フクジュソウさんほんとうにありがとう
あなたの笑顔があるからみんなお正月をしあわせに迎えられるの
みんな元気になるの今年もがんばろうって思うの

花屋のお姉さんはフクジュソウさんのことを思って人知れず涙していたのです
フクジュソウさんは自分のことを思って涙してくれる人がいたことに感謝しました
そして思ったのです
どんなに痛くてもつらくても笑顔を絶やさないようにしよう
私の笑顔は一番の春色そしていのちの色なのだから

 まぐまぐ!「花を歌うかな」'09/1/23 No.1295

2009年ごろ
まぐまぐ!から発行していた
「花を歌うかな」で発表していたものです
そのメルマガはすでに廃刊しましたが
ブログに保存していたものを再掲しています

藤川一郎
京都市北区紫竹北大門町37 葵荘17号
075-493-4676


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