見出し画像

百合×音楽小説『ガール・ミーツ・フォルテシモ!!』が大大大好きなオタクによる布教文

【忙しい人向け】

とりあえずイラストとあらすじと読者レビュー(僕のもあります)だけでも目を通してください、ビビッと来た人はすぐに登録&購入コンボを決めてください。電子書籍なのですぐに読めます。

「そうはいっても、文庫一冊ぶんのお金と時間はなあ……」と躊躇したあなた、そしてもう読んだという同志諸賢は続きをどうぞ。


イントロ:青春×音楽って好きだよね!!

あなたも好きだという前提で進めます。
まずはジャンルの代名詞的マスターピースである『響け!ユーフォニアム』シリーズ、小説とアニメどちらも大好きです。


いまの20~30代のアニメファンと話して盛り上がることの多い合唱部アニメ『TARI TARI』も、


ややマイナーかもしれませんが、同じく合唱部を描くドラマ『表参道高校合唱部!』も、


アニメ化も控え絶好調な百合マンガ『ささやくように恋を唄う』も、

他にもたくさん、思い出深い作品の多いジャンルです。

綺羅星のごときジャンルに現れた新星

そんな作品群と比べても遜色のない傑作……と個人的に推しているのが、今回ご紹介する『ガール・ミーツ・フォルテシモ!!』by瀬古透矢さん、です。

以前に某小説投稿サイト(現在は非公開)で読んで感動の嵐だったのですが、このたびBookBaseというプラットフォームで販売開始、素敵なイラストと共に商業ルートに堂々参戦です。これは絶対に、企画としても成功してほしいのです。

応援していたアマチュア作家が(セミ)プロデビューしていくの、Web小説界隈の端くれにとってめっちゃ嬉しいイベントですからね……というわけで作品紹介です。

以降、若干のネタバレを含みます。ただ、楽しみが損なわれるネタバレではないと考えていますので、よほど敏感な方以外は読んでもらってOKかなと)

推しポイント①運命的に惹かれあうガールズ・バディ

まずはメインの中一女子コンビの話から。

桜&葵の境遇と共鳴

葵は「孤高の天才ピアニスト」で、桜は「明るく元気な合唱部員」……という、対照的な雰囲気。葵は偉大な音楽家の娘で外国語にも堪能、かたや桜はシングルマザーに育てられる庶民と、暮らしぶりも対照的です。

ただこの二人、どちらも似た悩みを抱えているのです。
周りの事情に合わせているせいで、本当に自分がやりたい音楽ができない……という問題。

葵は父親・泰介の存在に縛られ、技巧は圧倒的ながらも感情表現の欠落した演奏しかできず。
桜は合唱部唯一のピアノ経験者として、本当は歌いたいのに苦手な伴奏を引き受けています。

その二人が知り合い、葵の伴奏で桜が歌う二人きりのセッションを試してみたところ……

知ってしまったのです、本当に楽しい音楽を

この、まさに半身を見つけたかのような運命的な出会い。世界観から塗り変わるような鮮烈な体験。
展開自体も熱いですし、それを紡ぐ筆致の瑞々しいこと……!!

そして二人は、一緒に音楽を奏でるために動き出します。ときにワガママに、ときに大胆に、大切な人との幸せを願って自分の殻を破る。天才ピアニストが、一介の中学生が、自分の全力を世界へとぶつけていく。
その過程で深まっていく愛情の描き方も、もちろん素晴らしい。

桜&葵と「百合」について

僕は本作のジャンル、または桜と葵の関係について「オフィシャルで百合と推してはいない」「けど作者の瀬古さんは百合オタだし百合を意識しているだろうし」「百合だと思ってええやろ」と解釈しています。

実際、学生百合らしいスキンシップや、恋人を思わせる甘々なシーンもあったりはします。それはすごく可愛いし尊い。
ただ作中で、桜は葵への感情について「愛情や友情、恋情と呼ぶのかもしれない」「その全部が正しい気もするし、間違っているのかもしれない」と考えています。

だから(いちファンとしてラブだったら嬉しいけど)ガールズラブと言い切るのが正しいかは微妙で、けど間違いなく「特別に大事」であって……という、名付けられない愛おしさ。
これはこれで……むしろこれこそ、百合ジャンルが持つ懐の広さに通じていると思うのです。

だから僕は「尊くて熱い百合×音楽小説」として推します!!
そこの百合オタも、百合オタじゃなくても青春モノは好きだってオタクも、いいから読め!!!

推しポイント② 単巻アベンジャーズ気分なマルチ視点

ここまでは桜×葵にフォーカスしていましたが、本作の肝はここからです。
彼女たちの友情はやがて合唱部と吹奏楽部の合同プロジェクトへと発展していくのですが、そこで活躍する先輩&同期たちのエピソードがとても良いのです。

瑠璃部長、あまりにも好き

まずはイラスト化もされている瑠璃部長。
頼れるリーダーであり音楽オタク、自他ともに認める厨二な中二。行動力と早口解説で桜&葵を後押ししてきた先輩です。この手の饒舌キャラ、読者としても書き手としても大好きなんですよね……文面が華やぐ……

しかし、そうしたキャッチーな役回りに留まらず。
中盤では彼女が語り手となり、これまでの合唱部の歩みが描かれます。
このエピソードが……とてもとても熱いのですよ……合唱部への思い入れが一気に募る!!

合唱部に咲く運命的な百合、だけでなく。
その舞台を守ってきた先輩たちの姿も、最高に格好よくて尊いのです。


吹部の先輩後輩百合が咲き誇る

そして共演相手である吹奏楽部でも!! 
オーボエ師弟である茜ちゃん&詩織先輩が、特濃の吹部百合を見せてくれます。吹部のハードな一面も垣間見せながら、無二の存在として互いを支え合い照らし合う二人の姿。百合オタにはこのうえなく眩しいエピソードです。

……といった具合に。

本作、桜&葵という柱はブレさせず、しかし主役級のキャラが何人もいる多層的な構成になっています。

https://spotify.link/fwT6RTuv8Cb

そんな彼女たちがクライマックスでは同じステージに臨み!!
それぞれの音楽性と努力と感情と関係性の集大成を!!
たっぷり!!マルチ視点で!!見せてくれるんですよ!!

オタクが一番好きな展開じゃないですか!!!!


推しポイント③ 誰も置き去りにしない、その青春は全員主役

メインの桜&葵以外も熱いんだよ~、という話に続いて。
ここからはモブも含めた、ストーリー全体の人間観の爽快さの話をします。

モブの活き活きっぷり

本作に登場する生徒たちの中で、名前が出てくるキャラはごく一部です。
生徒の誰か(名前は不明)が喋ったり演奏したりしている……という描写が結構多い。

けど、そうしたモブ描写がとても活き活きしているのです。
「たまたま小説では名前がちょっとしか出てこないだけで、その子も全力で音楽やってるんだよなあ」「桜や葵とは離れたところで、色んな友情とか恋が芽生えているんだよなあ」という息遣いを、しっかり届けてくれる。
この部分はWeb小説、というか小説全体で見ても結構レアな味わいだと感じております。集団を演出するのがとても上手い……!

男子の空気感のナチュラルさ

特に好感を持っているのが、合唱部に7人いる男子の描き方。
名前が稀に出てくるくらいで、ストーリーにしっかり絡んでくる子はいません。百合に割って入ってくるような奴はいない、けど確かに桜たちと同じ空間で歌ったり騒いだりしている。
この「普通に一緒に頑張っている」ムードがすごく好きなんですよ……割と子供っぽくて、特別タフって訳でもないけど力仕事では重宝されて、年頃の割には女子との接触に慣れている(慣らされている)といった空気感が、ごく自然に描かれている。

百合純度を高めたいのであれば男子の存在感を希薄にすることもできたでしょう、共学の学校でも合唱部には女子しかいないパターンはよくありますし。あえて邪魔してくる男子を出すのも、それはそれでドラマチックになるでしょう。
けどそのどちらでもない「普通に一緒に仲良く頑張っている」を、百合濃度の高い作品でやってくれたの、地味ながらも熱烈な好感ポイントなんですよね……混声合唱部にいた経験をベースにしている男性作家なもので……


混声合唱部や演劇部といった声を使う文化部は、男女混成チームでありながら男女比がダイレクトに表現に反映されるという点で、他の部にはない特色を持っていると思うので。混声にしてくれたの本当に良かったですね……

※原作の人そこまで考えてないと思うよ
※単に中学合唱では混声の方がメジャーだからでは

……という長い脱線を経つつ。

それぞれの価値観が違うとしても

本作の縦軸で重要なのが、葵の合唱部入りに反対する父・泰介との対峙です。プロとしての成長を至上とする泰介、一緒に楽しむことが大事と訴える桜、この価値観の衝突がテーマの一つになっています。

ただ、全員で同じ価値観・姿勢を共有しよう……という話ではありません。
むしろ、それぞれの価値観・姿勢が違っていることが強調されている。なんなら、桜がその違いを学ぼうとしています。

あるときはエンタメ性に特化した演目を準備しつつも、コンクールに向けて技量や成績を重視する姿勢も尊重されている。自分が輝きたいという動機もあれば、特別な仲間への想いが根底にある生徒もいる。
プレイヤーとしての視点も、中学生としての視点も、指導者や大人としての視点もある。

けど、それらが交錯する中で誰かの願いが押し潰されることは、本作において良しとされていません。情熱ゆえの悔しさはあっても、悲しみに震える仲間があってはならない

みんな違う、けど誰も取り残さずに。
みんな中身はバラバラ、けど同じ舞台で同じ音楽を。

吹奏楽部の掲げるスローガン「全員主役」の真意、とても沁みるものでした。

推しポイント④ 音楽描写が読んでいて楽しい!

音楽小説ですからね、もちろん充実しまくっております。読んで確かめてください。
「音楽を小説で描く」難題に向き合い続けた作家としても、実際に音楽やってた元学生としても、今も観たり聴いたり語ったりして楽しんでいるオタクとしても、心からの敬意と賞賛を。

キャラクターたちの交わす愛情が、その音楽に関わる全員の命の温度が、存分に映えています。

アウトロ:勝手に同志ヅラしているオタクより愛をこめて

小説に限らず何らかの創作やってるオタク各位、「受け手として好きか」とは別に「作り手として共感するか」という軸があると思うのです。
そして僕にとって『ガール・ミーツ・フォルテシモ!!』は、読者として楽しめただけでなく「そうだよ、こういうのだよ書きたいの……!」と幾度となく唸った作品です。
つまりは「評価されてほしい」思いは、Webで出会った様々な作品の中でもひときわ強いものでした。

だからこそ、こうして評価されて商業ルートに乗ったことには特別な嬉しさがあります。別に自分の作品が認められた訳ではないのですが、目指した面白さの輝きを確かめられた気分といいますか……

ともかく。合唱と百合に惹かれてきた……というより片想いしてきた経験を小説にしている僕にとっては、運命的とも言える一作です。

瀬古さん、ならびに本書に関わった皆様方。
めっちゃ幸せな体験でした、本当にありがとうございました。


そしてここまで読んだあなたはきっと本作が刺さるでしょう、忘れずにお買い求めを!!!





(最後だし良いよね、僕の百合×音楽小説はコチラです)

https://kakuyomu.jp/works/16816700428592402642


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?