お子さんの字がきたないなと思ったときは
〈綺麗って、曖昧…〉
”うちの子は字がきたない”とか”丁寧に書いてくれない”といったことで、悩んだことはありませんか?もしくは、大人でもコンプレックスを持っている方は多いのではないでしょうか。そこで、字を書くときの”綺麗”とか”丁寧”について、少し考えてみようと思います。
そもそもこういった言葉って、すごく難しいんです。とても抽象的で、曖昧だからです。綺麗な字って、どんな字ですかね?丁寧に書いている状態って、どんな状態ですかね?具体的に説明しようとすると、難しくないですか?その答えを出すのはとても難しいですが、誰でも上達できるように、大人ができることを考えていこうと思います。
〈”評価”ではなく”サポート”を〉
”この文字は綺麗かどうか”という感覚的なことは、ほとんどの人が分かります。しかし、”この文字はどこが不自然で、どうやったらこの子は上達するのか”ということを認識して助言できる人はほとんどいません。つまり、上手いかどうかを”評価”することは比較的簡単ですが、その後の”サポート”はとても難しいということです。
評価とサポートは全くの別物です。評価だけで人が変わることは難しいし、逆に人を苦しめることもあります。評価で終わらず、サポートができるようになりましょう。
〈まずは、”ゆっくり”だけでいい〉
サポートの初期に大事なのは、失敗させない環境を作るということです。そのために、その子が簡単にできることを目標に設定しましょう。他のことが全然できていなかったとしても、設定した目標さえできていれば、しっかりと認めて一緒に喜びましょう。
僕が最初に伝えているのは、たった一つ。”ゆっくり書いてね”ということです。車の運転と一緒で、筆記用具もスピードが早いとコントロールが難しくなります。速書きの状態で形を整えようとしたり難しい筆遣いをしたりしても、上手くいきません。まずは、スピードのコントロールから始めて見てください(ここで言う筆遣いとは、鉛筆の使い方も含みます)。
お子さんによっては、なかなかゆっくり書いてくれない場合もあるでしょう。そういった時は、こんな声がけの段階を使ってみてください。
「頑張って書いているね」(書いていること自体を認める)
→「いいスピードだね」(今のスピードを認める)
→「もしかして、今よりもゆっくり書けたりする?」(選択肢を与えて少し煽る)
→「スピード変えても書けるんだね」(ゆっくり書けたことを認める)
子どもの文字を見ていると、どうしても細かい形のことが目についてしまいますが、そこはグッと我慢して、ゆっくり書けてさえいれば認めてあげましょう。字形が汚くても、間違っていても、持ち方が汚くても、大人がグッと我慢です笑
もし、どうしてもゆっくり書けなかったとしても、それ以上しつこく助言しなくて大丈夫です。あまりしつこいと、文字を書くこと自体が嫌いになってしまいます。焦らず、次の機会にまた声がけしてみてください。
〈形の基準を具体的に伝える〉
僕は、筆使いのことと字形のことを明確に分けて伝えています。そうしないと、何が達成できていて、何が達成できていないのかが分かりにくくなるからです。そもそも、筆使いはとても難しいものです。もちろん、上級者になれば細かい筆使いの技術は必要になりますが、それは言葉で簡単に伝わるような単純なものではありません。まずは、”ゆっくり”。それ以外は、長い時間をかけて自分で獲得していくものだと考えています。長い時間をかけたことの方が、より深く自分の中に蓄積されます。
さて、ある程度ゆっくり書けるようになったら、文字の形の基準を伝えていきます。では、文字の形の基準って、何でしょうか?僕が生徒に伝えている一部を紹介します。
・縦画を真っ直ぐに(垂直)
・横画を右上がりに
・横画を左右対称、もしくは右を少し長く
・縦画が2本あったら右の方が長く
などなど…
視覚は共有しやすく、言葉で明確に伝わることが多いので、具体的な基準をどんどん伝えています。この時に重要なことがあります。
・分かりやすい基準から順番に取り組む
・理解した基準は暗記してもらう
・基準を達成していたら、他のことができていなくても、しっかりと認める
こういった基本的な形の見方を毎回伝えていくと、自分で自分の文字をチェックできるようになっていきます。できたことを一つずつ認めましょう。たとえできなくても、怒らず焦らず。いつかできるようになればいいという穏やかな気持ちでサポートできるといいですね。
〈才能はなくてもトレーニングはできる〉
字形や筆使いにこだわる気持ちというのは、全員が最初から持っているものではありません。でもそれは、文字を整えて書く能力がないという意味ではありません。適切なトレーニングをすれば、時間はかかりますが、誰でも標準的な字形は書けるようになります。そのトレーニングにおいて最初に取り組みやすいのが、スピードを意識したり、具体的な基準を理解して覚えることなのです。
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