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びこりと夏祭り(無編集版)

びこり「パパー!早く早くー!」

俺「びこりー、一人で先に行っちゃ迷子になるぞー!手をつなご!」

コロナ禍がようやく収まりつつある2086年。世間は落ち着きを取り戻し、密な日常を過ごせるようになってきた。
7歳のびこりにとって、これが初めてのお祭りになる。

びこり「ねぇパパ!お祭りってすごいね!VRでしか見たことなかったけど、こんなにふわふわやキラキラやいい匂いがいっぱいなんだね!」

俺「そうだろう?パパも非合法の闇お祭りにしか行ったことがないからなぁ。こんな大きさのは初めてだよ。それにしてもいい匂いだね。びこり、お腹空かないか?」

イカ焼き、焼き鳥、たこ焼き、焼きそば、ケバブ、りんご飴、冷やしパイン。数々の屋台の匂いは混ざり合ってなお、それぞれを端から食してみたい圧倒的な魅力を鼻に押し付けてくる。

びこり「びこりお腹すいた~!あ、あれ食べたい!しょう・・・?」

俺「お!小籠包か・・!屋台で!良いぞびこり、望むところだ!!オヤジ!小籠包を2個くれ!」

オヤジ「毎度~!」

びこり「美味しそう~!」

俺「やけどしないように気をつけるんだぞ」

びこり「うん!ふぅ~ふぅ~・・あちち」

俺「あぁダメダメ!まずはレンゲの上に乗せて破いて中のスープを飲むんだよ」

びこり「うるせー!レンゲねーじゃねーか!」

びこりが放ったローキックは、俺の膝を的確に打ち抜く。声も出せずうずくまる俺。
びこりは、すかさず俺の浴衣の胸元に小籠包を投げ込み、外から手で押しつぶした。

俺「アツゥイ!パパのママにもこんなことされたことないのに!!あ!びこりどこに行くんだ戻りなさい!」

びこりは、振り向きもせず走って行った。
焦る。焦る。
俺は取るものも取らず、浴衣の上半身をはだけたギース・ハワードスタイルでびこりを追う。

びこりを見失って10数分が経った。胸騒ぎがする。遠くで祭ばやし。喧騒。
喧騒だ。人だかりが出来ている。なんだろう。いや、それよりもびこりだ。

A「クマ耳の女の子が猟YOU会の若い衆と乱闘してるらしい」
B「まじかよ。止めたほうがよくね?」

まずい。びこりだ。このままじゃびこりのあの力が目覚めてしまう。止めなくては。
人だかりをかき分け、びこりが目に入ったときには、すでに3人のチンピラが地に伏せていた。

C「ほう、大したものですね。あの歳で四門を開くとは」
D「オイオイオイ。死ぬわあいつ」
C「四門は死門。開いたときには、術者か受者どちらかが必ず死ぬ」

しまった!間に合わなかった!
4人に分身したびこりは、4人目のチンピラの前後左右を取り囲み
次の瞬間、消えた。首がねじ切れるチンピラ。
飼い主を失った体が膝をつき、上がる血しぶきが乱闘の終わりを告げた

俺「何やってるんだトシ子!(頭脳プレー)」
びこり「あ!パパ見て!やったよ!キルリーダーだよ!てかトシ子って誰だよ!」

びこりのローキックが再び俺の膝を襲う。
俺「ぐぅ~~!君アーネスト・ホースト?」

警官「こらー!そこで何をやっとるかー!!」

びこり「やべえポリだ!」
俺「こら!トシ子!口が悪いぞ!」

俺はパパだ。娘を守らなければ。
膝の痛みを無視し、びこりを小脇に抱え走り出す。

警官「被害者4名!容疑者は逃亡!応援をお願いします!容疑者はトシ子とギース・ハワード!繰り返します・・・被害sh・・・」


警官の声を置き去りに
逃亡の日々が始まった。


祭りだ祭りだ!ワッショイワッショイ!
そーれそれそれ!ワッショイワッショイ!
ベネズエラでコーヒー作って生きるんだ!

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