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トンネルを進むしかない

「仕事をしていて、自信がないな、と思う瞬間はありますか?」と聞かれた。

インタビューに関しては、あまりないと思った。さすがにもう500人も話を聞いてきているので、どんな人からも記事にできるだけの話を聞ける自信はある。

じゃあ書くことに関しては、というと、どんな人の話でも記事にできることはわかってる。わかってるけど、「自信がない」瞬間はあるなと思った。

それは、ほぼ完成してる状態で最後の調整に入ったとき。

何回見直しているか、と聞かれると、わからない。たぶん何十回、何百回と見直していると思う。

最初はたくさん修正点が見つかるんだけど、だんだん発見できる修正点が減ってきて、それはなかなかゼロにならない。本当に、なかなか。

もう、ほぼ完成してるしこれで出して問題ないことはわかってるけど、少しでも引っかかるのがすごく嫌で、どうしても完全に滑らかにしたい。だから終わらない。

最後のステージに向かえば向かうほど集中力が高まって、だけど見つかる修正点も減っていって、だからもっと集中して……という【過酷&疲弊モード】に突入する。

それは、どんどん穴が小さくなる暗いトンネルの中を、体を縮めながら進んでいくイメージ。その最後の2時間ぐらいが本当にしんどい。なんでこんなトンネルを進んでるんだっけ。なんでこんなに辛いんだっけ? なんで生きてるんだっけ? ──そんな声が頭の中にこだまする。

でも、そのあまりに過酷なトンネルを抜けた先に、

「よし、これで出そう!」

と思える瞬間が必ず訪れる。提出。久しぶりに立ち上がる。フラフラ台所に行って水を飲む。ああ、喉乾いてたんだなって思う。

楽な原稿なんて本当に一つもない。全部辛い。全部苦しい。でも、全部完璧にしたい。だって、命を削って書いてるから。

命削ってその程度かよ

と思われたくない。だから命を削るしかない。私は、トンネルに入るしかない。

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