祖母のこと。
先日、祖母が亡くなった。まだ夏の暑さが残る日だった。
ここ数年、コロナで会えておらず、もう何年も前から認知症によって、ほとんど私のことはわかっていなかったが、息をしていない祖母の亡骸をみると涙が止まらなかった。
普段、プライベートなことは、なんとなく書くことが苦手であったが、祖母のことは書いておきたかった。
私の祖母は、歌人だった。著名ではなく、地方の短歌結社に入り、歌会に出て、自費出版の歌集を一冊だけ世に出したありふれた歌人だった。
私自身、短歌は自分で出会って、始めたものではあるが、祖母が元気だったなら、きっと短歌のことを話していたと思う。
祖母との思い出をひとつだけ書き残しておきたい。
まだ小さかった頃、祖父母の家に行くことが好きだった私は、祖父母の家に帰る前に、先に電話をして祖母に食べたいものを伝えていた。
祖父が最寄りの駅に私を迎えにきて、祖父母の家に着くと私が頼んだ料理をいつも祖母は作ってくれていた。
料理上手な祖母は、私がリクエストするものをなんでも作ってくれた。子どもだった私は、好物のカレーなどをよく作って貰っていた覚えがある。
葬儀の前の晩、祖母の歌集を読んだ際、ある短歌を見つけた。
夫婦とは何故かどこかが未然形甘党の夫辛党のわれ
そういえば、辛いのが苦手な祖父に合わせて、カレーライスはあまり辛くなかった。この短歌を読んだ時に、祖母のことを思い出してまた泣いた。
短歌には、大切な思い出を閉じ込められている。祖母の短歌で、先に亡くなった祖父のことも思い出すことが出来た。
向こうで、久しぶりに祖父に会ったら、また祖母は祖父に合わせて辛くないカレーを作るかもしれない。
このnoteを書きながら、また泣いた。さようなら、おばあちゃん。
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