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連載「イチロー部屋のイッピン」35. イチロー&ボンズのサインバット
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2003年3月、イチローがスプリングトレーニングをしているピオリアを訪れた。試合を観戦していると、隣のファンが「1年目はライト側、二年目はレフト側、今年はどちらか分からないが、試合後にイチローはサインをするよ」と教えてくれた。
試合が終盤になると、両側の通路にファンが集まり始める。ほぼ同数だったのでライト側に賭けた。しかし、イチローがサインをする机がレフト側にセッテングされた。ライト側のファンは一斉に移動する。レスリングで鍛えた猛ダッシュ!一番で列の真中より少し後ろに並んだ。
しかし、あと3人のところで無情にもサイン会は終わってしまった。脳裏に焼き付いたのは、イチローが目の前でサインした“Rawlings”のバット。このバットはその時に見たバットと同じモデル。イチローのサインには、関係者にしか書かないという#51も書かれている。ボンズのサインは、B(arry) B(onz)Sではないか。
2001年、シアトルで開催された第72回オールスター。イチローは史上初の新人最多投票数の337万3036票を獲得し、ボンズもナショナルリーグの最多得票数214万315票を獲得し選出されている。
2016年、ボンズはマイアミ・マーリンズの打撃コーチとなった。イチローの3000安打が近づくと、ボンズはイチローのヒットボールを集め始める。イチローが尋ねると「自分のときはホームランだったので、ボールを集めることはできなかったから」と答えた。イチローは「ボールをどうしているか分からないが、偉業の達成を知るボンズの気遣いは心強かった」と語っていた。
イチロー研究家 村本健二