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坂本龍一と福岡伸一の対談集『 音楽と生命』を読みおえて/一日一微発見362

坂本さんが亡くなって一ヶ月ぐらいたった。
病気ということもあり、この数年は御連絡をひかえていて、治癒されることを遠くから祈るばかりだったが、いざ亡くなると呆然として、どうしてよいかわからなかった。

何かメッセージを発したり、誰かと坂本さんの死について語りあったりはもってのほかの気分で、原稿依頼も、ことごとく断った。

前から公言していることだが、僕は大切な人は、僕が死なないかぎりは、僕の中で生きているので、生きていることになっている。
だから、坂本さんは生きている。

僕の師匠の詩人・田村隆一は、つねづね「死よ傲るなかれ」と言っていた。死におびやかされて生きたくはないのである。

坂本さんとはつきあいは長く、『skmt』や『LIFE』のプロジェクトなど、随分ごいっしょさせていただいた。それには、本当に感謝しかない。だから思い出すことが多すぎて気持ちはまるで整理されない。
時間がかかるな、と思う。

坂本さんの最後のメッセージに「芸術は長く、人生は短い」というのがあった。
このコトバは作家・石川淳がどこかのエッセイに引いているのを読んだことがあったので前から気になるコトバだった。

しかし、このコトバを聞いた時に、坂本さんらしくないなとも思った。なぜなら、「人生は短い」のはあたりまえで「いのちに終わりはない」と言うべきじゃないかと思ったからだ。

そうやって、とりとめもなく、ぼんやりと坂本さんの音楽を聴きながら日々を過ごしていたら、坂本さんと福岡伸一さんが対話している『音楽と生命』が3月末に発売されているのに気づいた。

発行の日を調べたら、ちょうど坂本さんが亡くなる日あたりで、ひょっとしたら、この本が坂本さんが生前に見届けた最後の本かもな、と思う。

すぐに買って読むことにした。
それは僕にとって大切な、喪の作業となった。

僕はTVを持たないので、活字になってこの2人の対談をはじめて知った。
そして読了して、あまりの素晴らしさに、何か書いておきたくなったのである。

僕がいいたいことを先に言えば、とにかく皆んなこの本を読むべきだ、ということにつきる。

ここには、福岡伸一さんという抜群の知性を相手にして、坂本さんがたどりついていた境地や思考が少ないコトバながら見事に語られている。

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