僕の趣味を象徴するテン年代ムービー(をベスト10として語りたい)

昨年末に、アフター6ジャンクション(アトロク)で2019年ベスト映画が盛り上がっていたり。

Twitter上ではさらに広げて、「2010年代のベストはなんだ」という企画が盛り上がっていたり。

去年頃から映画感想を記すのが熱かった僕なので、当然考え出した訳で。
で、せっかく考えたのであれば見てもらいたい……という訳で、いち亀による2010年代ムービーベスト10、なのですが。

いま23歳の僕にとって、2010年代以降ってほぼ半生ですし、体感としては7割くらいなんですよ。つまりここで挙げる作品群、いまの僕の趣味嗜好にガッツリ影響しているもので。
ある意味で、「どんなの好きなの?」に対する名刺代わりにもなりそうです。

ちなみに選定基準、映画としてのクオリティ<自分の好み、です。そもそも映画に対する審美眼とか希薄ですし。順番もだいぶ気分によるものです。
後、シリーズからは特に思い入れ深いの一作にしてます(そうしないと3シリーズくらいで埋まるもので)
なので完全に僕の趣味に全振りしての、思い出語りのようなものと捉えてくださると。

という訳で、参りましょう。ちなみにそんなに深刻なネタバレはないですけど、気にする方は該当箇所を薄目で。



10. 天気の子

2019年、新海誠監督。

新海誠作品は外せない、しかしどれを挙げようか……という話になり。
新海さんの場合、作品単推しというよりも作家推し・文脈推しの側面が強くて。「言の葉の庭」で惹かれて「秒速5センチメートル」で虜になった。

その辺りの事情はこの記事でも書きましたが、「君の名は。」前後での彼の躍進は非常に衝撃的で。fhanaの「青空のラプソディ」リリースにも通じるものがありましたが、「マイナーだけど超好み」だった人がどメジャーへ駆け上がっていく様は、嬉しくも寂しいものでした。

「君の名は。」は好きなんですけど、かなり受け手を……観客が望むものを意識した作りになっていることに戸惑いを覚えもしたんですよね。「秒速」ラストで僕を突き落としながらも寄り添ってくれた、あの我の強さは置いてきたんだな、と。

それを経ての「天気の子」は、これまでに培ってきた画作りや演出の技術をフルに発揮して、エンタメアニメとしての強さが物凄いことになっていて、それは前作からの順当な進化で。
ただ最後に待っていたのは、感動と共に苦さを観客に刻み込む圧倒的な我の強さだったんですね。身勝手なボーイ・ミーツ・ガールに巻き込まれる大勢、その「少年」と「その他」の両面を体験させる物語。

「ただしさ」からは程遠いです。主人公の未熟さもそうですし、そもそも「女の子」の描き方だって、最近のムーブメントに逆行するようでしたし。

それでも、だからこそ、これだけ金が掛かり人が関わるプロジェクトで、
「僕が描きたい物語はこれだ」
と高らかに叫んだ、新海さんの創作者としてのエゴに、小説書きの端くれとして非常に勇気をもらいました。あの人が良さそうで腰の低い態度の中に、強烈なエゴを持っている、そんな二面性が好きです。


9. グレイテスト・ショーマン

2017年、マイケル・グレイシー監督。

3年くらいかけて音楽、特に合唱を扱った小説を書いていたり、学生生活でも音楽に触れていることが多かった身としては、もう、最高の。

以前は、ミュージカルはそんなに得意ではなくて……というより、ディズニーで流れるような日本語の劇中曲にあんまり乗れなかったんですね。
しかし(同じくヒュー・ジャックマン主演の)「レ・ミゼラブル」に圧倒されて、「心が叫びたがっているんだ。」では日本語で歌うからこその感動を覚えて。

からの、グレイテスト。
とにかく歌と踊りのレベルが凄まじかった。冒頭の祝祭感、中盤のスタイリッシュ契約、「This Is Me」に乗せての行進……世界最高の作り手たちによる、「これこそがショーの醍醐味」の連発に、感動しきりで。

そしてストーリーも熱かった……モデルとなったフリーク・ショーは、その裏側にある「奇異な同類への興味」の倫理性まで踏まえると手放しで賞賛されるものでもないかもしれませんが。
「何だって、自分を輝かせるための武器になる」というメッセージは強固でしたし、その人物設定がパフォーマンスでのビジュアルの強さとなって迫ってくる、その相乗効果が最高でした。

後はやっぱり、あの分厚いクワイア感(ゴスペル感、が分かりやすい?)が至福なんですよね。集団での歌で、一番好きなのはああいう雰囲気です。

8. さよならの朝に約束の花をかざろう

2018年、岡田麿里監督。
こんなに劇場で泣く作品、後にも先にもないと思います。

命のスケールが違う種族同士の擬似親子。老いずに数百年を生きる母マキアと、人間の息子エリアルが、戦乱に翻弄されながらも生きていくお話、なのですが。

ファンタジーでしか描けないドラマで、誰しも持つであろう普遍的な感情――「愛してる」と「さよなら」を伝える、それがとてつもなく、どうしようもなく切なくて、それ以上に温かくて優しくて。

ぼろぼろに泣けるんですが、その後には世界に対して、人生に対して前向きになれる映画です。これほど母に観てほしいって思う一本もなかなかないですね……まだ布教はできていませんが。

母となるマキアは老いないので、少女の、しかもあどけなくて華奢な「守りたい」が似合う姿のまま、母たろうともがいていて。そのギャップが懸命さに拍車を掛けますし、「若いままの母」に対するエリアルの複雑な感情もリアルで刺さりますし……岡田さんの描く少年と少女の「絶望的な両片想い」好きです、あの花のじんたん&めんまにも、そういう側面がありますし。

勿論、異世界を描くアニメ映画としても素晴らしいです。イオルフ(マキアたちの種族)たちの神秘性と人間たちの泥臭さ、その両面とも丁寧に描かれていて全シーンが贅沢ですし。キャスト陣も、深夜アニメに馴染んでいる層としては嬉しい顔ぶれ。

そして主題歌、rionosさんによる「ウィアトール」も最高なのです。
歌声も曲調も、唯一無二の優しさと神秘さを湛えていて。聴くたびに、あの世界の彼らの命の旅が脳裏に浮かびます。

積み重ねてきた経験によって見方がだいぶ変わる一本だと思うので、折りにふれて見返したいですね。

7. くちびるに歌を


2015年、三木孝浩監督。「ソラニン」もすごく好きです。

NHKコンクールの課題曲として作られ、絶大な支持を集めるアンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓 十五の君へ~」が中心になる物語です。
アンジェラさんとこの曲を追ったドキュメンタリーを基に中田永一さん(乙一さんの別名義、「GOTH」面白かった)がノベライズ、それを原作に映画化という流れ。

こういう話を書いているもので、やっぱり合唱部モノ、しかも日本の中高生を描いた作品は好きで。といいつつもあまり数は触れていないのですが。

今作は離島の中学校が舞台なのですが、そこで暮らしている生徒たちの素朴な実在感、等身大な空気が素晴らしくて。僕は合唱において、声に劣らず「表情」が大事な要素だと捉えているんですけど、彼らの表情の移り変わりも素敵でした。

そう、移り変わり。つまらなそうな顔も、拒む顔も、悲しみに染まる顔も少なくない、というよりそんな表情の方が多いキャラもいます。最初はまとまらないし、それぞれに悩みや悲しみも抱えていますし。

そんな彼らの表情が、共に歌うことで変わっていく――こう記すとベッタベタですし、僕も観る前は「どうせこういう流れでしょ」と思っていたんですけど、見せられて聴かされてしまったら、もうボロッボロのスタンディングオベーションです。

彼らが抱える悩みは、例えば自分が生まれた理由であったり、大切な人からの裏切りであったりして。どれも、歌うことで根本的に解決するものではなくて。
それでも歌うことで、立ち向かっていく、生き抜いていく力が生まれる。そんな歌の力を、丁寧に力強く描いていました。そして、成長した彼らが終盤で起こす行動が、もう、泣けて仕方ない。

音楽に限らずあらゆる表現や技芸って、悲しみや喪失に対して、
「これを極めてもあの事が変わる訳じゃない」という諦念と、
「それでも生きていくために、やるべきことがある」という前向きさが
セットになっていると思うんです、自分が小説で書こうとしているのもそういう感情で。今作での、そういう要素の描き方がすごく好きです。

こうした彼らのドラマと、楽曲「手紙」とのリンクがまた見事で。
歌詞から逆算しての描写、そこからさらに広げてのモチーフ使い……ヒューマンドラマとしても非常に優れた映画だと思います。

ちなみに主役の先生を演じたのは新垣結衣さん。宇宙一可愛いガッキーが作中で見せる「可愛くない」からの変化も見どころです。

6. ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2

2011年、デヴィッド・イェーツ監督。不死鳥からファンタビまでずっと務められてますね。

小学校2年で「賢者の石」に触れて以降、ハリポタは僕の小説ライフの原点ともいえるシリーズです。ハリーと一緒に大きくなって、いつのまにか最終巻のハリーの年を追い越した。次は「十九年後」までしっかり生きねば。

そんなシリーズが世界的に大人気で、映画が作られ続けて……という幸運さは、今になると身に沁みますが、当時はあまり感じてなかったような。
読み出した頃は、最低限の話の筋や人物の気持ちは理解できつつも、描写を脳内に起こすほど頭が追いついていなくて。ホグワーツの内部を通っている学校に置き換えて想像するような読み方をしていた記憶すらあります(今でも長い情景描写は少し苦手)

なので、映画版の「賢者の石」を観て、「ああ、こんな顔でこんな景色なんだ」と覚えて、映画のビジュアルを当てて読むという楽しみ方をしていましたね、そう考えると本当にありがたい。
それなのに、途中から映画に対して「あそこカットするんかい!」みたいな感情が先行するような、原作厨期に突入しまして。映画の全作を大歓迎、というムードでもなかったような。

とはいえ最終作、原作で圧倒的なスケールで描かれていたホグワーツでの最終決戦は、やはり映像で観るのが楽しみでしたし。実際に、期待以上のアクションとスペクタクルには大満足でした。昔も今も、城攻めとか撃ち合いとか空中戦は大好きですから……

時間が経つほどに影響を思い知ります、ハリポタは。僕の小学校生活って欧米ファンタジーと共にありましたからね……ただもう少し、少年漫画も通っておきたかったなと、小説を書くようになって思ってもいます。


5. アベンジャーズ/エンドゲーム

2019年、アンソニー・ルッソ&ジョニー・ルッソ監督。

2010年代の好き映画にこれ挙げるのベタ過ぎるよな~~と思いつつも、
「3000回愛してるから仕方ないだろ!!」と。

MCUへの向き合い方は前記事でも触れましたが。ヒーローひとり、映画の一本だけでも十分に魅力的で豪華ですし、それが数十人も結集して二十作以上ものユニバースを形成している訳ですから。
改めて振り返ると、作品自体の面白さだけでなくプロジェクトの歴史にも圧倒されますね……これだけ壮大なクロスオーバーが続いていること、創作オタクの端くれとして刺激にもなるんですよね。
うちの子エンドゲームをやるんだ……!

インフィニティ・ウォーからの流れ、これまでの各作でマクガフィン的に登場していたアイテムたちが話の中心になってくるので、遡って過去作の面白さも増すんですよね。

単なる最終決戦だけではなく、過去作の舞台を巡っていくことで、総決算という意味合いが何重にも強くなる。敗北を経たヒーローたちが等身大の人間に戻り、そのうえで再起するというギャップの描き方もじんと来ました。

しかしなんといっても、最終決戦。
「きっとこうなる」という期待は全ファンが持っていたと思いますが、そこへの道筋も、その後の勝ち筋も予想を裏切り続け、ドキドキさせっぱなしという。凄まじいクライマックスでしたね、映画体験の中でも至福の約30分間でした。

北欧神話から宇宙の住人まで、あらゆる世界観のキャラが一堂に会して乱舞する、あの構図にアベンジャーズの楽しさが詰まっていましたからね……それだけにあの人の不在が沁みますが、誰かが背負わなければいけないことを引き受けることがヒーローの役目、という見方もできますし。

まだ終わってないようですしね、あの人の物語は。


4. るろうに剣心

2012年、大友啓史監督。

大好きな映画であり、「性癖が歪んだ」体験としては人生トップですね。

佐藤健as緋村剣心のアクション。剣の振り、足捌き、重心移動、表情。
その全てに、僕の映像感覚や脳内世界は決定的に塗り替えられました。
心翔健閃(こころかけるたけるのひらめき)です。

人生最初の沼はスーパー戦隊(救急、未来、百獣が直撃)でしたし、アクションゲームは大好き(家にデビルメイクライと戦国無双があった小学生の末路)でしたし、まあチャンバラ映画は順当に好きだったんですよ、和洋中を問わず。

しかし当時高校生の僕が、実写1作目のTVスポット、もっと言うと
振りかぶっての跳躍→ドリフト走り、
あのシーンを目にしたときの衝撃たるや凄かったのですよ。谷垣健治さんは責任取ってください。

時代劇の殺陣とも、ファンタジックな剣劇とも違う、リアルさとアクロバティックさとスピード感を絶妙なバランスで掛け合わせたソードアクション。
役者の身体能力と格好良さは勿論、最高の「やられ」を披露するスタントマンたちや、それらが安全かつテンポよく進むように設計するアクションスタッフ、完璧にフィルムに収める撮影スタッフ。全てが噛み合って生まれる鮮烈な感動。
漫画の実写化ってコケることも多いですし、今作も映画として粗い面があるのは否めないとは思いますが、元が(生身で演じることを想定しない)漫画だからこそ、「どう実写でやるねん」の試行錯誤とブレイクスルーが起きる、そういう作用は確かにあると思います。

その意味で「GANTZ」二部作とか「ガッチャマン」(の冒頭だけ)も好きですね……「ダレン・シャン」も、まあ……ごほん。

さておき、この剣心ショックで僕の剣劇厨は決定的なものになり。

自作小説を刀キャラが活躍する話にしたがるの、だいぶ剣心ショックの影響ですね。ハリポタの方面を突き進んでいたら魔法メインになっていたでしょうし。

アクションを抜きにしても、明治の賑やかさと戦いの血なまぐささの対比とか、健くんの表情のスイッチとか(闇堕ちも好きだな??)、香川照之先生の悪役っぷりとか、見どころはたっぷりだと思います。

続編の二部作も、期待を裏切らないバトルと熱演で大いに楽しませてもらいました。神木くんも藤原さんも最高。ただ、てんこ盛りにしすぎてストーリーはだいぶガバくなっていた印象もありますが、「まとめるより派手にやろうぜ!」という方針は好感です。ラストの1vs4は至福。

そして「伝説の最期」で幕引き、と思いきや。

今年の映画で一番楽しみです。斬ってくれ。

3. HiGH&LOW THE MOVIE2/END OF SKY

2017年、久保茂昭&中茎強監督。

LDHへの愛着とかは置いておいて、大好きですハイロー。
車窓から見えるビルの間を飛び移っていく忍者を幻視していたり、学校に乗り込んできた不審者を制圧するビジョンを脳内で繰り返していたり、買い物に連れていかれては「このロケーションだったらどんな戦いする?」と考え続けるような子供時代を送ってきた、僕のような人間のためのシリーズです。

(ちょっと吹っ飛んでいるとはいえ)現代日本を舞台に、あらゆる体術やアイテムを存分に駆使して数百人スケールで繰り広げられる大乱闘。乱立するチームの対峙、それを経ての共闘……小学生が考えるような格闘バトルを、大人が本気出して具現化しているのがハイローです。

最新作「THE WORST」がめちゃくちゃ面白かったという話はこちらでも触れましたが、一番好きなのはこの「THE MOVIE2」です。とにかくアクションてんこ盛り。

・冒頭、スローモーションでのパノラマやPOV視点パルクールを織り交ぜながらのチーム紹介
・前半、強者バディVS殺し屋チーム&ターミネーターヤクザによる怪物じみた激戦
・中盤、車中で殴り合ったり車が縦回転したりの爆盛りカーチェイス
・終盤、敵も味方も「駆けつけたぜ!」連発の巨大乱闘

といった具合に。特に終盤の戦いが非常に燃えます。次々にチームが参戦しての大パノラマと、因縁の一騎打ちが並行して進んでいたり。廃駅という高低差や障害物の多いロケーションを見事に活かしていますし、各キャラのバトルスタイルのバリエーションも最高。「アクションが凄すぎて感涙」は初めての体験でした。

加えて、「いつまで喧嘩するんだよ」「喧嘩で解決できる問題じゃないだろ」みたいな分裂を挟みつつ、タイトル通り「青春の終わり」へと向かっていく展開も好きです。さあ次作で最終章、と意気込んだ後のエンドロールで怒濤のカタストロフィを予告する引きの強さ。

2. シン・ゴジラ

2016年、庵野秀明総監督&樋口真嗣監督。

映画単体でみれば実質1位、人生最高の映画館体験でした。

まさに日本人的というか、ゴジラという虚構の塊である脅威に対して、現実の日本……政治、武力(自衛隊)、学術、産業、市井の人々を含む総体としての「日本」は、あるいは「人類」はどう抗うのか。それを突き詰めたのが非常に面白くて、勇気づけられもする映画でした。究極のチームプレー。

相手がゴジラであっても、法に基づく国家の手続きを欠かさないという展開、「さっさと自衛隊を出せよ!」という苛立ちも分かりますが、この国に対する信頼を感じて非常に好きです。武力という最終手段を安易に使う人たちじゃない、という信頼。
そして通常兵器では太刀打ちできず、徹底的に蹂躙されてから反撃を試みる流れも、それぞれが職業者としての才知や技術を結集しての展開になっていて。家族や友情といった要素を押し出さず(無言でも表情とかでビシビシに伝わる)に、徹底して職業者たちのドラマとして描いているの、無二の味わいになっているんですよね……勿論、プライベートな人間模様も大好きですけど。

事務的で迅速なやり取りも、SF的なディスカッション(理系に刺さる)も格好いいですし。それでいて自衛隊をはじめとするミリタリー描写や、ゴジラが暴れ回るスペクタクルも超豪華で。何度でも繰り返して観たい一作です。2019年のKOMも楽しかったですが、僕はやはりこっちのベクトルが好き……!

1. 図書館戦争

2013年、佐藤信介監督。

普段の僕を知ってる方からすると「やっぱりかい!」でしょうけど、こればっかりはしょうがない。人生との結びつきが強すぎる。
まずは中学の頃に出会った原作と、それをきっかけに触れた数々の有川作品が僕の思考に与えた影響が大きすぎるんですよね。図書戦に出会ってなかったら文章、特に小説の書き方はだいぶ違っていたと思います。図書戦をきっかけに出会った友人や得られた経験も含めて、今の「いち亀」にとっては重要すぎる作品。

そして、ただでさえ原作やアニメのインパクトが絶大なのに、実写版……特に戦闘描写が、物凄い刺さり方をしてしまって。
図書を守る側と検閲する側での、銃器を用いた抗争。警察物とも戦争物とも無双アクション物とも違う「統率の取れた部隊同士による、フルオートを主にした、殺さない銃撃戦」なんですね。検閲側は盾を組み合わせてでグイグイ来ますし、図書側はバリケードを築いて迎撃。ユニット同士の遭遇戦や遠距離からの狙撃もあり、という。

この実写版での描き方、原作や他メディアとは違ったスタイルなんですけど、「日本で公的機関どうしで撃ち合うならこんな感じだよね」という説得力が凄まじくて。これまでの描写も楽しんでましたけど、実写版での「これだわ!!」が半端なかった。隊員同士での、声を上げたり肩を叩いたりしてのコミュニケーションも格好よくて。自分でバトル物を描くときの「チーム感」にすごい影響を受けてますし、そもそもこの映画がなかったら書いてないよなって話が多すぎる。
銃器まわりで行くと、メインが9mmの短機関銃で弱装弾(炸薬が弱いか弾頭がソフト)なので、貫通よりも衝撃を強調したような演出になっているのも好きです。「身近な場所でどう戦うのか」という楽しさもありつつ、図書館という場所が蹂躙される痛みも激しく……という矛盾した心境。

加えて、岡田准一師匠を中心としてのミリタリー寄りな格闘アクションも充実していて。クライマックスでの展開が原作から大きくアレンジされて、廃墟でのバトルになっているんです。そこで繰り広げられる、地形を活かしたアクロバティックな攻撃や、ソリッドな肉弾戦が非常に格好いい。原作での人間模様の変化を残しつつ、岡田さんの武術スキルを活かした展開にアレンジした佐藤監督&(脚本の)野木さん、下村さんをはじめとするアクションチーム、抜群のロケーションを作り上げた美術チームの功績が輝く、最高のクライマックスでした。

勿論、原作のお仕事&ラブコメ要素も大満足でした。実在感ありつつ、少女漫画的な胸キュンは高威力。岡田堂上&榮倉郁をはじめ、どのキャストもピッタリすぎて……
本を守るというテーマも真摯に描かれていました、司令のスピーチには泣かされましたし、倫理コードを鑑みての改変も「規制があった」ことの証として残りますし。

その後の「BOOK OF MEMORIES」「THE LAST MISSION」も大好きですが、やはり初見の感動が凄いのでこちらを選びました。だいぶ時間が空いていますが、続編を願っています……!

という訳で10作、長々とお付き合いくださりありがとうございました。
なんだかんだでアクションが好き、けどハリウッド製よりは日本でガラパゴス的に進化してきた物が刺さる、という傾向が如実に出ましたね……ちなみに選定は「客観的に優れているのはどう考えてもこっちだけど思い入れ的にこれは外せない」の連続でした。

ただまあ、映画としての洗練さはともかくとして、面白いかと聞かれれば「めちゃくちゃ面白いよ!!」と答える作品ばかりです。今後の映画探しのお供になれば幸いです。



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