子ども食堂を始めてみて思ったこと vol.1
2019年11月に東京の月島で子ども食堂をはじめました。
この活動は、地域のボランティアの方たちと始めた活動です。現在は残念ながら新型コロナウィルスの影響で一時活動を休止しています。
今回は私が子ども食堂を始めた経緯や、やってみて思ったことなどを少しでもどなたかの役に立つように、まとめておこうと思います。
築90年の長屋
「長屋を借りないか?」
2019年5月、月島に住んでいる知人からこのような連絡を頂いたのが始まりでした。
細長い建物を中で区切り、複数の世帯が住めるようにした長屋が月島にあることは以前から知っていました。
月島といえば、「もんじゃ焼き」が有名です。近くにはオリンピックの選手村がある晴海や、築地、豊洲などに囲まれた場所です。
お隣の「勝どき」や「佃」、「晴海」と同じように、近年は住居としてとても人気があり、再開発が進んでいます。
そのため、古くからある木造の長屋は、タワーマンションに置き換わろうとしています。
当時の私はというと、月島から墨田川を越えた向かい側のエリアのマンションに住んでいました。
写真は墨田川です。写真の左手が月島、勝どきエリアになります。川の奥に見えるのが勝どき橋です。
学生が住むシェア長屋
当時独身ではありましたが、そこそこキレイなマンションに住んでいた私は、多少神経質なところもあり、壁の薄い長屋に住むのは無理だなーと内心思いながらも、古い建物には興味もあり、お話を聞いてみることにしました。
月島の知人から紹介して頂いたのは、長屋を所有されている大学の建築科の先生でした。
お話を聞いてみると、今回貸したいのは、4世帯が住むことができる4軒長屋の1軒であること、またその1軒に大学生を安く住んでもらえるようにシェアハウスにしたいというお考えでした。
写真は4軒長屋です。一番手前が今回貸し出す1軒です。
既に住みたいと希望している学生が2人いて、もう一人探しているところだったということでした。
先生は、もちろん私が1軒まるまる借りても良いと気遣ってくれましたが、せっかく学生が住みたいと言っているのに、それを阻止したくはないし、かと言って、いい歳して学生とルームメイトになるのも嫌だなと思いました(汗)
とりあえず、断る気持ちが8割のまま一度持ち帰ることに。。。
勝どきでの活動
月島のお隣の「勝どき」で、私は「勝どき枝豆プロジェクト」という活動を2018年4月から始めています。
どんな活動かというと、地域の方たちと枝豆を育てて、みんなで収穫祭をやろうという至ってシンプルな活動です。
勝どきにある子育て支援施設の「グロースリンク勝どき」さんから花壇をお借りして、そこで活動しています。
なぜ枝豆なのか?というと、理由は2つあります。
1つ目は、枝豆は種まきから3か月で収穫が行えるため、手軽だと感じたから。
2つ目は、みんなでビールが飲みたい。やっぱり枝豆にはビールでしょ!ということです(笑)
1年目と、2年目に枝豆の種である大豆を無償で提供して頂いた「NPO法人 大豆100粒運動を支える会」さんのように、国産大豆を守ろうという崇高な想いはなかったのですが、醤油や、豆腐、納豆、みそ、きな粉などの元となる、日本の食卓を支える大豆の自給率が国策によって数パーセントに落ち込んでいる現状を教えて頂きました。
畑で作物が育っている様子をあまり知らいない都会の子供たちにとっては、食育にもなりました。
地域とのつながりの薄さに危機感
2011年3月11日に体験した東日本大震災。東京は大混乱になりました。
その時感じたことは、やはり私たちは助け合って生きていくべきだということです。
都会のマンションの一室に住んでいると、スマホひとつで、何でも買えるし、食べ物だってすぐに届けてくれます。誰とでも会話せずに一人で生きていけるように思えます。
知らない人と関わることが、面倒に感じたり、恐いと考える人も少なくありません。私も実のところ、同じマンションの人と出会っても挨拶しない人でした。
仮の住処のつもりで住んでいたワンルームのマンションに7年ほど住んでしまった私は、このままここで一生暮らしていくかもしれないという危機感を感じ始めていた2017年。
私は会社のセミナーで利用した施設に置いてあった1枚のチラシをたまたま手に取りました。
そこには「第3回 地域コミュニティの担い手養成塾 参加者募集」と書かれていました。
地域活動なんて1度も参加したことがない、ましてや、同じマンションの住人とですら挨拶をしない私でしたが、思い切って参加してみることにしました。
「子ども食堂をやってほしい」との言葉
地域コミュニティの担い手養成塾に参加するさらに半年以上前に、私は「料理のおすそわけアプリ」を作ろうと考えていました。いわゆる料理の「シェアリングエコノミービジネス」です。
というのも、私はシステム開発の会社をずっと経営していましたし、今後の社会は、格差が広がり、社会保障の財源もひっ迫していく中で、今のような関係性の薄い社会では、満足に生活することができない人が増えていくのではと考えてたからです。
マーケット調査の意味合いで、2017年1月にクラウドファンディングをやるも残念ながら目標金額の資金が集まりませんでした。
そこでまずは賛同してくれる人たちを集めようと始めたのが、料理のイベントでした。
上の写真は、ヘルスケアアプリのFiNCさんと一緒に開催したビューティー&ヘルシー料理フェス
上の写真は、築100年の古民家を借りて開催した親子で行う料理教室
様々な料理のイベントを開催する私に、ある人から「子ども食堂をやってほしい」と言われました。
その方はシングルマザーの方で、自分の子どもにパンを1つ買ってあげるのも大変だった時期があり、そんなときに子ども食堂に助けられたそうです。
その話を聞いて、生活の苦しい家庭環境の子どもを救うことができる子ども食堂というのは、とても素晴らしいと思いました。
一方で、子ども食堂というと、リタイアされた方がご自宅を提供して行うボランティア活動で、時間に余裕がなければとてもできないのではないかと感じていました。
会社の経営者である私がとてもやれるわけないと思いましたが、その方からの「子ども食堂をやってほしい」という言葉は2年以上、私の心のどこかにずっと残っていました。
「仲間」と「場所」があれば始められる
2018年4月、地域コミュニティの担い手養成塾を卒業して、4ヵ月が経っていました。
せっかく養成塾を卒業したのだから、何か地域のために始めたいと思い、卒業生や地域の方に声をかけて開いたのが、「勝どき枝豆プロジェクト キックオフ(説明会)」でした。
写真は、集まったメンバーに「勝どき枝豆プロジェクト」の内容している私です。
この時支援してくださったのが、地域SNSを運営するPIAZZAさんです。
勝どき枝豆プロジェクトのイベントは、PIAZZAという地域SNSアプリ上で、告知しています。するとたくさんの子育て世代の方たちにリーチすることができました。
さらに、PIAZZAさんは、NPO法人フローレンスから子育て支援施設の運営も委託されており、そこにある花壇を無償で私たちに貸し出してくれました。
地域活動を行うには、「仲間」と「場所」がとても重要になります。
勝どき枝豆プロジェクトは、この2つが揃ったからこそ、始めるができました。
長屋のリノベーションが始まる
2019年7月、築90年の長屋の前には、たくさんの建築科の大学生が集まっていました。
これから長屋のリノベーション工事が始まるのです。
一度は長屋を借りることをお断りもした私でしたが、過去に「子ども食堂をやってほしい」と言われて始められなかった時とは異なり、今は「仲間」「場所」の2つがあります。
「今なら子ども食堂を始められるかもしれない」と思った私は、学生が住むこのシェア長屋の一部をお借りすることを決めました。
2019年の真夏に、猛烈な暑さの中、学生たちと共に、長屋のリノベーション工事が始めりました。
このボロボロの長屋がどのように生まれ変わるのか、私は期待でワクワクしていました。