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ダグ・エイケン『Doug Aitken』/目は旅をする023(アナザーワールド)

ダグ・エイケン『Doug Aitken』
PHAIDON Press刊

僕はダグ・エイケンのことを、「エディット」における最重要人物の一人だと思っている。
僕は編集者として編集のアップデートについて考えてきたほうだと思うが、ダグ・エイケンから「学ぶ」ことはあまりに大きい、と思っていることを初めに告白しておきたい。彼は、僕が知るどの編集者、アーティストより、未来に触っている。

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彼の活動を振り返ると、1990年代に始まり、現在に至るまで実に精力的だ。活動範囲は、シングル&マルチチャンネルのビデオ作品、写真、立体、建築物、サウンド、ライブパフォーマンスにまで及び、彼のアートを一口では語るのは難しい。

ここにあげるダグ・エイケンの本は、PHAIDON Pressのシリーズ「Contemporary Artist」の一冊。

2001年に出版されたもので彼自身がその後エディットした数々の「作品」集ではない。しかし、このシリーズは新世紀に向けて出された野心的なもので、オラファーやタイマンスなど重要な作家がセレクトされていて、刊行から20年たった今でも、コンテンポラリーアートの重要な基本図書だと思う。

したがって、ここに収められた作品もインタビューもテキストも、基本的に90年代のものだ。

当然のこと、近作の「STATION TO STATION」や海中のパビリオン作品などのダグ・エイケンの重要作は全く入っていない。

僕が彼の作品を東京オペラシティギャラリーの個展で観て圧倒されたのは2002年で、それ以降、彼の作品を追いかけ、インタビューをする機会も得たが、振り返ってみても、この本は彼の初期衝動が凝縮されていると思われる。

さてこの本には、1991年に雑誌『frieze』をマシュー・ スロトヴァーとたちあげたアマンダ・シャープによるダグへのロングインタビューが収録されている。

2人とも互いにアップライジングなタイミングに当たっていて、対話はスリリングだ。ダグのアートを果敢に規定しようとするアマンダに対してダグは一貫して「答え」を単純化することを拒否する。
「認識が変化するこの時代に、僕たちはコミュニケーションのための新しいオプションを作成する責任がある。 構造的に、僕は代替案を探している」
というのである。

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