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シンデレラの策略23-2: 王子の求婚
馬車が城に到着すると、エラとギルバートは別々の部屋に通された。エラが案内された部屋に入る直前、ギルバートは彼女を呼び止め耳元で囁いた。
「何かあったらコインを投げてください。必ず駆けつけます」
「…分かったわ」
―私、どうしたのかしら。リチャード王子と街で初めて会ったときより、ずっとドキドキしてる。
エラは動揺をギルバートに悟られないようあえて無表情で頷き、部屋の中へ足を踏み入れた。
―きっと、計画が上手く行きすぎて興奮しているのね。
実際、エラは今までになく気分が高揚していた。王子に気に入られて妃になるという途方もない計画が、だんだん現実味を帯び始めているのだから。
―リチャード王子が私に好感を抱いているのは確か。それに、オーリー様がおっしゃったことが本当ならば、ガラスの靴を履くことができた私はすでに未来の妃に選ばれている。
エラは自分の成功を確信していた。しかし同時に、事が上手く行きすぎていることに対し一抹の不安も感じていた。
―不安がっていても何も変わらない。たとえ誰かの手のひらで転がされていたとしても、それが何だというの?私は私の目的を果たして見せる。
エラは弱気になっている自分を奮い立たせるため、背筋を伸ばし大きく深呼吸した。その途端、いつも下着の中に忍ばせていたコインが体の動きに合わせて場所を移動した。コインが肌の上を滑る、その感覚が不安と戦うエラを安心させる。
「ギルバートにはいつも助けられてばかりね」
エラは自嘲気味に呟いた。近くに控えていた兵士が聞き耳を立てたが、小さい声だったので聞き取れなかった。
「何かありましたか?」
「いいえ、何でもないわ」
エラは兵士に向かって微笑むと、部屋に一つだけある小さな窓のもとに歩いて行った。窓の外では今日も月が輝き、地上を見下ろしている。その様子は、まるで欲望にまみれた人間たちを嘲笑っているかのようだ。エラは月を見つめたまま、窓の外から聞こえる舞踏会の優雅な音楽を何とはなしに聞いていた。
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