辿り着いた未来
それは本当に始めての謝罪でした。
夫は普段泣く事は殆どなく7年間一緒にいた中で泣いた事など見た事ありませんでした。それがポロポロ泣きながら私に謝罪をしてました。
『ああ、やっと罪の重さを理解して受け止める事が出来たんだな』そう思ううと私も涙が出てきました。
長かった、本当に長かった。
ずっとこの時を夢見て耐えて戦ってきた。
前日の夫は突然起きた現実についていけてない印象でした。だから謝罪がないんだと分かってました。それをやっと自分から謝ってくれた。その事実がとても嬉しく思えました。
離婚宣告されて不倫を知って、まるで私が今まで生きて来た世界と自分が断絶してしまった様な感覚。それまで当たり前に色づいてた世界が一瞬でモノクロになり自分だけが世界からはじき出された様な感覚。ずっとその中でどれだけ酷い事を言われ様がされ様がずっと耐えてきました。それがやっと報われた様な瞬間でもありました。
その後起きてからもずっと夫は私に話しかけてきました。
物凄く辛そうな夫。まぁ彼の胸中を思えば今一番辛いでしょう。私はずっと辛かったけどね、とは言わないでおきましたが。
彼はこの時私に対してもそうだし、相手女性に対しても罪悪感でいっぱいでした。
「俺はもう相手に対して何もできない、それが辛い」
「自分が巻き込んだんだ。俺の所為だ。」
「きっと今彼女もとても苦しんでる。でも何も出来ない。全部俺が悪いのに」
それも含めて不倫の業なのだと私は思います。こうなってしまっては彼からは何も出来ません。してはいけません。それに対し逃げるのではなく、背負い苦しむ事が贖罪だとも思います。そんな簡単な事ではないけれど。
決戦から一夜明けて夫はそんな感じで一日中ボロボロ泣いてました。
相手女性に対して罪悪感があるのは当然です。自分から誘ってこの関係になったのですから。それは理解してあげます。むしろここで罪悪感をもってくれなければ困ります。それはもう人として終わってる事になりますから。
ようやく少し時間が経って自分の罪と、現実と事実を理解し向き合い始めてる様にも見えました。
前日は「俺が悪いのか」とか言っていた夫ですが、ここに来て急激に態度が変わり始めました。前日までは再構築へ向けて前向きな言葉は何一つ聞けませんでした。(なんならもう幸せになれないね、とまで言っていたし)でもこの日は凄く私との人生に前向きな言葉をかけてくれました。
「やり直したい」そんな風に言われた訳ではないですが、今後自分がどう生きてどういう人生を送るか、そう考えてた時に彼の中で自分の隣には私がいる、という考えなのが分かりました。
そして、ふと夫が「目薬がないから買いに行きたい」というので「買って来ようか?」というと
「一緒に行こう」って
夫が私と外を一緒に歩く
そんな小さな事だけどずっと私はそれも夢見てました。そんな小さな事が出来なくなっていたから。それを夫から一緒に行こう、って言ってくれたのは本当に嬉しかったんです。そして一緒に並んで歩いていた時、夫は私を見てこう言いました。
「本当に凄い痩せたね・・・全然違う」
私は2か月で10キロ痩せました。それを近くにいたはずの夫は全く見てなかった。私はずっと自分の事を見て欲しかった。向き合ってちゃんと現実を見て私から逃げずに向き合って欲しかった。不倫を知る前から私はずっとそう言ってました。「とにかく私と向き合って欲しい」それだけでした。
それがようやく夫は私を見てくれた
本当にやっとやっと・・・
私は思わず「やっと見てくれたね」と夫に言いました。
本当に本当に嬉しかったんです。やっと私の事をちゃんと見て、向き合おうとしてくれた事が。私は一番にこれを望んでいたのだから。たかだか薬局に行くまでの数十分だったけれど、私にとっても幸せな時間でもありました。
夫はその後自分から「新居を引き払う」「携帯電話に監視アプリ入れる」「携帯のパスワードを開示する」と言ってくれました。正直ここまで自分から言ってくるとは思ってなかったので私は驚きました。
前日と打って変わった夫の態度。その理由として
「本当に昨日一日俺辛くて辛くて絶望感しかなくて・・・もう彼女とは会えないんだ、終わりんだって思いが強かったんだけど・・・時間が少し経つにつれてこんな辛い想いの何倍も辛い想いを何か月もichikoは耐えて来たのかって思ったら・・・本当に申し訳なくて・・・俺はたった一日でこんなにダメなのにこれ以上のモノを何か月も耐えて抱えてたichikoに尊敬しかない。俺には絶対出来ない」
だそうです。
夫いわくある種の「ショック療法」の様なものだったと後日言ってました。『自分が大きくショックを受ける事で相手の傷がそれ以上のモノである、という事をようやく認識した。本当に俺は理性が無かった。最初は軽い気持ちで遊びのつもりで始めた。最初はそんなに会う頻度も高くなくて、11月頃から徐々に会う頻度が増えていった。そこからそんなつもりなかったのに、相手にのめり込み理性を失っていった』と。
理性がなかった、というのは妥当な言葉ではありますね。多くの不倫脳の人は本当に「理性」がありません。そこにあるのは「性欲」だけです。
不倫相手が好きだと錯覚してる皆さん、不倫相手といて癒される、落ち着く、幸せ、好きってなってるのは当然ですよ。だって結婚は生活です。良い所も悪い所も良く見えます。夫婦とは言え元は赤の他人の二人が何の価値観のズレもなく不満もなく、生活を共にするのは無理な話なんです。それでもそこを話し合って擦り合わせて譲歩したり、着地点を探したり、模索しながら「夫婦に成っていく」んです。不倫相手が好き?一緒にいて楽しい?それはそうでしょう。不倫してる相手は生活を共にしてる訳ではありません。付き合いたてのカップルの様に良い所しか見えないんです。一緒に生活を何年もしてみて下さい。絶対同じ事繰り返しますから。
こんな簡単な事に当事者は気づかないのです。
それは何故なのか?
私が思うに不倫をする人は総じて「弱い人」です。
「弱い人」とは「向き合う事が出来ない人」
だから逃げるんです。楽な方に。理性もモラルも飛び越えて自分が一番楽な方に逃げるんです。自分のパートナーを傷つけても、大事だと思ってる相手を愛人という立場にさせても。
つまりですね
そんな人間は誰と一緒になっても同じなんです。うちの夫だってそう。きっと私と上手い事別れて彼女と一緒になれたとしても同じ事します。だって「何事にも誰にも向き合う強さを持っていないから」
相手女性に関しても同じ事を言えます。
うちの場合、相手女性も彼氏がいました。うちと同じ7年間交際同棲してる彼氏です。自分でその男性の元に地元を捨てて飛び込んだのに、結婚を考えてくれない、将来が見えない、と不満を抱え、かと言って自分は自分で自立した生活を送れていない。そんなに嫌なら普通に彼氏と別れて一人暮らしすれば良いんですよ。それなにそれをしないのは「自分の弱さ」以外何者でもない。更にうちの夫と付き合い、それがバレないうちに彼氏と別れてうちの旦那と一緒になろうとしてた。とても思考がズルいですよね。全て自分で選んで決めた事だと言うのに全て人の所為にする、それがうちの夫と共有出来た部分でもあったのかも知れません。
人生は選択の連続です。人に意見を聞きアドバイスを貰ったり、自分からは生まれない考えを聞いて影響を受けたりは普通の事です。でもどの道を選ぶかを決めるのは自分自身。全て自分自身の責任なのです。
弱い事は悪い事ではありません。でも身勝手に人を傷つけたり、誰かの所為にしたりして良い理由にはなりません。不倫脳の人はこういった事すら分かりません。恐ろしいですよね。
そしてその日の夜
元々一緒に寝ていたベットにはあの日以来私だけが寝てました。そこへ枕をもってきて
「今日からこっちで寝て良い?」
離婚宣告をされた4月3日
それ以来一緒に寝る事も触れ合う事も一切して出来なかった私達夫婦
6月13日
二か月と二日の時間を経て夫婦として同じベットで寝る事が出来ました
私は彼の体温を感じる事が幸せすぎて泣きました
泣く私を夫はギュっと抱きしめてくれ・・・・
『ずっとこうしたかった』そう言葉が思わず出てしまう程私はやっとやっと自分が臨んで思い描いた未来に到達出来たのでした。この日の事は多分一生忘れません。
次回、いよいよ女性と対面します。
また新たな決戦が始まる・・・!!