僕にとって世界一の美術館 台北の故宮博物院/一日一微発見418
割引あり
僕は台湾の故宮博物院が好きだ。
世界を旅するようになって、まず、ロンドンの大英博物館やNYのメトロポリタンのような「大」博物館に行った時に、感動はしたが、振り返ると、そこに集められているものは、悪い言い方をすると世界中から簒奪してきたものばかりの陳列であった。
たしかにアートヒストリーは西欧中心的に発達したわけだが、その背景には植民地主義的なアシンメトリーがあることは事実である。
エジプトもメソポタミアも、古代の高度な文明は解体されて、西洋史の一部に再編されてしまった。博物館はその政治性と出会い場だ。
アジアにおいてもそれは同じ。しかし、中国の歴史的な文物の逸品は、蒋介石が持ち出したため、不幸中の幸いで、台湾の故宮博物院に保存されることになった。
大中華帝国の宝が、小さな「国」に保管された。これは歴史の皮肉としかいいようがない。
中国は帝国の歴史である。その衰亡をたどることは西洋とは別の「大文字の歴史」をたどるようなものだ。おまけに複雑さがある。
漢民族が一貫して帝国を支配したわけではなく、北方の国、モンゴルや満州族がたくみに漢民族をコントロールして王朝を築いてきたし、また征服王朝は、前王朝の文化を吸収して発展させてきた。
アジアの他の国がそうであったように、日本にとって中国は、近代にいたるまで、つねに先進国であり続けた。
しかし中華大帝国に対して日本は、それを範としつつも、巧みに全く別の、禅の無や自然を身体化したユニークな文化を創出してみせた。
日本の幸福は、その2000年におよぶ歴史の中で中国に占領支配されなかったことにある。それ故に、中国とは異なる原理による独自の文化を形成できたのだ。
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