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6.長い道のり

夫の希望は、虫歯の治療と奥歯のインプラント、そして前歯の差し歯を入れ替えることであった。
が、「全てを差し置いて、まずは歯茎の状態を整えましょう」というのが歯科医の方針だったようだ。
歯茎の状態が芳しくなく(というか、めっちゃ悪い)ので、治療をするにも歯茎から血が出て治療にならないというのだ。
よって、まずは歯石とりから始まるらしい。

「6回に分けて歯石取りだって」
「6回?」
私の経験だと、歯石取りは1回または上下で1回ずつの計2回で処置してもらっていたが、夫の場合は、前歯、右奥、左奥の3箇所を上下でそれぞれ行う計6回の処置になるらしい。

初回の診察で下の前歯の歯石取りをしてもらったので、残り5回。
その後、歯茎の状態が改善されないようであれば、歯茎を切開して歯の根元についた歯石をゴリゴリ削っていくことになるらしい。
そうやって歯茎の状態を整えた後、ようやく虫歯の治療がスタートとなる。

「もう最初から切開してもらおうかな」
なんとも潔い。
既にまな板の上に乗せられたのだからかくなる上は、ということか。
一度治療をすると決めてからの躊躇のない決断力には驚くばかりだ。

結局、2回目の診療時にその旨相談してみたが、最初から切開をすると保険診療にならないから、最初は通常の歯石取りをしましょうとなった。

6回かけて歯石を取り、その後治療経過を見て歯茎を切開しての歯石除去(上下数回に分けて)
 ↓
歯茎の状態が整ったら虫歯治療
 ↓
インプラント、差し歯の入れ替え

早くても1週間に一度、下手すると2週間置きにしか予約が取れない。
虫歯の治療に入るまででも数ヶ月かかる。

「丁寧にしてもらえて良かったね」と言いいながら、
長い道のりになりそうだなとお互いに思っていた。

でもこれは、元あるべき道に戻るためのいばら道。多少の困難は今乗り越えないと。
夫は静かな覚悟を伝えた。

(続く)

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