川島崇志『描きかけの地誌/蒐集 unfinished topography / collection』/目は旅をする030(カタストロフから写真ははじまる)
川島崇志『描きかけの地誌/蒐集 unfinished topography / collection』
アートビートパブリッシャーズ刊
311から10年。まさかのコロナの最中に川島崇志の写真について再考している(もう1人は赤石隆明だ)。
僕は、東日本大震災に、遅ればせながらたどり着いて撮影した「ドキュメンタリー」志向の作家をあまり評価しない。「事後」であることを乗り越えようとする者にこそ僕は興味を持つ。
川島崇志は、明確に「3.11 東日本大震災以後」に刻印されたフォトアーティストだと思う。
彼の実質的なデビュー作と言うべき『新しい岸、女めぐる断片」は、 彼の故郷である東北・宮城の浜辺に津波によりうち上げられていたアルバムに収められた、女性を写した写真から始まった。
カタストロフはすでに起こってしまった。
その「事後」の不条理世界を目の前にして、何を撮るべきかまるで見えないまま、さ迷い歩く川島が出逢ったのは、海水とヘドロにより侵食され、破壊されたポートレート写真だった。
彼の写真は明らかにカタストロフから始まったのだ。
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