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篠山紀信『YUKIO MISHIMA THE DEATH OF A MAN OTOKO NO SHI』『OTOKO NO SHI』/目は旅をする025(人間の秘密)

篠山紀信『YUKIO MISHIMA THE DEATH OF A MAN OTOKO NO SHI』
RIZZOLI 刊

篠山紀信『OTOKO NO SHI』
CCCアートラボ刊

2020年末に、打ち合わせのために訪れた篠山事務所には巨大な写真集が置かれ、異様なオーラを放っていた。
それは、秋にアメリカの出版社RIZZOLIから出た写真集『YUKIO MISHIMA THE DEATH OF A MAN OTOKO NO SHI』の別ヴァージョン、日本のCCCアートラボから出版されたものであった。

両方とも同じ写真を収録していたが、大きい方は日本だけのスペシャル版で、横尾忠則のアートワークが加えられた限定版の「アートブック」である。

これらの写真集は、本来ならば1970年に出版されるはずだった。当時、澁澤龍彦が編集長をしていた雑誌『血と薔薇』の発行元、天声出版から刊行の予定で、『男の死』というタイトルも決まっていた。発売予告の広告さえ掲載されていたのである。

篠山紀信はある日、三島由紀夫から連絡をもらう。
写真集を作りたいから、撮影してくれという。三島が自ら、様々な男が死ぬ場面を演じるので、それを撮れというのだ。撮影は1970年の9月から11月に行われた。
ところが大変な事件が起こった。


11月25日、三島由紀夫と楯の会のメンバーが自衛隊市谷駐屯地への乱入し、三島は切腹・自害する。そして、事件があまりにも凄惨を帯びるがゆえに、それらの写真は封印され幻となる。

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