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マイケル・ホッペン篇『Finders Keepers 20 YEARS: A DEALER'S COLLECTION』/目は旅をする090(魅力)

マイケル・ホッペン篇『Finders Keepers 20 YEARS: A DEALER'S COLLECTION』(GUIDING LIGHT刊)

僕は写真に取り憑かれている人間だが、他にも取り憑かれている人を見つけるのは嬉しいものだ。他には味わえない、深い友情のようなものが湧いてくる。
この本は、ロンドンの写真ギャラリーを主宰するマイケル・ホッペンが2012年に、自身のギャラリー開廊20周年にあたって刊行した750部限定の写真集である。今年の夏(2024年)に、京都で会食した時に、プレゼントしてくれたのだ。そのページを繰って愉快な気持ちだ。

「finders keepers」とは、不思議なタイトルである。「落とし物は拾い得」という意味のイギリスの諺らしい。拾ったら得だが、落として失くしたら泣きをみるという逆説でもある。

コレクションに対するマイケルの気持ちがよく現れている。

続いて、冒頭に1940年にベンヤミンが書いた言葉が引用されている。

「おそらく、収集家の最も深く隠された動機は、このように説明できるでしょう。収集家は、散逸に対する闘いに挑みます。偉大な収集家は、最初から、世の中の物が散らばっている混乱と散乱に衝撃を受けます。(...) 収集家は、一緒に属しているものをまとめます。それらの類似性と時間的な連続性を念頭に置くことで、最終的に自分の対象物に関する情報を提供することができるのです。(...) 収集家に関する限り、彼のコレクションは決して完全ではありません。なぜなら、1 つでも欠けているものを発見すると、収集したものはすべてパッチワークのままだからです」


ベンヤミンはコレクションという物欲を哲学のレベルに引き上げた。ブルース・チャトウィンもそうだった。それは世界と愛についての妄執を生きることの肯定である。

ホッペンの序章のテキストが続く。 

彼は謙虚に自らは「常にディーラーであり、正式にコレクターになったことは一度もない」し、重要な作品は顧客のもとへ旅立っていったから、誇れるようなものはないのだと書く。

ならば、ここに残されてエディットされた写真は、逆説的に、彼の写真への真心をさらした告白ということではないか。

彼は写真愛という秘密を開示する。
それはホッペンにとって、「子供の頃から私を魅了してきた写真への情熱」と向き合うことを意味する。数々の「小さく、時には無名の、宝石のようなイメージ」への情熱。

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