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移動する植物・川島昭夫さんの『植物園の世紀』を読む/一日一微発見474

割引あり

ジル・クレマンの本『第三号宣言』を注文する時にふとサイトを見ると、川島昭夫さんの本が出版されているのに気づいた。しかし、しらべてみると川島さんは2020年になくなっていることを知り、さらに驚いた。

川島さんは長く京都大学の教授をつとめられたが、僕が知ったのは、彼がまだ京大の学生だった頃である。高校の時の同級生で友人の、横山茂雄(京都大学で学び、その後、奈良子女子大学の教授を長くつとめた)らといっしょに、70年代に京都で幻想文学のリトルマガジン『ソムニウム」をやっている時だった。僕は編集・発行人だった。
川島さんは大学院生だったのだろうか。横山の先輩だった。その時に横山を通して彼に寄稿してもらったのだ。

川島さんは、はその後、神戸外語大の先生をしていて、僕の工作舎時代に、ゴドウィンの『キルヒャーの世界図鑑』を出すことになった時に、翻訳をおねがいした縁があった(僕が編集したわけではなく、川島さんを推薦しただけだが)。この本はロングセラーとなり、今も読み継がれ、現役なのは嬉しい。

『ソムニウム』の頃には、横山のまわりにはひとくせある。超優秀な京大の若手研究者たちが集っていた。『ソムニウム』はそのエネルギーでつくられていたのだ。

さて、キルヒャーとはアタナシウス・キルヒャーのことでドイツ出身、17世紀のイエズス会の司祭だったが、博覧強記であり、「驚異博物館」をつくっていた人物である。
オカルト研究者のジョセリン・ゴドウィンによる本で、その中に納められた珍奇な図版の数々は今も魅力的だ。

とにかく「ソムニウム』の周辺には、澁澤龍彦などの奇想の遺伝子をひきついだ才能たちがいて、それらはある種の確信犯的な異端の人たちであったが、その後、各自がみごとに成長した。

川島さんとは僕が東京に出てからは没交渉だったが、彼がその後、植物をモチーフに独自の西洋文化史を深く研究していたことを知り実に嬉しく思った。

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