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物語り「みんなのたからもの」
1. 森の朝とルルのネックレス
森に朝の光が差し込み、小鳥たちがさえずる中、子うさぎのルルはお気に入りの赤い木の実のネックレスをつけて駆け回っていました。そのネックレスは、お母さんが「森のいのちの実」と呼ぶ特別な木の実で作ったもの。ルルはそれを「世界で一番大事なたからもの」と思っていました。
ところが、ふと気づくと首元が軽いのです。
「あれ? ネックレスがない!」
ルルは草むらや池のほとりを探しましたが、見つかりません。涙がこぼれそうになったそのとき、木の上から声が聞こえました。
「ルル、どうしたの?」
2. 仲間たちの声
それは小鳥のピッピでした。ピッピはルルの涙を見て、枝からひょいと飛び降りてきました。
「ぼくに任せて!空から探してみるよ。」
その声を聞きつけて、リスのチッチとカエルのポコも集まってきました。
「ぼくは木登りが得意だから、高いところを探してみるよ!」
「ぼくは池の中を泳いで探してみる!」
「みんな、本当にありがとう!」
こうして仲間たちは力を合わせてネックレスを探すことになりました。
3. 探しながら見つけたもの
探している途中、仲間たちはそれぞれの「たからもの」を教えてくれました。
ピッピは空をくるくると舞いながら歌います。
「ぼくのたからものは、この歌声。歌うとみんなが笑顔になるんだ。」
ルルはふと気持ちが軽くなるのを感じました。
「ピッピの歌、すごくあったかい気持ちになるよ。」
チッチは木から木へとジャンプしながら言いました。
「ぼくのたからものは、この体の力!高いところから森を見渡すのが大好きなんだ。」
「すごいね!その力があれば、どんな場所でも探せそうだね。」
ポコは水の中から顔を出してにっこりしました。
「ぼくのたからものは泳ぎだよ。水の中はぼくの世界さ!」
「みんな、それぞれ素敵なたからものを持っているんだね。」
4. フクロウのおじいさんの知恵
日が傾き始め、ルルはだんだん不安になってきました。そんなとき、フクロウのおじいさんがひょっこり現れました。
「何を探しているんじゃ?」
ルルが事情を話すと、おじいさんは目を細めて言いました。
「それは困ったのう。でもね、ルル、大事なたからものはいつも近くにあるものじゃ。心を落ち着けて、思い出してごらん。」
おじいさんの言葉を聞いて、ルルは静かに目を閉じました。そして思い出したのです。「あ!あの大きな木の下で遊んでいたかも!」
5. みんなの優しさがたからもの
草むらの中で赤く輝く木の実を見つけたルルは、喜びでいっぱいになりました。
「これだ!私のネックレス!」
ルルは両手でネックレスを握りしめましたが、その目にはうれし涙が浮かんでいました。そして、仲間たちを見つめて言いました。
「みんな、本当にありがとう。私一人だったら、きっと見つけられなかったよ。でもね、ネックレスが見つかったこと以上にうれしいのは…みんなが私のために力を合わせてくれたこと。それが、私にとって一番のたからものだよ。」
ピッピが微笑んで言いました。
「ぼくたちも、ルルのことが大好きだからね!」
チッチも、ポコも、にっこり笑いながら頷きました。
すると、フクロウのおじいさんが静かに語り始めました。
「ルルよ。きみが今感じた気持ち、それが『ほんとうのたからもの』じゃ。物はいつかなくなるかもしれん。だが、心に残る優しさや感謝の気持ちは、ずっと輝き続ける。たからものとは、そういうものじゃよ。」
ルルはおじいさんの言葉を心に刻むように頷きました。
6. 星の下での約束
その夜、仲間たちは森の広場に集まりました。ルルはネックレスの木の実を一つずつ分けて、新しいネックレスを作りました。そして、それをみんなにプレゼントしました。
「これは、みんなのたからものの証だよ。このネックレスを見るたびに、私たちが一緒に力を合わせたことを思い出してね。」
仲間たちはネックレスを大事そうに受け取りました。そして星空を見上げながら、ピッピが言いました。
「この星たちみたいに、ぼくたちのたからものもずっと輝き続けるね。」
チッチが小さな声でつぶやきました。
「ぼくらが助け合えば、もっと素敵な森にできるよね。」
ポコが元気よく叫びました。
「これからも、みんなで何でも乗り越えよう!」
ルルはみんなの顔を見渡しながら言いました。
「私たちのたからものは、ずっとずっと一緒だよ。」
夜空に流れ星が一筋流れました。仲間たちはその光を見て、それぞれが心の中で静かに願いました。
「この友情が、いつまでも続きますように。」