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孤高のぼっち

ふと、一人暮らしを始めて10年が経っていることに気がついた。
つまり東京に来てから10年経ったということである。大学時代は八王子に住んでいたので、厳密に言えばあそこはほぼ山梨だと思っている自分にとっては東京と言えるのかどうかは怪しいけれど。

家族とは別で暮らしている。年に1回実家に帰れたらいいほうである。
これに関しては、実家に帰ってもほぼ一人で散歩をしているか部屋にこもっているので、こっちにいるほうがむしろ電話越しによく話ができる。

でも30歳を目前にしてパートナーもいる訳ではないので家に帰ればずっと一人だ。
そう、ぼっちなのである。

私には仲のいい3人の戦友とも呼べる女の子の友達がいる。
皆、大学時代の部活で出会った。

私を含めた4人で年に数回家に集まったり、遠くへ出かけたりするくらいの仲だ。
何を隠そう、その4人組のグループの名前が「ぼっち」なのである。

でもぼっちだからといって環境や境遇に文句ばかり言ったりするような人たちではない。むしろ自分の目指すべきところに向かって生きようと高め合う気品溢れるぼっち仲間だ。

だから表記も某ブランドをもじって「VOCCI」なのである。(こんなの本家に見つかったら店に入ろうとした瞬間に背の高いドアマンに一蹴されそうではあるけれど)

そんな私たちは事あるごとにピンチの時には助け合っては、たわいもない話で爆笑をして過ごしてきた。大学時代に出会ったので、こちらも同じく10年の歳月が経った。

昔なら毎日のように会えていたけれど、社会に出てからは場所も離れていたり仕事の関係でなかなか4人揃って会うことは難しくなった。
その上、めでたいことに他の3人には現在素敵なお相手もいらっしゃる。

だから今まで以上に二人での時間を大切にしてほしいと思うと、私も学生の頃のように気軽に連絡も取りにくくもなった。
もちろんそこに対して不満があるとかではないし、昔から全員、自分の未来のことにはひたむきに取り組める人間だったから、むしろ私も頑張らなければと奮起させられる。

ただ、あまりに一人で走り続けてきてしまったからか、最近やけに自分の内にあった寂しがりな部分が露骨に顔を出し始めた。
しかし悲しいかな、自分で律して生きてきてしまったがために、寂しがりやな人間だとは周囲に微塵も思ってもらえない。
気を許せる相手に自分でかなりそれを出したつもりでも、相手には驚くほどほんの少ししか伝わっていなかったりする。

愛する人は沢山いるし、色んな人から愛をいただける瞬間はある。その時は本当に温かい気持ちになる。
けれど、ただでさえ甘えられる存在だって少ない自分なので、家に帰った時に必ず「あ、私ひとりだった」と我に帰る時が訪れるのだ。

一人でしゅんとしてしまった時は、決まってお笑い芸人さんのラジオを聞く。昨日はGERAという芸人さんのラジオアプリで放送されているヤーレンズの「ラジオの虎」を聞いた。

楢原さんが中学時代の英語の教科書でNEW CROWNを使っていたらしいのだが、記憶力が半端ではなくて爆笑してしまった。バンブーソードが出てきた一連の会話の流れとかケニアからの留学生がムカミ・カマウという名前だったとか、そんな事細かなところまでよく覚えていることに大笑いした。

私なんて中学時代の同級生と交わした会話とか、もはや名前すら覚えていない子だっているのに。

その日はヤーレンズのお二人のおかげで笑って乗り越えられた。自分で自分を持ち上げたいときは必ずお笑い芸人さんたちのコンテンツを見ている。
笑えるって本当にありがたいことだ。

今は自分のやりたい事ができているし、自分の人生に楽しいとも思えている。けれど不安も同じくらい付き纏っている。
愛をもって生きていようと自身は普段から思っているし、人にもそうして接するようにしているけれど、自分が誰かからずっと愛されているとは身をもって思えた事がない。

きっと人に裏切られた過去が、迂闊に錯覚させないようにしているのだろうと思う。

いつだって人の言葉に疑ってかかってしまうのは悪い癖だけれど、裏がないかはどうしたって気になって仕方ない。こればかりは一生の課題だ。

これからもきっと一人で強く生きていけてしまうのだろうけど、私だってそばにいてくれる誰かがいればいいなと思う。

これから先のことに「そんな事したら誰かに笑われちゃうかもしれないぞー」とヤーレンズの楢原さんみたいに私が心配していたら、出井さんみたいに「大丈夫でしょ」と言ってくれる人がいるだけで、何倍でも頑張れてしまう気がする。

一人は一人で気が楽だけれど、最近周りを見ていてそんな関係値に密かに憧れる。
心から甘えられるような存在はようやくできたけれど、まだまだ自分を人に晒すのは難しい。

私は一体、この先どんな未来を生きているのだろう。
どちらにせよ人がいようがいなかろうが、ずっと自分の目指すべきところに向かって生きようと高めていける、孤高のぼっちではありたい。


読んでくださりありがとうございます。 少しでも心にゆとりが生まれていたのなら嬉しいです。 より一層表現や創作に励んでいけたらと思っております。