アジアに向けてどんな進化するエディットを行うか(その2)/一日一微発見466
香港アートブックフェアBOOKEDは、規模的には、TABF(東京アートブックフェア)の1/3ぐらいだけれど、東京でアジアのことを考えるよりも、香港や(そしてソウル台北、シンガポール)に軸足を移した方が編集の「速度」「深度」「開放度)が肌身に感じられる。
僕にとっては移動すること(旅と言ってもよい)は、思考や実践のスタイルであり、戦略的な編集のトレーニングなのだ。
僕は90年代に、フィリピンのマニラのストリートチルドレンの取材(写真は大森克巳君)に行った時に、1冊だけもって行った本は、なぜかヘンリー・ミラーの『北回帰線』という選択だった。
その本は日々、手垢や汗でよごれて行った。旅先で発見し、考えたことが、ページの欄外にポールペンで「上書き」されて、本なのかノートなのかよくわからない、コラージュ状態になった。
これも僕にとっては、軸足をずらす編集であり、この書きこみだらけの『北回帰線』は、一冊しかない僕の「編集物」なったのだ。
いつも本棚のわかりやすい場所に出してある。
まあ、そんな感じで、編集とはつねに仮定であり、予知であり、思考実験である。実践あるのみ。
この開放系の「やり口」を僕は、有効な「進化する編集」の実装だと思うのだ。コミュニケーション、いやエクスチェンジとは、「さらすこと」「交わること」「笑いあうこと」だろう。
今回、僕が香港用にトランクに入れて持ってきたのは15アイテム。NEOTOKYOZINEは、進化した編集・出版システムである。だから、そのシステム自体のプレゼンでもある。
香港を想定して昨年からラインナップを用意してきた。最新作はグローバルに注目を集めるAIアーティスト草野絵美の初作品集、エコロジカルで環境問題をあつかう林田真季の初の作品集もある。昨年から用意している磯部昭子のハイパーファッションフォト、NETアートで注目を集めるたかくらかずき、写真と絵画を横断する岡田佑里奈などなど。ファッションフォトの鈴木親の「新東京」や、広告写真の名手・佐藤ヒデキが35年前に取り続けた「大阪」の残景写真もある。
どのアーティストのアイテムもアジアでの知名度はないに等しい。タイトル以外に、言語的に理解につながる「指標」はない。
ここから先は
¥ 200
応援よろしくね~